相楽医師会との懇談会

「かかりつけ医,定額制」,「 医療機関の保険診療窓口支払いにおけるクレジットカード使用の是非」,「2020 年度診療報酬改定に対する展望」について議論

相楽医師会と府医執行部との懇談会が11月16 日(土),ホテルフジタ奈良で開催され,相楽医師会から34 名, 府医から5名が出席。「かかりつけ医, 定額制」,「医療機関の保険診療窓口支払いにおけるクレジットカード使用の是非」,「2020 年度診療報酬改定に対する展望」について,活発な議論が行われた。

かかりつけ医,定額制について

日本経済新聞の記事について

6月25 日付日本経済新聞の1面で,厚労省がかかりつけ医の定額制の検討を開始したとの記事が掲載された。これに対しては,中医協で松本日医常任理事が事実確認を行い,厚労省が明確に否定している。

かかりつけ医登録制度,野党議連が法案準備

野田佳彦前首相が会長を務める野党の議員連盟は,患者が「かかりつけ医」を登録する制度創設を柱とする医療制度改革基本法案の骨子をまとめた。生活習慣病など日ごろの取組みで予防可能な病気が増えているとして,健康診断など予防に重点を置いた医療の推進を求める内容である。

定額制度,登録医制度は過去にも民主党が平成23 年に法案提出し,頓挫しているが,その後も財務省,政府でも度々議論に上がっている。

登録医制度について,日医は明確に反対の立場を取っている。また,定額制度についても「受診時定額負担が導入されれば,かかりつけ医の普及に水を差すことになり,今後の医療提供に重大な影響を及ぼすことになる。我が国の特徴であるフリーアクセスはしっかりと守らなければならない」と日医代議員会で答弁している。

かかりつけ医機能に係る現状および課題

平成30 年度診療報酬改定において,かかりつけ医機能の評価を充実させる観点から,かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価としての機能強化加算の新設や,地域包括診療料等の見直し等を実施した。

機能強化加算の施設基準の届出状況は,無床診療所は48.1%(京都16%)であり,施設基準を満たすにあたって困難な要件として最も多かったのは,「地域包括診療加算・地域包括診療料・小児かかりつけ診療料・在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料のいずれかの届出をしていること」であった。

患者がかかりつけ医に求める機能として最も多かったのは「どんな病気でもまずは診てくれる」というものであった。

かかりつけ医機能の評価として,現行の機能強化加算および地域包括診療料等について,患者がかかりつけ医に求める機能等を踏まえ,算定要件および施設基準等を見直すことについてどのように考えるかということや,小児かかりつけ診療料および小児科外来診療料について,それらの趣旨を踏まえ,対象患者等の要件を見直すことについてどのように考えるか等の課題が挙げられる。

受診時定額負担の導入「容認できず」の立場と堅持

財務省は,財政制度等審議会・財政制度分科会で保険給付範囲のあり方の見直しを行い,受診時定額負担の導入を検討すべきと提言。これに対し,横倉日医会長は,受診時定額負担の導入については,平成18 年の改正健康保険法の付帯決議で3割負担を維持することが明記されているとし,「これまでの原則を破って患者だけに負担を求めるもので,導入は容認できない」と反対した。また,全世代型社会保障検討会議においても同様の立場を繰り返し主張した。

医療機関の保険診療窓口支払いにおけるクレジットカード使用の是非について

クレジットカード使用によるメリット,デメリット

メリット・・・
(医療機関)未収金が解消
(患  者)現金不要でポイント付与
デメリット・・・
(医療機関)手数料負担,設備導入が必要

保険薬局等における一部負担金の受領に応じたポイントの付与等について

一部の保険薬局において,保険調剤に係る患者の一部負担金の支払いに応じて,ポイントを付与する事例が散見されるようになったことから中医協にて協議された。

厚労省は,平成23 年1月19 日付で,「健康保険法等においてはポイントの提供や使用自体を規制する規定はないが,提供や使用が一部負担金の減額にあたる場合があれば,これらの規定に違反する」,「患者が保険薬局等を選択する場合,ポイントの提供やそれを強調した広告によらず,薬局規則に基づき,保険薬局等が懇切丁寧に保険調剤等を担当し,保険薬剤師等が調剤,薬学的管理および服薬指導の質を高めること等によりなされるべきである」との通知を発出している。

一方で,その後もポイント付与や広告が継続されていたことから,平成24 年9月14 日付通知では,一部負担金等の受領に応じて専らポイント付与およびその還元を目的とするポイントカードについては,ポイントの付与を認めないことを原則とする旨の周知がされたものの,「クレジットカードや,一定の汎用性のある電子マネーによる支払にともない生じるポイントの付与は,患者の支払の利便性向上が目的であることに鑑み,やむをえないものとして認める」とした内容となっている。

平成29 年1月25 日付通知では,①ポイントを用いて調剤一部負担金を減額することを可能にしているもの,②調剤一部負担金の1%を超えてポイントを付与しているもの,③調剤一部負担金に対するポイントの付与について大々的に宣伝,広告を行っているものについては,口頭による指導を行い,改善が認められなければ個別指導を行うように周知されている。

府医の見解

ポイント付与について 

大手薬局が独自で作成しているポイントカードのポイントを保険調剤の一部負担金の支払に充てることは保険制度上不適切であるとの見解が厚労省から再三出されているので,不適切である。

クレジットカード使用について 

キャッシュレスを積極的に推進していないが,クレジットカードの使用は明確に不可と明示されていないため,昨今,国内でのクレジットカード・電子マネー使用の増加と,外国人によるクレジットカードの支払いが増えていることもあり,各医療機関の現状と照らし合わせて検討が必要である。

手数料について 

カード会社は,利用件数が増えれば手数料が下がるように設定している(例:1件3.2%→ 50 件2.8%)が,手数料を医療機関が負担することは筋違いであり,導入については検討が必要である。

2020 年診療報酬改定の展望について

特定保健医療材料の持ち出し価格について調査

1回の使用で赤字になるものがあるとし,現場の声を反映するためには,近医連・日医を通じて要望するしか方法がなく,地区医や専門医会からしっかりと意見を上げることの重要性を訴えた。

令和2年度診療報酬改定に向けた議論の概要

第1ラウンドでは,下記の2点について,論点整理が行われた。

  1. 患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ,年代別の課題の整理
  2. 昨今の医療と関連性の高いテーマについての議論の整理

その中で特に議論となった点は以下のとおりである。

かかりつけ医機能の充実

紹介状なしで受診する患者の割合は減少傾向にあるが,診療科の種類が多く,様々な病気に対応してくれるという理由で,大病院を受診する患者も多いため,引続き定額負担のあり方について検討する必要がある。

かかりつけ医機能について,平成30 年度検証調査によると,患者がかかりつけ医に求める役割は「どんな病気でもまずは相談に乗ってくれる」,「必要時に専門医,専門医療機関を紹介してくれる」との回答が多く,施設が有すると考えているかかりつけ医機能は「必要時に専門医,専門医療機関に紹介する」,「要介護認定に関する主治医意見書を作成する」,「生活習慣病の予防を含めた健康な生活のための助言や指導を行う」であり,医療機関間の適切な役割分担を図る観点から,かかりつけ医機能を有する医療機関における機能強化加算や地域包括診療科等の施設基準を緩和する必要がある。

機能強化加算について,健保連は「患者をかかりつけ医に誘導するということであれば機能強化加算は違う。1回しか受診していないような患者にも算定するのはおかしい」と主張しているが,日医は「地域包括診療加算の届け出が条件となっていることや体制を評価する点数である」として強く反論していることを紹介した。

働き方改革には一定の財源が必要

働き方改革と医療のあり方について,診療側から「働き方改革により医療従事者の勤務体系が変わり,人件費等の増加が見込まれるため,入院基本料のあり方を検討する必要がある」,「人員等の配置にかかわる要件の見直しについては,医療提供体制の質の確保に配慮しつつ,より弾力的な運用が可能となるような見直しについて検討する必要がある」と主張しているが,一方で支払側からは「入院基本料の議論以前に,非効率な医療がないか検証する必要がある」,「医師の働き方改革にともなって追加的に生じるコストを患者が負担することについては非常に違和感を覚える」と平行線の議論となっている。

オンライン診療は対面が原則

医療におけるICT の利用について,診療側から「医療にどうしてもアクセスできない場合にオンライン診療が活用されるべきであり,利便性のみに着目した議論には慎重であるべき」,「オンライン診療が対面と同等であるかどうかのエビデンスが必要」との意見が示され,支払側からは「働く世代の治療の脱落防止など,仕事と治療の両立のために,オンライン診療の要件を適切なものに見直す方向で検討する必要がある」などの意見が示されている。

また,高額な医療機器について,日本のCT やMRI の人口あたりの設置台数は海外と比較して多い傾向にあるとし,効率的な利用をさらに推進する観点から共同利用の視点が示されているが,診療側は共同利用の推進は特に高額な医療機器に絞って検討する必要があるのではないかとの意見を示している。

薬価引下げ財源は診療報酬本体へ

診療報酬改定に向けた最重要項目について,薬価引下げ財源が過去2回診療報酬本体に充当されていないと指摘し,薬価引下げ財源は診療報酬本体に戻すことが重要であると強調した。

保険医療懇談会

支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。

また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。

2020年3月1日号TOP