2022年7月1日号
令和4年5月27日(金),令和4年度都道府県医勤務医担当理事連絡協議会がオンラインにて開催され府医からは上田理事が出席した。
冒頭,挨拶に立った中川日医会長は,昨年度の全国医師会勤務医部会連絡協議会(以下,全勤協という)について触れ,新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から,初の試みとしてオンライン開催で行ったことを報告し,関係各位の尽力に謝意を示した。また,今年度の全勤協は愛知県医の主管により,可能な限り対面で開催する方針であるとした。
また,本協議会のテーマの1つである,新型コロナウイルス感染症と勤務医の働き方改革について,日医が医療機関勤務環境評価センターの指定を受けたことを報告した上で,コロナの動向を踏まえながら,医師の健康への配慮と地域医療の継続性の両立を図っていくことに意欲を示した。
協議に先立ち,全勤協の令和3年度の開催報告と,令和4年度の概要説明が行われた。
協議では,日医勤務医委員会の若林久男氏,渡辺憲氏による講演に続いて,活発な意見交換が行われた。
上田府医理事は,京都が主管となって,「勤務医とともに歩む医師会の覚悟〜医師会が守るべきもの,変えるべきもの〜」をメインテーマに開催した昨年度の全勤協について報告。1年延期となったものの,協議会初の試みとして,各都道府県医を繋いでオンライン開催し,特別講演については収録してオンデマンドで配信,シンポジウムは当日のディスカッションをメインとして活発な議論が交わされたことを説明した。
また,府医の研修医事業の柱として開催している「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」の全容がわかる動画を上映したことを報告するとともに,協議会のまとめとして,医師会の会員数という「数」の問題だけでなく,医師会活動の「質」の問題として,医師の代表として立ち振る舞うべき医師会が,勤務医とともに歩むためには「覚悟」が必要であると提言したことを強調した。
続いて,次期担当県である愛知県医から令和4年度の全勤協について概要を説明,対面形式での開催を予定しているものの,新型コロナウイルス感染症の動向を注視しながら準備を進めることが説明された。
協議では,まず,香川県医副会長・日医勤務医委員会委員 若林久男氏より,「コロナ禍での勤務医の働く環境課題の整理と,今後のポストコロナ・ウイズコロナ時代を見据えた勤務医の働き方改革」として講演があった。
若林氏は,これまでの新型コロナウイルス感染症がもたらした地域での対応をめぐる大きな混乱や医療者をめぐる様々な課題,IT活用の急速な進展等について触れ,今後の医療行政の方向性として,第8次医療計画の策定に向けて議論が進められていること,地域医療構想の着実な推進が重要視されていることを示した。また,感染拡大時の受け入れ態勢の変遷を示した上で,「平時」と「非常時」対応の両立として,病院や地域は病床の機動的運営や人材の流動的配置が求められるとし,感染症以外の一般診療への配慮も必要であることから,勤務医の働く環境にも大きく影響するとの見方を示した。
その後の意見交換では,広島県医から,コロナ患者を受け入れる医療機関においては,一般診療に一定の制限がかかってしまうことから,直接感染症に携わることがない診療科の医師は時間に余裕が出てきているケースもあると指摘。広島県と県医師会とで実施しているオンライン診療の取組みにそういった医師の協力が得られないかとの意見が挙がった。これに対し,茨城県医からは,産婦人科を例に上げ,感染妊婦が1名発生するだけで大変な労力が必要とされるため,時間的余裕が出てきたという事例は稀有であるとの見解が示された。
また,「平時」と「非常時」のスイッチを切り替えるシステム作りについて,広島県では入院調整,病床の確保を県が中心となって行っているとした上で,病院の中で医療資源のシフトを行い,通常診療を絞ってコロナ患者の診療を手厚くしたことが紹介された。
続いて,東京都医から,非常時の人員確保について日医のスタンスを問う声が上がり,橋本日医常任理事から,日医と厚労省,四病協でコロナに対応する医師の育成に係るプログラムを作成し,対応を進めているが,この取組みは「平時」と「非常時」のスイッチを切り替えという視点ではなく,あくまで現在の新型コロナウイルス感染症などの新興感染症への対応であるとの説明がなされた。
続いて,鳥取県医会長,日医勤務医委員会委員長 渡辺 憲氏から「全国における勤務医の意見集約に望まれること~全国8医師会ブロックにおける議論の活性化への提言~」と題して講演があった。
渡辺氏は,勤務医を取り巻く喫緊の課題として,まず,新型コロナウイルス感染症について言及。病床が逼迫し,医療崩壊が危惧されるほどの事態に陥り,多くの勤務医が疲弊し,限界に達していたとの考えを述べるとともに,医師の働き方改革の推進,医師の地域・診療科偏在,専門医制度と地域医療を課題として挙げた。
また,これらの課題に対して,都道府県医,郡市区医において議論が交わされているものの,これらの議論を,日医の医療政策に十分に反映できていないとして,都道府県医等での勤務医部会,勤務医委員会の設置の重要性を指摘するとともに,全国各ブロック医(連合)において勤務医を取り巻く環境の課題を継続的に協議する役割を持つセクションの設置を提案した。
その後の意見交換で,橋本日医常任理事は,全国各ブロック医(連合)での議論の有用性について触れ,東北ブロックでは組織強化に向けて勤務医のディスカッションの場を設けようという試みから,連絡協議会が行われる予定であることが報告された。
北海道医からは,医師の働き方改革に関してブロックで議論できる場が求められ,解決困難な課題を乗り越えるための具体的な議論の重要性が訴えられた。