介護保険ニュース – 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いについて(第20報)

 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取り扱いにつきまして,第20報が発出されましたのでお知らせします。

問1 通所系サービス(通所介護,通所リハビリテーション,地域密着型通所介護,認知症対応型通所介護及び介護予防認知症対応型通所介護。以下同じ。)事業所内において新型コロナウイルスワクチン接種を実施する場合,介護報酬等の取扱い等はどのようになるか。

(答) 通所系サービス事業所内における予防接種等の取扱いについては,「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名通知。以下「保険外サービス通知」という。)において,
 ・保険外サービスであること
 ・また,介護支援専門員が居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載すること
等としている。
 しかしながら,今般の新型コロナウイルスワクチンに関しては,
 ・重症化リスクの高い高齢者に迅速に実施する必要があること
 ・予防接種法上も,疾病のまん延予防上緊急の必要がある臨時接種として位置付けられており,接種の努力義務や市町村長等による勧奨等の公的関与が求められる公益性の高いものであること
など,国として,死亡者や重症者をできる限り抑制し,国民の生命及び健康を守るために,ワクチン接種の実施体制を整えていく必要があり,また,
 ・通所系サービスの事業所内で実施する場合,多くの利用者が接種することが考えられ,当該事業所の職員においても,接種前後の誘導や支援,見守り等多くの業務が発生することが考えられること
から,以下のとおり,特例的に取扱うこととする。
① 介護保険サービスとして提供されているものと取り扱うことができる場合
 今般の新型コロナワクチンに係る予防接種に伴う事業所における業務は介護保険サービスとして提供されているものとし,予め居宅サービス計画に位置付けられた提供時間内で介護報酬を算定することとして差し支えない。

② 必要な経費について,新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費国庫補助金を財源とする委託費が支払われている場合(保険外サービスとして提供されているものと取り扱う場合)
 通所系サービス事業所が事業所内で新型コロナウイルスワクチン接種を実施するにあたり,必要な経費(※)について,市町村より,新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費国庫補助金を財源とする委託費を受領している場合は,従来の取扱いのとおり,当該予防接種に伴う事業所における業務は保険外サービスとして提供されているものとする。(通所系サービスのサービス提供時間の算定に当たっては,通所系サービスの提供時間には保険外サービスの提供時間を含めず,かつその前後に提供した通所系サービスの提供時間を合算し,1回の通所系サービスの提供として取り扱う。)
 この場合,保険外サービス通知に則った対応が必要となるが,特例的に,介護支援専門員が居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要とする。

(※) 必要な経費の例は,感染防止対策,会場借り上げ,会場設営・撤去費,会場の運営(誘導員等)等。
 (参考)新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業に関する詳細
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_notifications.html#003

 なお,上記①②いずれの場合についても,通所系サービス事業所内において接種を実施する場合は,医療法(昭和23年法律第205号)等の関係法規の遵守が必要であること等に引き続き留意すること。

問2 通所系サービス事業所内において新型コロナウイルスワクチンに係る接種を実施する場合,利用者の居宅と通所系サービス事業所との間の送迎に係る費用については,どのように取り扱うべきか。

(答) 問1の①②いずれの場合についても,利用者の自宅と通所系サービス事業所との間の送迎は介護保険サービスとして提供されているものとし,介護報酬を算定することとして差し支えない(利用者の居宅と通所系サービス事業所との送迎を行った場合は送迎減算を適用しないこととして差し支えない)。

問3 通所系サービス事業所内において新型コロナウイルスワクチンに係る接種を実施する場合,接種が実施される日に通所系サービスを利用する予定がない利用者については,どのように取り扱うべきか。

(答) 問1の①の場合については,介護支援専門員が,事前に当該利用者に説明し同意を得た上で,予め居宅サービス計画に予防接種を位置付ければ,当該利用者に係る予防接種に伴う事業所における業務について,介護保険サービスとして提供されているものとして差し支えない。
 このため,予防接種に伴う事業所における業務は,所要の提供時間に対応する介護報酬を算定することとして差し支えない。その際,通所介護,地域密着型通所介護及び(介護予防)認知症対応型通所介護についてサービス提供時間が3時間未満となった場合でも,「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日厚生省告示第19号)の別表指定居宅サービス介護給付費単位数表の6の注2等による「所要時間2時間以上3時間未満の指定通所介護を行った場合」に該当するものとして取り扱うこととして差し支えない。通所リハビリテーションについても同様に,サービス提供時間が1時間未満となった場合でも,「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年2月10日厚生省告示第19号)の別表指定居宅サービス介護給付費単位数表の7の「所要時間1時間以上2時間未満の場合」に該当するものとして取り扱うこととして差し支えない。
 また,送迎についても,問2で示しているとおり,利用者の自宅と通所系サービス事業所との間の送迎は介護保険サービスとして提供されているものとし,介護報酬を算定することとして差し支えない(利用者の居宅と通所系サービス事業所との送迎を行った場合は送迎減算を適用しないこととして差し支えない)。

 問1の②の場合については,当該利用者に係る予防接種に伴う事業所における業務について,保険外サービスとして提供されているものとする。
 なお,この場合,当該利用者の送迎については,接種が実施される日において介護報酬算定が行われないことから,同様に保険外サービスとして提供されているものとする。
 また,問1で示しているとおり,保険外サービス通知に則った対応が必要となるが,特例的に,介護支援専門員が居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要である。

問4 通所系サービス事業所が,サービス提供中に,その保有する車両を利用して,事業所から新型コロナウイルスワクチンの接種会場まで利用者の送迎を行う場合,介護報酬等の取扱い等はどのようになるか。

(答) 通所系サービス事業所が,サービス提供中に,その保有する車両を利用して,通所系サービス事業所と接種会場間の送迎を行う場合,従来の取扱いのとおり,保険外サービスとして提供されているものとする。この場合,保険外サービス通知に則った対応が必要となるが,特例的に,介護支援専門員が居宅サービス計画において当該保険外サービスに関する情報を記載することは不要である。
 一部の職員が当該送迎の業務に従事する際の事業所内の人員配置基準については,今般の新型コロナウイルスワクチン接種の緊急性及び公益性の高さに鑑み,「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」(令和2年2月17日付厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室ほか連名事務連絡)等に基づき,柔軟に対応して差し支えない。
 なお,当該送迎について利用者から対価を得ていない場合(当該送迎について利用者から対価を得ていないが,新型コロナウイルスワクチン接種の実施主体である市町村より送迎の委託を受け,新型コロナウイルスワクチン接種体制確保事業費国庫補助金を財源とする委託費を受領している場合も含む。)については,道路運送法に基づく許可・登録は不要である。
 上記の内容については,国土交通省自動車局と協議済みであることを申し添える。

問5 通所系サービス事業所がその保有する車両を利用して,サービス提供前後の送迎中に,新型コロナウイルスワクチンの接種会場を経由して利用者の送迎を行う場合,介護報酬等の取扱い等はどのようになるか。

(答) 例えば
 ・利用者の居宅から,接種会場を経由して,通所系サービス事業所への送迎を行う場合
 ・通所系サービス事業所から,接種会場を経由して,利用者の居宅への送迎を行う場合
については,利用者の居宅と通所系サービス事業所間の送迎を行っていることから,その費用について,介護報酬を算定することとして差し支えない(送迎減算を適用しないこととして差し支えない)。
 また,この場合について,送迎に時間を要することになり,一時的に事業所内の人員配置基準を満たせない時間帯が生じることも考えられるが,この場合も問4と同様に柔軟に対応して差し支えない。
 なお,この場合について,当該会場に立ち寄らない送迎の場合に通常選択されると考えられる一般的な経路を逸脱する場合であっても,道路運送法に基づく許可・登録は不要である。
 上記の内容については,国土交通省自動車局と協議済みであることを申し添える。

問6 新型コロナウイルスワクチン接種を医療機関以外の接種会場(例えば,体育館や福祉センター等)で行う場合でも,居宅要介護者が接種会場まで移動する手段として,訪問介護を利用することが可能か。

(答)
<訪問介護>
① 訪問介護事業所の訪問介護員等が自ら運転する車両を活用する場合訪問介護の通院等乗降介助が利用可能である。
 なお,現行の取扱いのとおり,以下の場合に限り,身体介護が利用可能である。
 ・接種会場に外出するために乗車・降車の介助を行うことの前後に連続して相当の所要時間(20分から30分程度以上)を要し,かつ,手間のかかる外出に直接関連する身体介護(移動・移乗介助,身体整容・更衣介助,排泄介助等)を行う場合(要介護4又は5の居宅要介護者の場合)
又は
  ・接種会場への外出に直接関連しない身体介護(入浴介助・食事介助等)に30分から1時間程度以上を要し,かつ,当該身体介護が中心である場合(要介護1から5までの居宅要介護者の場合)
には,身体介護(運転時間を控除した所要時間に応じた介護報酬)を算定できる。

② 公共交通機関を活用する場合
 訪問介護の身体介護のうち通院・外出介助が利用可能である(訪問介護事業所の訪問介護員等が,居宅要介護者に付き添い,バスやタクシー等の公共交通機関を利用して移送中の気分の確認も含めたワクチン接種が行われる会場への外出介助を行った場合には,身体介護(所要時間に応じた介護報酬)を算定できる)。

 また,これらを利用する場合には,居宅サービス計画(標準様式第2表,第3表,第5表等)に係るサービス内容の記載の見直しが必要となるが,これらについては,サービス提供後に行っても差し支えない。
 なお,同意については,最終的には文書による必要があるが,サービス提供前に説明を行い,同意を得ていれば,文書はサービス提供後に得ることでよい。

※参考
<(介護予防)小規模多機能型居宅介護及び看護小規模多機能型居宅介護>
 小規模多機能型居宅介護の訪問サービスには,いわゆる訪問介護の身体介護のうち通院・外出介助が含まれているため,小規模多機能型居宅介護事業所が居宅要介護(支援)者に対して接種会場への外出介助を行うことができる。

<定期巡回・随時対応型訪問介護看護と訪問介護(通院等乗降介助)の関係>
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は,併せて訪問介護の通院等乗降介助を利用
することができる。そのため,訪問介護事業所の訪問介護員等は自ら運転する車両を活用して,定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用する居宅要介護者に対して接種会場への移送に係る介助を行うことができる。

2021年5月1日号TOP