2021年5月15日号
山科医師会と府医執行部との懇談会が2月13日(土),Webで開催され,山科医師会から19名,府医から10名が出席。「COVID-19ワクチン接種」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は2月13日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございます〉
厚労省の資料(令和3年2月1日付)を基に,現状を説明した。
正式契約を締結した3社のうち,主にファイザー社ワクチンを想定。ワクチンのスムーズな流通・分配・接種のため,規模や実情に応じた3種の接種施設が設定されている。
・基本型接種施設:
1,000人規模の接種施設。ディープフリーザーを設置し,ワクチンを格納・管理。医療従事者接種後,可能な限り,住民への接種も行う。
・連携型接種施設:
医療従事者概ね100名以上の規模の施設。自院の従事者の接種を行う。
・サテライト型接種施設:
住民,高齢者施設入所者等への接種を行う。
京都府では,基本型接種施設以外にも数カ所にディープフリーザーを設置し,予約にもとづき,府が小分けにして各医療機関に配送予定である。
接種は医療従事者,高齢者,一般住民の順に実施される。前項の接種施設と個別の医療機関での接種体制を整備中である。
1月には川崎市と厚労省で,集団接種を想定した会場運営訓練が実施されたが,高齢者の問診や接種後の待機等で時間がかかり,受付から終了(会場退出)まで40分を要した。実際にはさらに時間を要することが推測される。集団接種の会場設営は,感染予防対策等,さらなる配慮,想定が必要である。
基本型,連携型接種施設の医療従事者は自院で接種可能だが,開業医が連携型接種施設まで接種に行くのは現実的ではないため,自院で接種可能になるよう申し入れている。また,従事者が少人数の医療機関は,ワクチンの無駄が出ないように,各地区でグループ接種を調整してもらうよう求めた。
通常の定期接種と同様,新型コロナウイルスワクチンについても,副反応の集計・評価が行われるが,それに加えて,先行接種者への健康状況調査実施や審議体制が強化される。
府医でもアナフィラキシー等への対応マニュアルを作成中であり,完成次第,会員へ配布予定である。また,筋注の接種方法について,日医が動画を作成,3月中旬に配信予定である。さらに,副反応への救急体制についても,救急・災害委員会で検討中である。
◇「市では今後,集団接種の予定は全くないのか」と質問が出された。
府医からは,「全くないわけではないが,地区毎で事情が異なる。医師・看護師,会場の確保の問題もある。すでに集団接種の方向で動いている地区もある。会場確保は市の役割だが,学校を会場として固定することは認められておらず,現実的ではない。集団接種なしで一定期間中に,全住民への接種を終えるのは難しいのではないか」との考えを示し,市とシミュレーションしていく必要があると回答した。
◇「区担当者によると,市は1会場5万人,土日も休みのない集団接種を検討中とのことである。しかし,開業医は診療で平日の出務が難しい。練馬区・川崎市モデルでは10人の医師の出務が必要であり,現実的ではない。4人位が適切ではないか。会場は区で数ヶ所候補があり,検討中である」と意見が出された。
府医からは集団接種について,連日となると出務医師の問題もあるため,かかりつけ医が集合契約に手上げをしてもらい,自院の周辺の住民を接種していく方がやりやすいのではないかと回答した。
◇「国民のコロナワクチン接種完了まで,6カ月以上を要するではないかと危惧している。集団免疫獲得の観点から,集団接種,個別接種併用で,多くの人に早く接種してもらう必要があるのではないか」と意見が出された。
府医としては,地区の意見に賛同するとともに,各社のワクチンの開発,供給の見通しが不透明であることを説明。ワクチンは今回だけの話ではなく,毎年接種が必要になるため,短期間で多くの人に接種することが大事であるが,供給の問題があると回答した。
◇「アレルギーを持った人への接種を医師側で拒否してもよいか」と質問が出された。
府医からはファイザー社が出したアナフィラキシー症例の中間報告で,8割の人がアレルギーを持っていたことを説明。「問診の段階で過去のアナフィラキシーが判明した場合は,医師の立場として拒否は可能。どうしても接種希望の場合は,リスクを十分説明すべき」と回答した。
◇「問診の段階でアレルギー有りと書かれた場合,中止へ誘導してしまう気がする。この判断は正しいのか」と質問が出された。
府医より,「これは問診医の裁量によるが,危険だと判断した場合に中止を指示するのは問題ないと考える」と回答した。
◇「ぜんそく,アレルギー性鼻炎の患者について,自院では接種可能だと回答しているが,問診医の裁量で接種可否の判断が変わってくる。また,問診自体が診療相談になり,時間がかかる可能性もある。公的に基準を決めて出してほしい」と要望が出された。
府医からは,厚労省が指針を作成して発表する予定とした上で,ぜんそく,アレルギー性鼻炎等は除外され,食物,薬剤アレルギー等が対象になるのではないかと回答した。