2022年7月15日号
緊急承認制度の創設と電子処方箋の仕組みの創設を内容とする「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第47号。以下,「改正法」という)については,本年5月13日に成立し,5月20日に公布され,政省令について所要の整備等が行われましたので,抜粋してお知らせします。
具体的には,国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延等の事態における健康被害の拡大を防止するため,緊急時に新たな医薬品,医療機器および再生医療等製品を速やかに薬事承認する仕組みとして,医薬品では緊急承認として3つの条件や,適正な使用の確保のための必要な条件および2年を超えない範囲内の期限を付して承認すること等の規定がなされています。また,処方情報および調剤情報の即時的な一元管理を可能とする電子処方箋の仕組みの整備に関する事項は,施行スケジュールのとおり,令和5年2月1日までの間において政令で定める日から施行することとされていますのでご留意ください。
記
第1 改正の趣旨
1 改正法の趣旨
国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延等の事態における健康被害の拡大を防止するため,緊急時に新たな医薬品,医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)を速やかに薬事承認する仕組みを整備するとともに,処方情報及び調剤情報の即時的な一元管理を可能とする電子処方箋の仕組みを整備すること。
第2 改正の主な内容
1 緊急時に新たな医薬品等を速やかに薬事承認する仕組みの整備に関する事項
(1)緊急承認の条件
ア 医薬品(体外診断用医薬品を除く。この項,ウ及び(4)のアにおいて同じ。)の製造販売の承認の申請者が製造販売をしようとする物が,次のいずれにも該当する医薬品として政令で定めるものである場合には,厚生労働大臣は,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「薬機法」という。)第14条第2項(第3号ハに係る部分を除く。)第6項,第7項及び第11項の規定にかかわらず,薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて,その適正な使用の確保のために必要な条件及び2年を超えない範囲内の期限を付してその品目に係る製造販売の承認を与えることができるものとすること。
① 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品であり,かつ,当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。
② 申請に係る効能又は効果を有すると推定されるものであること。
③ 申請に係る効能又は効果に比して著しく有害な作用を有することにより医薬品として使用価値がないと推定されるものでないこと。
ウ アによる医薬品の製造販売の承認に関し,その対象となる医薬品として新型コロナウイルス感染症に係る医薬品を定めること。
(3)緊急承認の期限
ア 厚生労働大臣は,ウによる製造販売の承認の申請に係る審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは,薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて,緊急承認の期限を1年を超えない範囲内において延長できるものとすること。
イ 緊急承認を受けた者は,厚生労働省令で定めるところにより,当該医薬品等の使用の成績に関する調査その他厚生労働省令で定める調査を行い,その結果を厚生労働大臣に報告しなければならないものとすること。
ウ 緊急承認を受けた者は,その品目について,当該承認の期限(アによる延長が行われたときは,その延長後のもの。エ及びオにおいて同じ。)内に,改めて製造販売の承認の申請をしなければならないものとすること。
2 電子処方箋の仕組みの整備に関する事項
(1)地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(平成元年法律第64号。以下「医療介護総合確保法」という。)の一部改正
ア 医師又は歯科医師は,患者又は現にその看護に当たっている者(以下「患者等」という。)の求めに応じて,当該患者等に対する処方箋(書面に代えて当該処方箋に係る電磁的記録を作成した場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)の交付に代えて,社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)又は国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)に対し,厚生労働省令で定めるところにより,当該処方箋を電磁的方法により提供することができるものとすること。
イ アにより電磁的方法により提供される処方箋(以下「電子処方箋」という。)の提供を受けた支払基金又は連合会は,厚生労働省令で定めるところにより,当該患者が当該電子処方箋に記録された情報を閲覧することができるようにするとともに,当該患者等の求めに応じて,調剤を実施する薬局に対し当該電子処方箋を電磁的方法により提供しなければならないものとすること。
(2)医師法及び歯科医師法の一部改正
医師及び歯科医師は,(1)のアにより,支払基金又は連合会に対し電子処方箋を提供した場合は,患者等に対して処方箋を交付したものとみなすものとすること。
(3)薬機法の一部改正
薬剤師は,処方箋を電磁的方法により提供する仕組みを用いて,医療を受ける者の薬剤又は医薬品の使用に関する情報を医師等に提供することにより,医療提供施設相互間の業務の連携の推進に努めなければならないものとすること。