府市民向け広報誌『Be Well』第97号『糖尿病』

 府医では,府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.97「糖尿病」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診療の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.97「糖尿病」
(A3版,見開き4ページ)

解説

京都大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・栄養内科  村上 隆亮
小倉 雅仁

糖尿病にならない,糖尿病とうまくつき合うための基礎知識
 生活習慣の変化・高齢化の進行にともない,糖尿病罹患者数は増加傾向にあります。平成30年国民健康・栄養調査では,糖尿病およびその可能性が疑われる成人は,男性18.7%,女性9.3%でした。
 2型糖尿病はインスリン分泌能の低下とインスリン抵抗性によって引き起こされますが,日本人は,欧米人と比し,インスリン分泌能が低く軽度の肥満でも糖尿病になりやすいと言われています。また,糖尿病患者では糖尿病の家族歴を認めることが多く,食生活や運動不足,肥満などの環境因子が加わって糖尿病を発症します。
 糖尿病は,口渇,多飲,多尿,体重減少など典型的な症状がみられないことがしばしばあります。このため,健診で血糖値異常を指摘されても放置したり,医療機関を受診しても通院を継続しない例も散見されます。診断早期における指導の重要性が指摘されており,糖尿病に対する正しい知識を身につけ,通院・治療を継続してもらうために,専門医療機関での教育入院や栄養・療養指導などの機会をご活用いただければと思います。
 糖尿病治療では,血糖値をコントロールして,合併症の発症・進展を阻止しながら,健康な人と変わらない生活を送ることが目標です。治療は,食事・運動・薬物の組み合わせで行います。一般的な合併症予防のための血糖コントロール目標はHbA1c7.0%未満ですが,高齢者に関しては,認知機能,ADL,併存疾患,重症低血糖が危惧される薬剤の使用の有無などによって,具体的な血糖コントロール目標が示されています(日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイド 2020-2021」)。また,合併症・併存症評価について,糖尿病連携手帳記載の項目を中心に,表に記載しております。他医療機関・診療科との連携や情報共有に同手帳や糖尿病眼手帳をご活用ください。
 新型コロナウイルス感染症に関する一連の報道で,糖尿病が感染・重症化のリスク因子として取り上げられました。一方で,患者の過度な自粛による運動不足や食生活の乱れ,受診控えが懸念されています。現時点では,新型コロナウイルス感染によって糖尿病患者は非糖尿病患者よりも重症化しやすい傾向にあるものの,血糖コントロールが良好な場合には,死亡率は変わらないことが示されています。このため,日々の血糖コントロールが重要と考えられます。

 今回のBe Wellを,糖尿病の理解促進に活用いただければ幸いです。

 府医では関係各団体と共催で11月14日の「世界糖尿病デー」に併せて,例年,「糖尿病対策講座」を開催しております。
 今年度は新型コロナウイルス感染防止対策のため,完全WEB(Zoom)にて開催しました。
 この様子を録画し,YouTubeにアップしております。
 これを府医ホームページの「糖尿病対策」のページで,ブルーライトアップの様子とともにご案内しております。
 こちらも是非,患者・家族等にご紹介ください。

▼糖尿病対策ページ
 https://www.kyoto.med.or.jp/member/diabetic/index.shtml
 (『京都府医師会 糖尿病対策』で検索してください)

2021年12月15日号TOP