保険医療部通信(第342報)- 次期(令和4年4月)診療報酬改定に対する重点要望項目を決定 近医連から日医へ提出

 日医社会保険診療報酬検討委員会は,従来どおり,中医協における日医からの診療報酬改定要望項目について,各方面からの要望を踏まえた上で次期改定に反映させたい意向があります。
 これを受けて,近医連では前回改定時と同様に,各府県からの要望項目を募った上でとりまとめることとし,これに先立つ形で府医から,各地区医および各専門医会にご意見をお伺いしたところです。
 なお,要望項目の選定にあたっては,医療側として本来主張すべきことを中心とし,そのうち各種の専門医会代表委員から提出される可能性の高い事項は避け,限られた要望項目を有効に生かすという主旨で,全体的な影響の大きな項目を選定するという基本方針のもとに,保険医療部にて検討した上で近医連に提出いたしました。
 また,それぞれの要望内容について,その理由や根拠に妥当性が認められるものを中心にとりまとめました。
 この結果,今般,近医連において,各府県から提案された要望項目のうち,最も重要と考えられる3項目およびそれ以外の要望項目7項目を下記のとおり選定し,日医社会保険診療報酬検討委員会に近医連推薦で選出されている濱島委員(府医副会長)から日医に送付いたしましたので,お知らせします。

◇近医連から日医へ提出した要望項目
1.重点要望項目
(1) 初・再診料の点数の引き上げ

 基本診療料は「医療という一連のサービスを初・再診および入院診療の2つの基本的関連においてとらえ,その際に行われる基本的な診療行為の費用を一括して支払うもの」と位置付けている。つまり,診療行為の根幹を総合的に評価した報酬である。
 進歩する医療技術,人的資源の確保,設備投資などは患者に最善の治療を提供するためのものであり,これらのコストが基本診療料において適切に評価されなければ,医療機関の経営は安定しない。
 また,同一日複数科受診については,それぞれの診療科において初・外来診療料を算定可能とするべき。

(2) 感染症対策
 医療機関における平時の感染症対策の重要性をあらためて認識し,かかりつけ医機能,医療提供体制の維持・確保のために,現在の臨時的な取扱いの乳幼児感染予防策加算等の恒久化(基本診療料の点数の引き上げ)を要望する。

(3) 特定疾患療養管理料,処方料・処方箋料の長期処方加算の点数の引き上げおよび対象疾患の拡大
 特定疾患療養管理料は,プライマリケア機能を担う地域のかかりつけ医が計画的に療養上の管理を行うことを評価したものである。今後,かかりつけ医の役割,機能はますます重要になることから,対象疾患の拡大や点数の引き上げを求めたい。
 また,生活習慣病で長期処方を行う患者が増えており,その間に病状が悪化しないようよりきめ細やかな療養指導が求められることから,管理料の月1回(450点)の設定を求める。

2.要望項目
(1) 医師事務作業補助体制加算の点数の引き上げ

 医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する取組としては評価できるが,一般病床から回復期リハビリ病棟入院料,地域包括ケア病棟入院料等に算定が可能な病棟が拡大し,点数の見直しもされたが業務量も増大したため,増員による諸費用と診療報酬点数には大きな乖離があると考える。

(2) 在宅患者訪問診療料の算定要件の見直し
 同一日,同一建物居住者にかかる評価の適正化が望まれる。同一建物居住者を2人診察しても1人を診る場合の半分の点数にも満たないというのは合理性を欠く。点数の引き上げもしくは同一建物診療患者の区分を,「1~5人の場合」,「6~15人の場合」,「左記以外の場合」に変更する。
 また,在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の2について,①算定月1回まで⇒週1回までに②主治医の都合がつかない時などに他の医師に訪問診療を依頼した場合にも要件を満たせば算定できる旨を明記。③ターミナルケア加算・看取り加算を算定可とする。

(3) コンピューター断層診断の算定要件の見直し
 他の医療機関で撮影した画像の診断料について,現在は初診時のみ算定可となっているが,再診時の算定も認めることを要望する。

(4) 院内処方の点数の引き上げ,一包化加算の新設など
 在庫管理などのコストが現在の点数では評価されておらず,また地域性から院内調剤にせざるを得ない医療機関もある。調剤薬局と同等の評価とし,例えば一包化した際の点数を求める。
 また,かかりつけ医など多くの疾病を有する患者診療では7種類以上の投薬が不可避な場合も多い。減算の取り扱いの廃止を要望する。

(5) 技術料が低く抑えられている処置の再評価
 例えば,J053 皮膚科軟膏処置(100平方センチメートル未満),J095 耳処置,J119 消炎鎮痛等処置。

(6) 手術の算定要件の見直し
 同一術野または同一病巣につき,2以上の手術を同時に行った場合は主たるものしか算定できない。一部,50/100の点数を算定できる場合もあるが,その根拠や区別も不明瞭である。複数手術の算定の取り扱いについて見直しを求める。
 例えばS状結腸と盲腸の癌の組み合わせは時間も使用する縫合器も相応にかかる手術のため,それぞれの算定を認めるべき。

(7) 複雑な診療報酬(体系)の是正

2021年6月1日号TOP