2020年2月15日号
第51回近畿地区医師会共同利用施設連絡協議会が,和歌山県医主管により,1月18 日(土)ホテルグランヴィア和歌山で開催された。横倉日医会長の祝辞(松本常任理事代読)の後,「地域包括ケアシステムにおける共同利用施設の役割と今後の展望」をテーマにパネルディスカッションが行われ,続いて「医師会共同利用施設の今後」と題した特別講演(講師:松本吉郎日医常任理事)が行われた。最後に次期担当府県として北川靖府医副会長より「次年度は,ホテルグランヴィア京都において令和3年1月23 日(土)に開催するので,多数のご参加をお待ちしている」との挨拶がなされた。当日は,近畿各府県から121 名(京都府からは6名)が出席した。
パネルディスカッションでは,京都府から京都市北区・上京区在宅医療・介護連携支援センターコーディネーターの鷲巣典代氏が「京都市北区・上京区在宅医療・介護連携支援センターの取り組み」と題して発表した。
京都市では,2017 年度より介護保険制度の地域支援事業に位置付けられている「在宅医療・介護連携推進事業」の実施に向け,「在宅医療・介護連携支援センター」を設置することとし,市内の郡市区医に委託する形で事業が開始され,2020年1月までに市内全域をカバーする8つのセンターが設置された。鷲巣氏は,京都市北区・上京区は2つの行政区に3つの郡市区医が存在するという特殊性から,三地区医合同で事業を受託したと説明した。
京都市北区・上京区では,長年にわたり,行政,医療,介護,福祉等各機関の専門職が,安心して住める地域をつくるために,多方面にわたる努力を続けているとし,京都市北区・上京区在宅医療・介護連携支援センターは,このような地域の基盤をもとに「顔の見える関係づくり」をキーワードとして,各機関を有機的につなげ,さらに連携を深めるため,相談事業や啓発事業を行っていることを説明。また,「医療介護専門職向け研修会」を地域の課題に即したテーマで実施しているとし,2018 年度は「はじめよう」,2019 年度は「すすめよう」,2020 年度は「深めよう」をキーワードとして「多職種・多機関の顔の見える関係づくり」に取組んでおり,今後のさらなる発展に期待を述べた。
○ その他,当日の各府県医からの発表内容は以下のとおり。
・大阪府:
一般社団法人堺市医師会理事
小田 真 氏
「堺地域医療連携支援センターについて」
・兵庫県:
兵庫医科大学臨床検査医学講座主任教授
小柴 賢洋 氏
「 地域包括ケアシステムにおける臨床検査データの品質保証について」
・滋賀県:
一般社団法人湖北医師会会長・
長浜米原地域医療支援センターセンター長
手操 忠善 氏
「 長浜米原地域医療支援センターの役割と今後の展望」
・奈良県:
大和郡山市医師会副会長
西﨑 和彦 氏
「 大和郡山市医師会立訪問看護ステーションの運営」
・和歌山県:
那賀医師会理事
池田 宜史 氏
「 那賀医師会在宅医療サポートセンターの取り組みについて」
パネルディスカッションに続いての特別講演では,松本日医常任理事が「医師会共同利用施設の今後」と題して講演した。
松本日医常任理事は,超高齢社会と少子化による人口減少社会を迎える我が国において,持続可能な社会保障を堅持するためには,多職種連携による地域包括ケアシステムの構築・発展,また,健康寿命のさらなる延伸が不可欠であるとし,両者の根幹を成すのはかかりつけ医機能であり,「医師会共同利用施設は,そのかかりつけ医機能を支える重要な地域のインフラストラクチャーである」との考えを示した。
また,現在の我が国は,健康寿命の国際比較において世界最高レベルを堅持しており,そうした成果は,国民皆保険を中核とする公的医療保険制度と地域に根差したかかりつけ医機能のもと,医療へのアクセスのよさ,国民の健康意識や民度の高さ, 関係者の幅広い尽力,医療水準の高さと現場の不断の努力によってもたらされたものであると評価する一方で,超高齢社会と人口減少による患者のニーズ変化に合わせ,医療提供体制も一層の機能分化と連携が求められているとし,“キュア”から“ケア”へ,「施設完結」から「地域完結」へといった医療のパラダイムシフトが求められていると述べた。さらに,医療提供体制の機能分化・連携に加え,医師偏在対策や医療現場の「働き方改革」という要素が加わることについて,「これら三者は,それぞれ目標年が異なり,他者をおいていずれかを優先することもできないが,密接に関連しあうものである」との考えを示した。その上で,医師偏在対策では,全国で医師確保計画が策定され,地域の関係者の合意の下で医療機能の集約化・重点化が図られ,開業を希望する医師には,各地の外来需給に関する情報提供等が行われると見通した。働き方改革については,他の二者よりも目標年が早く到来し,罰則も定められるなど強い規制があると指摘。医師については,他職種へのタスクシフティングが重要な手段とされるが,医師による“メディカルコントロール”の下で,まずはすでに他職種でも認められている業務の周知徹底と,それが実践されていない場合の着実な検証が優先されるべきとした。さらに, かかりつけ医や地域医師会の健康・予防策により疾病の重症化を抑えることは,救急現場の働き方の改善にも大いに寄与するとし,医師会共同利用施設は,これら地域医療の改革,健康寿命の延伸のなかで,地域のかかりつけ医を支援する役割を担っていると述べ,今後のさらなる活躍に期待を示した。