2020年2月1日号
宇治久世医師会と府医執行部との懇談会が10 月9日(水),うじ安心館で開催され,宇治久世医師会から20 名,府医から9名が出席。「国民皆保険の今後」,「地区医師会が主催,共催,後援する学術講演会のあり方」,「災害時,地区医師会がするべき対応,成し得る貢献活動」について,活発な議論が行われた。
医療費の増加のうち,高齢化など人口動態の変化によるものは半分程度であり,残り半分は診療報酬改定のほか,新規の医薬品や医療技術の保険収載,医師や医療機関数の増加など,政策的に対応できる余地があると考えられている。
また,社会保障制度は,社会保険方式を採りながら,高齢者医療・介護給付費の5割を公費で賄うなど,公費負担(税財源で賄われる負担)に相当依存している。その結果,近年,公費の比重の大きい高齢者医療・介護給付費の増にともない,負担増は公費に集中している。これを賄う財源を確保できていないため,給付と負担のバランス(社会保障制度の持続可能性)が損なわれ,将来世代に負担を先送りしている。
高齢化,支え手の減少,高度化の中で,財政と医療・介護保険制度の持続可能性を確保していくため,団塊の世代が後期高齢者となり始める2022 年度までに制度改革に取組んでいく必要があり,「保険給付範囲のあり方の見直し」,「保険給付の効率的な提供」,「高齢化・人口減少下での負担の公平化」の視点で,早急に議論を進めるべきである。
近年,医療技術の急速な進歩により高い治療効果が期待されるものの,1回あたりの費用が極めて高額,あるいは市場規模が数千億円の新薬が登場してきている。病気に苦しむ患者に光明が差す一方,医療保険財政の圧迫要因の一つともされ,高額新薬を保険適用しながら国民皆保険制度を維持するには,保険給付範囲の見直しが喫緊の課題である。
国は「全世代型社会保障検討会議」を設置し,給付と負担のあり方を検討するとともに,「骨太方針2020」でも一定の結論が出される予定であり,医療費抑制策と患者・国民負担増について厳しい議論が行われる見込みである。
各地区や専門医会ではメーカーとの共催での学術講演会が減少傾向にあり,他地区における学術講演会の開催状況を報告した。
一方,府医では,地区における生涯教育事業を図ることを目的に,「生涯教育事業負担金」(公衆衛生事業)を実施している。交付対象となる事業は,府医と共催で地区医が実施する医師・看護師・介護職等の医療従事者向けの生涯教育事業であり,メーカーとの共催の場合は対象外となるとして,金額的には少額ではあるが,積極的な活用を求めた。
また,地区医と病院との共催での学術講演会は,地域連携・顔の見える関係の強化にも寄与するとして,費用面など様々な課題はあるとしつつも,検討する価値があるのではないかと提言した。
災害時医療は救急医療における「軽症は診療所,中等症以上は救急病院,重症は三次医療機関(災害医療拠点)」の考えと基本的には同一であり,災害医療においても災害拠点病院から在宅までが対象となる。
地区医の災害時医療活動は,発災直後(孤立無援期~超急性期)では,自院患者・従業員・自分自身の安全確保を行った上で,地区医の管下医療機関の被害状況や診療可否の把握が重要。また,JMAT などの支援活動が本格化する時期には,地区医の災害対策本部(本部機能のみでも可)を設置し,避難所運営への参画や被災医療機関の再開に必要な支援内容の把握,在宅ニーズや支援空白地域・施設の把握が地区医には求められる。特に医療支援チームを受け入れる“受援機能”が重要になる。
会員の安否確認などの情報共有は,固定電話・災害優先電話・携帯電話・衛星電話・防災無線など様々な手段を検討しておくことが必要であり,災害状況によっては地区班単位などで徒歩での確認が必要になることも想定される。
大規模災害時の保健医療活動について,都道府県に保健医療調整本部が設置され,各保健所と連携し,「保健医療活動チームに対する指揮または連絡・派遣調整」,「保健医療活動チームと情報連携」,「収集した保健医療活動に係る情報の整理および分析」を一元的に実施し,総合調整する体制を整備することが検討されている。
支払基金と国保連合会双方における審査の平準化をはかるために開催している「基金・国保審査委員会連絡会」の状況について解説するとともに,個別指導における主な指摘事項についての資料を提供した。
また,療養費同意書交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書発行に理解と協力を求めた。