保険だより – デキサメタゾン製剤が安定供給されるまでの必要な患者への優先的な使用等の対応への協力について

 デキサメタゾン製剤については,新型コロナウイルス感染症患者の増加にともない世界中で需要が高まっており,当該製剤を製造するための原料を追加的に確保することが困難な状況であることから,通常量以上に供給量を急増させることが難しい状況となっています。
 こうした状況を考慮し,当該製剤が安定供給されるまでの当面の間,一般社団法人日本癌治療学会,公益社団法人日本臨床腫瘍学会,一般社団法人日本感染症学会および一般社団法人日本呼吸器学会の合同声明を参考にした下記対応が厚労省より依頼されていますので,お知らせします。

1.新型コロナウイルス感染症におけるステロイド製剤の適正使用について
(1)デキサメタゾン経口製剤(製品名:デカドロン錠 0.5mg,4mg)の使用は,既に当該製剤による治療を開始している場合や代替薬(プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン等)への切り替えが困難な場合を優先してください。
(代替薬となるステロイド製剤の例)
 ・デキサメタゾン6mg静注
 ・プレドニゾロン40mg内服
 ・メチルプレドニゾロン32mg内服
(2)新規にデキサメタゾン経口製剤による治療を開始する場合には,まずは代替薬による治療を積極的にご検討ください。
 また,酸素投与が必要な新型コロナウイルス感染症患者(中等症Ⅱ以上)にステロイド薬を使用してください。酸素投与が不要な患者(軽症や中等症Ⅰ)では,中等症Ⅱ以上とは対照的に,予後の改善は認められず,むしろ症状を悪化させる可能性が示唆されています。
 ただし,医療需要が逼迫し,すぐに入院治療や対面の診療などでステロイドの処方が難しい場合などであって,酸素飽和度の低下などが遷延的にみられる際には,耐糖能等を考慮の上,医師の判断で2日分程度のステロイド剤の事前処方を行うことは許容されます。また経過中に中等症Ⅱ以上に悪化したとみられる患者に対して医師の判断でステロイド剤の内服開始を指示した場合には,可及的早くに往診するなどして内服薬での治療の継続の可否を判断してください。

2.がん患者の薬物療法について
(1)制吐薬適正使用ガイドライン等,関連ガイドラインに従い,個々の症例の催吐リスクに応じて適切な制吐療法の提供を継続ください。
(2)経口デキサメタゾン等のステロイド製剤を減量できる,あるいは代替療法がある場合は,経口ステロイド製剤の使用量を可能な範囲で低減ください。(具体的例示は別添文書を参照してください)
(3)患者が経口デキサメタゾンを保有している場合,新たな処方を行わず,持参の経口デキサメタゾンの有効活用にご協力ください。

3.デキサメタゾン製剤及びその代替薬の適正購入について
 デキサメタゾン製剤及びその代替薬(プレドニゾロン,メチルプレドニゾロン等)については,返品が生じないよう,買い込みは厳に控えて頂き,当面の必要量に見合う量のみの購入をお願いします。

2021年10月1日号TOP