「災害対策」,「地区医師会開催事業への助成金」,「介護保険主治医意見書」について議論

 西京医師会と府医執行部との懇談会が11月29日(金),樫原公会堂で開催され,西京医師会から8名,府医から9名が出席。「災害対策」,「地区医師会開催事業への助成金」,「介護保険主治医意見書」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は 11 月 29 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

災害対策について

 花折断層,樫原断層~水尾断層で地震が起これば,西京区では最大震度7,火災や液状化現象など甚大な被害が想定され,医師会としても様々な災害対策を講じる必要がある。地区医での災害対策の参考とするべく府医が作成中の防災業務計画の概要を紹介した。

〜地区医の初動について〜
 災害医療は,平時の医療とは異なり,医療需要に対して医療資源が大幅に不足し,需給バランスが大きく崩れることになる。そのような状況において,限られた人的・物的資源を有効に活用することで,重要と供給(資源)のアンバランスを極力小さくし,効率的な医療活動を行うための基本原則として,「CSCA」と呼ばれる戦術的アプローチが行動の基盤となる考え方である。Commandand Control(指揮命令系統)を構築し,Safety(安全)を確保した上で,Communication(情報収集)を行い,集めた情報をAssessment(評価・分析)し,活動方針を立ててから効率的に活動を行う。地区医での初動については,このCSCAを踏まえて府医が作成した行動指針をひな形として検討していただきたい。

〈参考:CSCAとは〉
 「C:Command&Control」
  指揮本部の設置・宣言,指揮命令系統
  診療所の組織化(担当範囲)
  ・医師,スタッフ,家族 等
  ・本部の設置「いつ」,「どこに」,「誰が」,「何が必要」,「どこと連携」
 「S:Safety」安全管理
  ・self:自分・家族・スタッフ 等
  ・scene:診療所・自宅・地域 等
  ・survivor:来院患者,在宅患者 等
 「C:Communication」情報共有,通信体制
  ・固定電話,データ通信,携帯電話,衛星電話,無線伝令
 「A:Assessment」現場の評価(アセスメント)
  ・被災状況 ・周辺避難所 ・来院患者
  ・近隣医療機関 等

〜地区医に取組んでいただきたい重要項目〜
 平成30年に岡山県で発生した西日本豪雨では,医師の緊急連絡網が整っておらず,情報収集に苦労したため,すぐに連絡が取れるよう緊急連絡網の作成とともに,指揮命令系統の確立とコミュニケーションツールの検討が重要ある。
 また,災害対策本部の設置については,設置基準や要件の明確化が重要であり,「震度5強(震度6弱)以上,警報発令時,地域(全部・一部)が被災したとき」など,いつ,どのタイミングで本部を設置するか地域性に合わせて検討が必要になる。また,事務局,会長宅,公的施設など,どこに本部を設置して,会長,副会長,担当理事,事務局職員の誰が指示を出すか,本部資機材・通信手段の確保など必要なものの検討が必要である。

〜地区医から行政・府医に発信いただきたいこと〜
 地区内で地震が起こった際,被災状況についてどのような状況が起きているのか,また,物資の不足や,地区医で対応できることなどを府医や行政に発信していただくことで,府医はサポートできるため,地域性等を含めて被災情報の具体的な発信が重要になる。
 地区医として,すべてを背負い込むのではなく,こういった情報を共有していただくことで,全国から来る支援チームが適切な支援に取組むことができると考えている。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,居住先は西京区以外の医師が多く,災害時に桂川を渡って出務が可能な医師を確保できるかとの懸念が示されるとともに,他団体では会員安否確認がマップで可能なシステムを活用しており,府医でも医師会員の安否確認ができる府内統一のシステムを示してほしいとの要望が出された。
 府医からは,災害対策は小規模な単位から大規模な単位の順に対応策を考えることが望ましいとして,地区医でどれくらいの医師が出務可能かを検討し,できることををまとめていくのが良いとの考えを示した。また,府内統一の安否確認システムについては,地区ごとに対策をすると府医だけでは把握しきれないため,全地区医が情報を共有できることが望ましいとして,府医でも検討を進めているとした。

地区医開催事業への助成金について

 府医では,各地区医に対して,「生涯教育事業負担金」,「地区医師会在宅医療・地域包括ケア拠点事業」に係る補助金,「健康づくり対策事業」,「健康増進事業」への補助金などの支援を行っている。これらの支援金については,懇親会費や飲食費などの費用は対象外としているが,これは府医の補助に加えて行政からの補助金が含まれるため,使途に制限がある。
 この他にも「地区助成金」として,4月1日現在の会員数に応じて助成金を交付しているが,こちらは特に使途について制限がないため,この助成金を有効活用していただきたい。
 いずれにしても,府医の財源には限りがあり,主な収入源は会員の先生方からの会費収入であることから,これ以上の捻出は厳しい状況である。近年,医師会の組織率低下が言われる中で,医師会の組織強化は喫緊の課題であることから,地域の先生方へ入会の声掛けをいただき,府医会員の増加にさらなる協力をお願いしたい。結果的に,府医の会費収入が増えれば,地区医への助成金の増額にもつながる側面もあるとして,医師会組織強化の重要性を訴えた。

介護保険主治医意見書について

 地区から,介護保険主治医意見書への記載が不十分な場合,記載した医師に京都市から直接注意喚起や返戻することが必要ではないかとして,今後のあり方について議論した。
 要介護認定において,介護保険主治医意見書はその認定区分に影響をあたえる重要な資料であり,高齢者やその家族が希望の持てる日常生活を送れるよう,患者や家族と十分なコミュニケーションをとり介護が必要な状態についての評価が過不足なく適切に記載されることが主治医には求められている。
 西京では,主治医意見書の記載が不十分で,癌末期の介護認定結果が要支援となってしまうなどの問題事例があり,西京区内の病院医局会で主治医意見書の記載方法を説明する機会を作り,その後の意見書の記載内容に改善が見られたことが紹介された。
 また,主治医意見書は家族構成や生活環境を把握したかかりつけ医が記載することが理想的ではないかとの考えも示され,病診連携の重要性にも意見が出された。
 府医としては,こうした現場で感じられている問題・課題に対しても,行政と議論を重ねながら一つひとつ解決に向けて検討していかねばならないとするとともに,府医では主治医意見書記載マニュアルの作成や主治医研修会を開催し,記載内容の重要性などの理解促進を図っているが,啓発が十分ではなく,特に,病院勤務医への啓発が十分ではないことから,引続き記載内容の充実に向けて啓発活動を続けていく考えである。

府医からの連絡事項

 ※乙訓医師会との懇談会

2025年2月15日号TOP