中京東部医師会との懇談会 12.11 ハートンホテル京都

「 新規開業に対して区域の不足医療機能を義務化する件」,「医療機関でのクレジットカード払い」,「地域包括ケアと地域マネジメント」について議論

  中京東部医師会と府医執行部との懇談会が12 月11 日(水),ハートンホテル京都で開催され,中京東部医師会から12 名,府医から9名が出席。「新規開業に対して区域の不足医療機能を義務化する件」,「医療機関でのクレジットカード払い」,「地域包括ケアと地域マネジメント」について,活発な議論が行われた。

新規開業に対して区域の不足医療機能を義務化する件について

  2019 年4月1日に施行された改正医療法・医師法で,医療計画に新たに「医師確保計画」および「外来医療」に関する事項の記載が設けられた。「医師確保計画」および「外来医療計画」は,都道府県の地域医療対策協議会で協議し,パブリックコメント,医療審議会を経て策定される。

  「外来医療計画」には,外来医療に関する情報の可視化,新規開業者等への情報提供,地域の医療関係者等において外来医療機関での機能分化・連携方針等の「協議の場」の設置に関する事項が盛り込まれる。

地区からも懸念の声

  外来医師多数区域における新規開業者の届出の際に求める事項として,「地域で不足する外来医療機能を担うことに合意する旨を記載」,「合意拒否の場合には,協議の場を設け出席を要請。協議の結果を公表」等,かなり強めの内容となっており,地区医からも「開業規制ではないか」との懸念が広がっている。この点については,日医は明確に否定。また,厚労省も「外来医療計画の仕組みは,医師の開業を強制力を持って制限するものでは全くない」と説明していることから,あくまでも医師の自主的判断であるとしている。

   新規開業医が医師会に入会する段階で,すでに開業地,診療科等が決まっているケースが多い。今後は勤務医も含め,新規開業の可能性のあるすべての医師に少しでも早く情報を可視化することが重要で,地域で必要な医療機能について理解される方策が必要である。

京都府における取組み

  京都府では2019 年10 月〜12 月にかけて,各圏域において地域医療構想調整会議を開催し,外来医療計画に関する検討がなされた。今後京都市域においても「ブロック会議」が開催予定であり,地区の実情を反映できるよう活発な議論を求めた。

   情報の可視化については,すでに「京都健康医療よろずネット」で進行中であるが,個人情報の問題もあるため,現在は所在地と診療科の2点のみの公開であり,今後どのように公開するか検討中であるとした。

   また,府医では在宅医療塾を中心とした各種研修会の活用を検討。新規開業を考えている医師に受講を促し,地域医療への理解を深めてもらえる機会を提供していきたいとし,その考えを京都府にも踏まえていただき,「在宅医療に係る研修会への参加について」との項目が追加されたと説明。

質疑応答

  地区から「新規開業者の診療科,診療形態の規制への危惧は,新規開業者だけでなく,既存の開業医にも影響が及ぶのではないか」と質問が出された。

   「今回のガイドラインは,厚労省は地域の診療科,形態,医師数などのコントロールを考えているのではないかという疑問があるものの, 日医がこの点について確認したところ,あくまでも参考であり開業制限ではないとの回答を得た」と回答した。

医療機関でのクレジットカード払いについて

  保険薬局等における一部負担金の受領に応じたポイントの付与等について解説(本誌3.1号P 3~P4参照)。

地域包括ケアと地域マネジメントについて

  中京東部医師会より中京区在宅医療・介護連携支援センターの事業設立からの経緯について詳細な情報提供がなされ,その後意見交換を行った。

中京区の在宅医療介護連携

  当初,地域医療介護総合確保基金(以下,「基金」という)を活用した「在宅医療センター地域連携室」設立後,地域支援事業として「在宅医療・介護連携支援センター」が設立された。「在宅医療・介護連携支援センター」は,介護保険事業である地域支援事業(在宅医療・介護連携推進事業)として地域・ケアマネ・包括・行政との共同的な取組みを行い,「在宅医療センター」は介護保険に限定しない医療ニーズの高い連携への取組みと位置付けられた。

  その後,在宅医療介護連携推進協議会を京都市事業(在宅医療・介護連携推進事業)に組み入れることとなり,それぞれの役割が整理された。

  ① 在宅医療・介護連携支援センター運営会議が地域包括ケアを協議する場に

  ② 在宅医療介護連携推進協議会が医療介護連携部会として,地域包括ケアの実行・運営

  ③ 在宅医療センター地域連携室は,医療ニーズの高い在宅移行支援に関わるとともに,評価とアセスメントを行い,その中での課題や新たな方向性を行政に発信する

  各会は名称こそ変わらないものの,その内容は大きく整理されたことになる。

  これらの事業は各地区の特性や歴史により大きく異なる。例えば乙訓医師会では,「在宅医療・介護連携支援センター運営会議」にあたるものが「地域包括ケア推進交流会」であり,「在宅医療介護連携推進協議会」にあたるものが「在宅療養手帳委員会」に近いものである。

  それぞれの役割分担や行政との関わり方,さらには財源なども含め,中京区の取組みは他地区の大きな参考になるものと考える。

基金事業への積極的な活用を依頼

  一方,基金事業は,地域支援事業(在宅医療・介護連携推進事業)の推進もあり,その実績は低迷傾向にある。基金事業は,在宅医療を推進するための貴重な事業であり,また,各地区における重要な運用財源となり得るので,今後も積極的に活用されたい。

地域マネジメント

  PDCA サイクルによりすすめられる「地域マネジメント」はこれからの課題であり,現在のところ「マネジドケア」の考えが進んでいるということはない。あらゆる場面で事業の財源について議論される可能性はあるが,地域包括ケアのあるべき姿を具現化するためにも財源ありきの議論にならないよう慎重に対応したいと考えている。