2021年12月1日号
京都北医師会と府医執行部との懇談会が10月13日(水),Webで開催され,京都北医師会から15名,府医から9名が出席。「新型コロナウイルスワクチン接種の今後」,「顔認証機能付きオンライン資格確認システムの現状」,「次期診療報酬改定の動向」をテーマに活発な議論が行われた。
〈注:この記事の内容は10月13日現在のものであり,現在の状況とは異なる部分がございますのでお含みおきください〉
~ワクチン供給の見通し~
第15クールをもってファイザー社ワクチンの日本への年内の搬入は終了し,他社のワクチンと合わせると対象人口の約9割への配分が完了する。
~京都市のワクチン配送予定~
第15クールまでの供給を一定量確保できており,10/11~11/1の週までは上限12バイアル+αの発注が可能で,以降は在庫量を踏まえ,後日京都市より連絡がある。
~中長期的副反応~
mRNAワクチンについては長年研究されており,長期的な副作用は認められていないが,若年男性においてコロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎の副反応が問題となっている。しかし,新型コロナウイルスに感染した場合に合併して発症する心筋炎等の発生頻度よりは低いことから,ワクチンとの関連性が精査されている。安全性については,どのような影響を及ぼすか不明であり,長期的に調査・観察していく必要がある。
~交互接種・追加接種~
厚労省のワクチン分科会では,主に追加接種(3回目接種)について検討され,交互接種を一定要件のもとで可とし,他疾患ワクチンとの同時接種は不可,追加接種については2回目接種から8か月後の接種が妥当との結論になった。
また,既感染者への接種については,罹患後,接種医の判断で接種すること,中和抗体療法を受けた者も接種医の判断で接種することが確認されている。
厚労省からは各自治体に追加接種の12月開始に向けた準備の指示があり,京都では府・市と協議中である。1・2回目接種時と同様の順番,接種場所が原則になると思われるが,詳細が決まり次第,お知らせする。
~経緯と現状~
政府は,マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「オンライン資格確認」の本格運用に向け,推進のための基金を設立し,財政補助・追加財政補助を実施。令和元年には「令和3年3月からの本格運用」を決定したものの,システムの安定性確保や加入者データの正確性担保の観点から,本格運用が10月に延期されることとなった。
府内の医療機関の導入状況は,以下のとおり(9月26日現在)。
運用推進にはマイナンバーカードの普及と,保険証としての利用登録が必須だが,交付枚数率は全国で37.6%,うち保険証としての利用率が11.4%と低迷している。
~導入のメリット・デメリット~
メリットは,受付時における患者の資格情報の自動取得,資格過誤による返戻レセプトの減少等の事務作業の軽減が挙げられる。
一方,デメリットとして,患者がマイナポータルへの初回登録が必要があるため,行政が国民へ周知し,理解を促す働きかけが必要である。また,初期費用以外のランニングコストは医療機関の負担となっており,いずれも解消されるよう,日医が行政へ要望すべきである。
~府医の見解~
システム導入は義務ではないため,メリット・デメリットを踏まえて各医療機関で検討いただくことになるが,導入しないことで不当に不利益を受けることがないよう注視していきたい。将来的に保険証が廃止され,マイナンバーカードに移行する可能性も否定できないが,先行きは不透明であり,状況を見ながら正確な情報を伝えていく。
~医療経済情勢の現状~
令和2年度の概算医療費は,新型コロナウイルス感染症の影響で前年度より1.4兆円の減少で42.2兆円となり,伸び率は対前年度比-3.2%で過去最高の減少幅と言われている。令和3年9月末まで時限的特例措置としていた(外来・入院)感染症対策実施加算等については,日医も強く延長を要望していたが,財務省の非常に強い抵抗により終了となった。代替措置として,令和3年10月~12月を対象期間とするコロナ感染症対策の費用支援「令和3年度新型コロナウイルス感染症感染対策継続支援補助金」が打ち出されている。
~議論の状況~
第1ラウンドの議論はすでに終了。9月22日に改定の基本方針が議論され,コロナをはじめとする新興感染症への対応力の強化が重要テーマとされている。
~日医の主張~
前回改定の影響を精緻に検証して行うものであるが,今回はコロナが甚大かつ複雑な影響を与えており,正しいデータとエビデンスに基づく議論は極めて困難である。次期診療報酬改定は必要最小限の規模に留めるべき。
・外来診療への評価:平時の感染対策をいかに評価するかが大きな課題。現在の特例の影響を踏まえて検討する。
・かかりつけ医機能の評価:財務省が主張するかかりつけ医の制度化は,点数の包括化,人頭割を狙ったものであり,絶対に阻止する。
・オンライン診療:距離要件,30分未満に対面可能であることの堅持が命題。この要件が削減されると,際限なく拡大しかねない。
・入院:今回のコロナ禍での経験によって急激に増大する急性期医療への需要に対して単に病床数や医療機器を増やしても,それを支える人材が確保されていないため,十分な医療提供ができないことが明らかとなった。拙速な病床削減は行うべきではない。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。
また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。