2022年2月1日号
令和3年12月20日に成立した令和3年度補正予算において「看護職員等の処遇改善補助金」が交付されることとなりました。看護については,まずは,地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に,収入を1%程度引上げるため,令和4年2月から前倒しで措置されます。
対象医療機関は,令和4年2月1日時点で①「診療報酬における救急医療管理加算の算定対象となっており,かつ令和2年度1年間における救急搬送件数が200件以上」,②「三次救急を担う医療機関(救命救急センター)」です。対象者は,看護職員ですが,看護補助者,理学療法士・作業療法士等のコメディカルにも柔軟に運用することができます。
対象医療機関および対象者の詳細は「看護職員等処遇改善補助金に関するQ&A(第1版)」(4ページ)をご確認ください。
補助金は,国が必要な経費を都道府県に交付し,対象医療機関が都道府県に申請することになりますが,都道府県議会での予算措置等を踏まえての対応となります。行政の準備が整い次第,詳細な通知がされる予定です(看護職員等処遇改善補助金想定される執行スケジュール(イメージ)7ページ参照)。
なお,令和4年10月以降のさらなる対応については,診療報酬で対応されますが,詳細は追って通知される予定です。
看護職員等処遇改善補助金に関するQ&A(第1版)(抜粋) 令和3年12月27日
1 対象医療機関
1-1 本補助金の支給対象となる医療機関は,どのような医療機関なのか。
→ 本補助金の対象医療機関は,以下のいずれかの要件を満たす医療機関となります。
① 令和4年2月1日時点において,診療報酬における救急医療管理加算の算定対象となっており,かつ,令和2年度1年間における救急搬送件数が200件以上であること。
② 令和4年2月1日時点において,三次救急を担う医療機関(救命救急センター)であること。
1-3 1年間における救急搬送件数が 200 件以上であるかどうかは,どのようにして確認するのか。
→ 1年間における救急搬送件数が200件以上であるかどうかは,令和2年度(4月~3月)の病床機能報告の搬送件数によって確認します。
2 処遇改善の対象となる範囲
2-1 「看護職員」とは具体的にどのような職種となるのか。
→ 看護職員とは,保健師,助産師,看護師及び准看護師のことです。
2-2 非常勤職員も対象となるのか。
→ 非常勤職員も対象となります。
2-3 看護職員以外の職員について,処遇改善の対象に加えることはできるのか。
→ 対象医療機関の実情に応じて,対象医療機関で勤務する看護補助者,理学療法士・作業療法士等のコメディカルの賃金改善に充てることも可能です。
2-4 処遇改善の対象に加えることができる看護職員以外のコメディカルとは,具体的にどのような職種なのか。
→ 看護補助者,理学療法士及び作業療法士のほか,以下の職種が対象となります。
【看護補助者,理学療法士及び作業療法士以外の本事業による処遇改善の対象とすることができるコメディカル】
視能訓練士,言語聴覚士,義肢装具士,歯科衛生士,歯科技工士,診療放射線技師,臨床検査技師,臨床工学技士,管理栄養士,栄養士,精神保健福祉士,社会福祉士,介護福祉士,保育士,救急救命士,あん摩マツサージ指圧師,はり師,きゆう師,柔道整復師,公認心理師,その他医療サービスを患者に直接提供している職種
2-5 2-4に記載の職種のうち,「その他医療サービスを患者に直接提供している職種」とは具体的にどのような職種か。
→ 「その他医療サービスを患者に直接提供している職種」としては,診療エックス線技師,衛生検査技師,メディカルソーシャルワーカー,医療社会事業従事者,介護支援専門員,医師事務作業補助者といった職種が該当するものと想定されます。
3 賃金改善の方法
3-1 本補助金を受給するためには,いつから賃金改善を実施する必要があるのか。
→ 令和4年2月・3月分(令和3年度中)から実際に賃金改善を行っているとともに,賃金改善を開始した月に,都道府県に対して賃金改善を実施した旨の用紙を提出していることが必要です。なお,令和4年2月分の支給に間に合わない場合は,同年3月に一時金等により支給することも可能です。
3-2 賃金改善を開始した月(令和4年2月又は3月)における,都道府県に対する賃金改善を実施した旨の用紙の提出は,メール等によって提出することも可能か。また,「賃金改善を開始した月」とは,いつと判断すれば良いのか。
→ メール等での提出も可能です。
→ 「賃金改善を開始した月」とは,令和4年2月・3月分(令和3年度中)の賃金について,改善後の賃金の支払を開始した月となります。なお,賃金改善を実施した旨の用紙の提出は,改善後の賃金の支払を開始する月であれば,実際の賃金支払日前であっても提出可能です。
3-3 賃金改善計画書の具体的内容の周知は,どのように行うのか。
→ 賃金改善計画書を医療機関に掲示することや,処遇改善の対象となる看護職員等に通知すること等が考えられますが,各医療機関において適切な方法を選択してください。また,賃金改善計画書に加えて,必要な資料を併せて周知することも可能です。
3-4 本補助金は,どのような費用に充てることができるのか。
→ 対象医療機関に交付する本補助金の補助額は,処遇改善の対象となる看護職員等の賃金改善及び当該賃金改善に伴い増加する法定福利費等の事業主負担分に全額充てることが必要です。
3-5 「賃金改善に伴い増加する法定福利費等の事業主負担分」とはどのような範囲を指すのか。
→ 「賃金改善に伴い増加する法定福利費等の事業主負担分」には,次のものを含みます。
・健康保険料,介護保険料,厚生年金保険料,児童手当拠出金,雇用保険料,労災保険料等における,賃金改善に応じた事業主負担増加分
・退職手当共済制度等における掛金等が増加する場合の増加分
→ 法定福利費等の事業主負担分については,以下の算式により算定した金額を標準とすることとしていますが,対象医療機関の実情に応じて,以下の算式以外の合理的な方法に基づく概算によって算定することもできます。
<算式>
「前事業年度(令和4年4月が属する事業年度の前の事業年度)における法定福利費等の事業主負担分の総額」÷「前事業年度における賃金の総額」×「賃金改善額」
3-6 本補助金によって,どのような種類の賃金を改善することができるのか。
→ 令和4年4月分以降の賃金改善は,本補助金による賃金改善が賃上げ効果の継続に資するよう,本補助金による賃金改善の合計額の3分の2以上は,基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることが必要です。なお,賃金規程の改定に一定の時間を要することを考慮し,令和4年2月・3月分は一時金等による支給を可能としています。
3-7 全ての看護職員について一律に 4,000 円の賃金改善を行わなければいけないのか。
→ 全ての看護職員について,一律の金額で賃金改善を行わなければならないものではなく,看護職員の職位・職責・職務内容等に応じて,個別の看護職員の賃金改善額を決定することができます。
3-8 人事院勧告によって,令和4年6月の期末手当(賞与)が減少する見込みだが,この場合の賃金改善額は,どのように算定すれば良いのか。
→ 人事院勧告を踏まえて賃金を決定する医療機関においては,人事院勧告を踏まえた期末手当(賞与)の変動の影響を除去して,本事業による賃金改善額を算定してください。
→ 具体的には,令和4年4月分以降の賃金改善については,本事業による賃金改善の合計額の3分の2以上は,基本給又は決まって毎月支払われる手当の引上げにより改善を図ることとされているので,こうした賃金改善を図った上で,期末手当(賞与)については,人事院勧告適用後の期末手当(賞与)額からの改善額を,期末手当(賞与)に係る賃金改善額として算定することとしてください。
4 補助金の申請・交付
4-1 補助金の申請は,いつ,どのような方法で行うのか。
→ 本補助金を受給するためには,賃金改善を開始した月(令和4年2月又は3月)に,都道府県に対して賃金改善を実施した旨の用紙を提出した上で,令和4年4月中に,都道府県に対して,事業計画書を提出することが必要です。
4-2 補助金はいつ支払われるのか。
→ 令和4年4月中に都道府県に対して申請を行っていただき,同年6月までに,補助金を概算支給するスケジュールとなる予定です。なお,本補助金による賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)の終了後,実績報告書を提出いただいて,補助金の精算を行うこととなります。
4-3 概算支給される補助金の金額は,どのように計算されるのか。
→ 令和4年4月の申請段階では,以下の計算式に基づいて算定された金額が支給されます。
<算式>
賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)の各月初日時点における当該医療機関の看護職員の常勤換算数の平均値(見込み) × 8(賃金改善実施期間の月数) ×4,660 円(4,000 円に法定福利費に係る事業主負担率に相当する率を乗じて得た額を加えて得た額)
→ 上記算式のうち,「賃金改善実施期間の各月初日時点における当該医療機関の看護職員の常勤換算数の平均値(見込み)」については,令和4年2月及び3月については,各月初日時点の看護職員の常勤換算数の実績値を用い,同年4月から9月までの期間については,当該期間の各月初日時点における看護職員の常勤換算数の平均値の推計値を用いて算定を行ってください。なお,推計値の算出に当たっては,過去の実績等を勘案し,実態に沿ったものとしてください。
4-4 補助金の精算は,どのような計算に基づいて行われるのか。
→ まずは,実績報告書に基づき,以下の①・②の金額を算定します。
① 賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)の各月初日時点における当該医療機関の看護職員の常勤換算数の総数(実績値) × 4,660 円(4,000 円に法定福利費に係る事業主負担率に相当する率を乗じて得た額を加えて得た額)
② 賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)において,実際に対象看護職員等の賃金改善及び当該賃金改善に伴い増加する法定福利費等の事業主負担分に充てられた経費
→ 上記の①・②のうち,いずれか低い方の金額(「賃金改善実績額」という)と,概算支給額(4-3により算定した金額)を比較し,賃金改善実績額が概算支給額以上となった場合は,概算支給額が補助額としてそのまま確定します。一方,賃金改善実績額が概算支給額を下回った場合は,賃金改善実績額が補助額として確定することとなり,「概算支給額-賃金改善実績額」の金額(余剰額)を返還することが必要になります。
4-5 常勤換算数は,どのように算定するのか。
→ 常勤の看護職員の常勤換算数は1となります。常勤でない看護職員の常勤換算数は以下の算式によって算定された数となります。
<算式>
「当該常勤でない看護職員が職務に従事する1週間の勤務時間(残業は除く。)」÷「当該医療機関で定めている常勤職員の1週間の勤務時間」
4-6 看護職員以外の職員を賃金改善の対象とする場合の補助額は,どのように計算されるのか。
→ 看護職員以外の職種を賃金改善の対象とする場合であっても,補助額は,4-3及び4-4に基づき,勤務する看護職員の常勤換算数等に基づいて算定されます。
4-7 申請や実績報告に当たっては,どのような書類を提出することが必要なのか。実績報告の根拠となる資料は,どのように取り扱うのか。
→ 本補助金を受給するためには,賃金改善を開始した月(令和4年2月又は3月)に,都道府県に対して賃金改善を実施した旨の用紙を提出した上で,令和4年4月中に,都道府県に対して,事業計画書(実施要綱の様式1)を提出することが必要です。
→ 本補助金による賃金改善実施期間(令和4年2月~9月)の終了後,実績報告書を提出いただくことが必要です。
→ 対象医療機関は,給与明細や勤務記録等,実績報告の根拠となる資料を,補助額の確定の日の属する年度の終了後5年間保管することが必要です。