2021年4月1日号
府医では,例年,研修医,若手勤務医を対象とした研修会,勉強会に傾注し,里親精神でサポートに努めている。
恒例となっている研修3事業については,日常の臨床現場で使える内容で大変好評を得ており,全国的にも類を見ないユニークな取組みだ。
また,アドリブ症例検討会についても,「症例を提供した人だけが解答を知っている」という大きな特徴を持ち,参加者全員で鑑別診断を行い,徐々に絞り込んでいくスタイルになっていることから,明日の臨床の場で役立つ内容となっている。
ただ,昨年の新研修医総合オリエンテーションについては,新型コロナウイルスの影響から参加者の安全を考慮し,中止を余儀なくされた。
これに限らず,今年度は軒並み研修医,若手勤務医の研鑽の場が奪われており,レベルアップ,スキルアップ,ネットワークの構築ができない状況が続いている。
このことから,府医では,研鑽の場を設けるべくWEB会議システムを用いた研修医,若手勤務医向けの取組みを考案し,展開してきた。
まず,アドリブ症例検討会は昨年10月,本年2月の2回にわたって開催。1回目,2回目ともタスクフォースを洛和会音羽病院副院長で府医の研修サポート委員会委員である酒見英太氏に務めていただいた。本症例検討会は,前述のとおりのスタイルになっていることから比較的,WEB会議システムを用いての開催のハードルが低く,効果的な症例の提供が可能であった。
アドリブ症例検討会
1回目の症例は「虫刺されがひどいんです 急性骨髄性白血病(M1)虫刺症にともなう皮膚過剰反応(Hypersensitivity to insect bite)」として医仁会武田総合病院総合診療科研修医の上松優奈氏に,「したが痛いんです・・骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)+舌・口腔底膿瘍 」として京都医療センター総合内科専攻医の澤田好江氏に提供いただいた。
また,2回目は「透析導入患者の持続する炎症反応 ~結核性腹膜炎~」として,京都府立医科大学附属病院 研修医 山本 慎大氏に,「背水の陣:背水(背部痛)の陣(腎) → 決戦(血栓) ~腎盂腎炎による持続的な菌血症の結果として化膿性仙腸関節炎,血栓性静脈炎に至った例」として国立病院機構京都医療センター総合内科研修医中前 拓也氏に症例提供をいただいた。
参加者は酒見氏とのカメラを通したやり取りでも,フィジカルアセスメントから鑑別診断をつけていくとともに,当該症例にかかるレクチャーを受けることで,レベルアップに努めていた。
このほか,府医ではWEB会議システムを利用して,「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」,「研修医ワークショップ in Kyoto」を2月28日に同日開催した。
「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」は,通常であれば,研修医が所属病院,性別,年数の異なるチームを組んで,タスクが待つ府医会館の会議室に施されたブースを回ることで,多くの知識,技術を身に着けることができる試みである。Web上では一定の制約はあったものの,Web会議システムの機能を十二分に利活用し,ブレイクアウトセッション機能(全体から小会議室への移動)をブースに見立てて展開することができた。
今回のブースの症例テーマとしては,4人のタスクフォースから「軽症外傷診療」,「アナフィラキシー」,「けいれん」,「高血圧性心不全」が掲げられた。
後段に行われた「研修医ワークショップ in Kyoto」では,通常開催であれば,こちらも府医の会議室に一堂に会し,チームを組んで災害医療で遭遇する問題をシミュレーションし,様々な「MISSION」として盛り込むことで,日常では滅多に体験することができない,大変貴重な研鑽を積む場を得ることができる取組みある。
しかしながら,こちらについてもWEBでの展開を余儀なくされた。ただ,「Web臨床研修屋根瓦塾KYOTO」と同様にブレイクアウトセッション機能を用いることで,例えインターネットを介していても,チームワークを持って取組むことができることを証明した。今回の災害医療シミュレーションでは,ブレイクアウトセッション機能のほかGoogleのJamboardを使い,チーム内の意思疎通の円滑化を向上させることで,とてもWEB上とは思えない多角的なプロダクトが生み出された。
Web臨床研修医,若手勤務医向け事業に積極的にご参画いただいいた,タスク各位には多大なる敬意を表すとともに,深く御礼申し上げる。
府医では,このコロナ禍においても,極力,研修医,若手医師の研鑽の場を確保するべく,工夫を凝らしながら開催方法を検討し,Webであっても「スキルアップ」,「レベルアップ」,「ネットワークの構築」が可能な取組みを模索していきたいと考えている。