2022年11月15日号
宇治久世医師会と府医執行部との懇談会が10月12日(水)Webで開催され,宇治久世医師会から23名,府医から11名が出席。「今後の地域医療構想と地域包括ケアシステムの進め方」,「かかりつけ医制度」をテーマに活発な議論が行われた。
~地域医療構想と調整会議~
地域医療構想は2025年に迎える超高齢社会にともなう医療ニーズの質・量の変化や労働力人口の減少を見据え,医療需要と病床の必要量を医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに推計し,目指すべき医療提供体制を実現するための施策である。
地域医療構想調整会議では,地域医療構想を進める上で,圏域ごとに抱える課題について,主に病床機能報告の近況や公的医療機関等の具体的対応方針の再検証,2025年に向けた病院の役割などの情報共有が行われ,圏域における機能分化・連携を推進するための議論・調整が行われる。
京都府においては,2019年以降,コロナ禍の影響で実施されていなかったが,京都市域,山城南,丹後圏域では今年度から再開され,山城北圏域においても12月を目途に開催予定である。
~病床機能報告(京都方式)~
病床機能報告では,各医療機関が病棟単位で4つの機能区分を判断して報告するが,京都では定義や基準が曖昧な急性期機能を「重症急性期」と「地域急性期」に分類し,「地域急性期」を回復期と見なすことで,地域の実情に即した医療機能や供給量を把握することとしている。
~医療計画~
第8次医療計画(2024年度~2029年度)の策定作業が2023年度にかけて進められるが,「がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病,精神疾患」の5疾病と「救急医療,災害医療,へき地医療への支援,周産期医療,小児医療,新興感染症等の感染拡大時における医療」の6事業および在宅医療について,地域ごとに医療機関数や診療科数に違いや特性があることから,脳卒中や心筋梗塞のような急を要する医療とがんなどの急がなくてもよい医療をどこが担うか,また,圏域内で完結させるべき医療機能と,隣接圏域等との連携で対応可能なもの等を整理し,地域のあるべき医療提供体制について,地域医療構想調整会議での積極的な議論が求められる。
~地域包括ケアシステム~
京都においては,地域包括ケアシステムを今後どのようにしていくか,その中で病床をどのように機能させていくかという考え方で地域医療構想の議論が進められてきた。京都方式の地域医療構想として,各病院が大きく機能の変更をしなくてもこの状態で維持していけるという形で「京都府地域包括ケア構想(地域医療ビジョン)」が策定された。超高齢社会を迎えるにあたり,施設完結型から地域完結型医療を目指すことが明示されている。自宅で療養しながら,急変時や回復後の対応など病期に応じた仕組みをどのように作っていくかが地域包括ケアシステムの核になってくる。今後,地域医療構想調整会議においては,かかりつけ患者が在宅で療養している際に,病期に合わせて,どのようなサポート体制があれば良いかという視点での議論が求められる。かかりつけ医機能の発揮が非常に重要であり,かかりつけ医と患者は必ずしも一対一である必要はなく,地域で面として患者を支える医療提供体制のあり方が必要になる。
~かかりつけ医の制度化に対する府医の見解~
財務省は,新型コロナウイルス流行当初に感染拡大を防ぐために受診に一定の制限をかけたにもかかわらず,かかりつけ診療所が受け入れ困難であったと捉えて,かかりつけ医機能が十分に機能しなかったと問題をすり替え,かかりつけ医の制度化を図ろうとしている。また,かかりつけ医機能の要件を明確化すべきとの意見も一部にあり,かかりつけ医を登録制とし,患者一人あたりの定額制を導入することにより,医療費を抑制することが財務省の狙いであり,フリーアクセスや出来高払い制を柱としてきた国民皆保険制度を崩壊へと導くことが危惧される。
2013年に日医・四病院団体協議会合同提言でかかりつけ医の定義とかかりつけ医機能について示され,かかりつけ医は患者のもっとも身近で頼りになる医師として,自ら積極的にその機能を果たしていくものであるとされている。府医としても「かかりつけ医の制度化」は明確に反対しており,「かかりつけ医機能」のさらなる推進が重要であると考えている。
しかし,「骨太の方針2022」において「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」と明記された。日医では「医療政策会議」の下にワーキンググループ(松井府医会長が参画)を設置し,かかりつけ医のあり方などについて検討を開始しており,取りまとめ等が行われた際には,府医からも情報提供する予定である。
~オンライン資格確認~
国はマイナンバー制度によって個人情報の一元管理は行われないと否定しているものの,懸念が残るところである。
オンライン資格確認の義務化やリフィル処方箋の導入など,政府が一定の方針を定め強引に推し進める傾向が特に顕著になってきており,府医としても問題視しているところである。
一方,日医はオンライン資格確認を各医療機関が導入することで,患者の様々な情報が集約される「全国医療情報プラットフォーム」に発展し,質の高い医療提供やかかりつけ医機能の発揮に寄与する基盤になると期待を示している。
~日医医療政策会議かかりつけ医ワーキンググループでの議論~
フランスやイギリスなどではかかりつけ医が制度化されており,このような制度を参考に制度化を目論んでいるのが財務省の考えであるが,明らかに医療費の抑制が主眼である。日医が進めている議論の大前提は,フリーアクセス制の堅持であり,感染症パンデミックの有事と平時とは切り離して考えることを前提に議論が進められているところである。
患者が自由に医師や医療機関を選べることは,医療に対する安心・信頼に繋がっているとともに,フリーアクセスにより緩やかな競争原理が働いて,医療の質の向上に寄与しているという見方もできる。
医師はそれぞれ専門領域を持つ専門医であり,自身の専門領域以外の疾病の際には,信頼できる専門医療機関への紹介や,知り合いの専門医に相談したり,自らも知見を広げ,その都度,かかりつけ医としての資質を向上させてきた。
かかりつけ医機能の定義に記されているようなことは,すでに多くの医師がそのような機能を果たしており,かかりつけ患者であるか否かにかかわらず,医療に関する相談があった時点で,かかりつけ患者という認識を持っている。そのような意識が地域包括ケアシステムの中で,かかりつけ医機能を発揮する上で必要なことである。
また,日医かかりつけ医機能研修制度を活用し,医師が自主的にかかりつけ医機能の向上に努める姿勢を見せることが,国民の信頼に繋がる。かかりつけ医機能を強化・推進することによって,財務省の施策に対抗していきたいと考えている。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的取り扱いについて解説するとともに,個別指導等における主な指摘事項について資料提示した。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。