保険医療部通信(第338報) – 第4回近医連保険担当理事連絡協議会開催 保険制度の根底覆す受診時定額負担を批判

 令和2年度第4回近医連保険担当理事連絡協議会が2月6日(土)に開催された。これまでと同様,新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から,オンライン形式による開催とし,府医役員12名が出席した。当日は谷口府医理事の司会のもと,下記のテーマについて活発な意見交換が行われた。

外来受診時定額負担の見直し案に反対

 社会保障審議会医療保険部会がとりまとめた議論の整理では,外来受診時定額負担として保険給付分を控除して,患者の負担額を増額する方針が示されているほか,「紹介患者への外来を基本とする医療機関」のうち一般病床200床以上の病院へ対象を拡大することが検討されていることに関して,各府県に意見を求めた。
 田村府医理事からは,今回提案されている外来受診時定額負担は保険給付の一部を患者負担に置き換え,追加徴収するものであり,実質的な保険免責制であるとして絶対に容認できないと強調。一般病床200床以上の病院に対象を拡大することについても,病院の規模ではなく,地域における機能に着目し検討されることが決定しているが,引続き注視する必要があると主張した。また,外来機能分化を推し進めるためには再診時の定額負担の強化や,逆紹介やかかりつけ医の推進を優先すべきとし,国民への啓発が必要であることを述べた。
 各府県からも,おおむね同様の意見が出されたほか,保険料などで対応すべきとの指摘や地域医療構想調整会議で個別に検討すべきとの意見,また,不用意な拡大はフリーアクセスの制限につながり,受診抑制を助長するなどの懸念も示された。

初診からのオンライン診療に否定的見解が多数

 次に,コロナ禍での臨時的取り扱いとして認められていた初診からのオンライン診療に関して,現在,恒久化に向けたとりまとめが進められていることについて各府県に意見を求めた。
 山下府医理事からは,オンライン診療は離島やへき地に限定して行われるべきもので,効率性のみを重視すべきではないと指摘した上で,初診からのオンライン診療は絶対に容認できないと主張した。また,恒久化の決定が中医協等の議論を経ずにトップダウンで決定されたことに疑念を示すとともに,オンライン診療は導入や維持にかかるコストが大きく,また,医療安全を担保する視点が抜けているとして運用上の問題点を提起した。
 各府県からも同様の意見が複数挙がったほか,オンライン初診でのなりすましや誤診リスクへの懸念,受診歴や疾病の内容等を勘案して試験的導入から実施すべきとの案が示された。

薬価改定の動向に危機感

 2021年度薬価改定について,谷口府医理事は冒頭に,診療側が医療現場への影響を最小限にとどめるよう配慮を求めたにもかかわらず結果的には約7割が対象になったことに触れ,毎年この規模の薬価改定が行われると診療報酬本体の財源として充当されない割合はますます大きくなることを危惧するとともに,医療機関での備蓄数の調整や在庫管理が煩雑になることを憂慮する意見を述べた。その後,フリートーキング形式で各府県に意見を求めた。
 各府県からは,財務省が薬価引下げ分を診療報酬の改定財源に充てる考え方はフィクションにすぎないと評して以降,適切に充当されていないことから,中間改定分はすべて召し上げられかねないとの危機感が示されたほか,毎年の薬価引下げは製薬会社の経営を悪化させ,安定供給や品質への影響を懸念する意見もあった。

 濱島府医副会長は,本日の議論について,「今回提案されている外来受診時定額負担は,患者の負担額を増額し,公的医療保険の負担を軽減する仕組み(保険免責制)であり,これを契機に拡大されかねないことから容認できない。対象病院も病床規模による一律ではなく地域の事情を考慮して検討すべき。」とした。また,「初診のオンライン診療は当然認められない。さらに,コロナ禍に乗じて検証や議論もされないままに恒久化の方針が決定されたことについては,特に医療安全の面から慎重に議論すべき。」とし,続けて「毎年薬価改定は,一般の市場原理も踏まえ,根本的に仕組みを検討する必要がある。」と総括して会を閉めた。

2021年3月15日号TOP