第 162 回日医定例代議員会 ならびに 第 163 回日医臨時代議員会 開催

― 3期目の松本日医執行部が発足 ―
~城守国斗府医顧問が新たに副会長に就任~

 令和8年6月27日(土)・28日(日)の両日,日医代議員会が開催された。27日の定例代議員会では,令和7年度日医事業報告が行われた後,議事に移り,第1号議案では「令和7年度日本医師会決算の件」が可決された。引続いて役員改選が行われ,会長・副会長・理事選挙においていずれも立候補者数が定数内となったため,投票は行われず,会長には松本吉郎氏(埼玉県)が3期目の再選を決めた。
 また,副会長には,茂松茂人氏(大阪府),池端幸彦氏(福井県),城守国斗氏(京都府)の3名が選任された。
 翌28日の臨時代議員会では,第1号議案「令和8年度日本医師会会費賦課徴収の件」について可決された後,各ブロックからの代表質問に対して日医役員による答弁が行われた。

松本日医会長「所信表明」

1.組織強化のさらなる取組みと関係団体との連携強化

松本 日医会長

 組織強化の取組みを継続してきた結果,全体の会員数は過去最高となる一方で,高齢化等により,A①会員の割合が減少傾向である。日医,都道府県医,郡市区等医が一体となって,医師会員であることが実感できる取組みを,積極的に進めていく。医師会活動においては,情報共有,相互理解,コミュニケーションが重要であり,引続き地域医師会と緊密な連携の維持・強化を図る。
 また,四師会,四病院団体協議会,全国医学部長病院長会議,全国有床診療所協議会をはじめとした医療関係団体,全国知事会等とも力を合わせて,医療を取り巻く難局に立ち向かっていくとともに,より一層大学との連携を強化して課題に取組む。また,政治とは,特に普段からのコミュニケーションを大事にしており,これまで築き上げてきた「顔の見える関係」をさらに発展させていく。

2.国民皆保険制度の堅持

 今後ますます社会保障を取り巻く環境は厳しくなるものと予想され,必要かつ適切な医療は保険診療により確保しなければならない。これまで,「税金による公助」,「保険料による共助」,「患者さんの自己負担による自助」の3つのバランスを取りながら進め,自己負担のみを上げないこと,併せて,低所得者等への配慮が極めて重要であることを強調してきたが,引続き,国民の目線に立って主張していく。
 物価高騰や賃金上昇も喫緊の課題であり,診療報酬のみならず,補助金や税制措置など,あらゆる選択肢を含め,今後も医療政策の提言と実現を図っていく。
 また,医療界や国民の不安を招いている医薬品等の安定供給の課題の解決に向けて,確実に取組む。

3.広報戦略の充実

 医療環境向上のためには,会員各位のみならず国民の理解が欠かせず,また,国民の支持が得られてこそ,より良い医療提供体制が維持・改善でき,国民皆保険制度の堅持がより現実的なものになる。
 「国民の生命と健康を守る使命」を果たすため,より一層国民の理解と協働を得ることができるよう,「国民とともに歩む,信頼される医師会」を目指す。
 そのため,会内ならびに会外に向けた実効性のある広報戦略を拡充させるとともに,国の検討会や記者会見等あらゆる機会や手段を活用して,機を逸せず本会の提言を主張できるよう,広報活動を活性化していく。

4.中長期的な展望への対応

 地域医療や産業保健,学校保健等の地域保健・公衆衛生活動におけるかかりつけ医機能の推進や,医療DX,専門医制度,災害対策におけるJMAT機能の強化など,喫緊の課題が山積している。
 日医には約50の会内委員会があり,社会保険診療や地域医療構想のあり方などについて,地域の実情を踏まえた課題や提言に関する真摯な議論を行っている。地域からあげられた情報を踏まえ,将来に向けた分析・検討をいくつかの会内委員会に諮問し,中長期的な方向性を取りまとめていただきたいと考えている。
 一方で,日医総研においても社会保障をはじめとした医療の将来に向けた検討を鋭意行っており,大きな方向性を示せるよう,進めていきたいと考えている。
 会内委員会での議論,日医総研の検討等をフル活用し,2040年以降における医療環境の変化を見据え,幅広く議論しながら,将来に向けて着実に医療政策を推進していく。

5.医療法等の施行

 医療法等の一部を改正する法律が令和7年12月に公布され,今年4月からその一部が施行されている。法改正は,「新たな地域医療構想」,「医師偏在対策」,「医療DX」等の将来の地域における医療提供体制に向けたものである。
 日医は,「医師偏在に対する日本医師会の考え方」を令和6年8月に提言した。併せて,美容医療等の自由診療についても,必要な規制を主張した。それらを踏まえて,厚生労働省から「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が示され,都道府県医,郡市区等医が行政や大学等と連携して対策を推進する仕組みとされている。
 オンライン診療については,医療へのアクセスが困難な患者のための公益的なオンライン診療を提案し,四師会,自治医大,日本郵便等と連携している。
 医療DXについては,国民と現場の不安を払拭しながら,混乱と支障がないように丁寧に進めるべきと主張してきている。
 新たな地域医療構想は,医療と介護の連携を重視し,「地域医療介護構想」を提唱するもので,その際には,構想区域単位,都道府県単位の協議がますます重要となる。
 日医としては,良質かつ適切な医療提供体制の構築には法改正だけで考えるべきではなく,医師の広域マッチングなどの新たな事業やその財政支援策が重要であり,各地の実情に応じた取組みがなされるよう,引続き制度の運用に関わっていく。

6.健康保険法等の改正

 健康保険法等の一部を改正する法律が今年5月29日に成立した。平成16年の大臣合意により,「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」とされており,これが公的保険の考え方である。財務省等を中心とする「大きなリスクは共助中心,小さなリスクは自助中心」という民間保険の考え方が一部にはあるが,必要かつ適切な医療は公的保険により確保されなければならない。
 医療費の財源は,「税金・保険料・自己負担」の三つであり,このバランスを考え,病に苦しむ患者の自己負担のみを上げないことや低所得者等に配慮することが不可欠である。バランス点はどこにあるのかという,まさに負担と給付の議論において,現時点での一定の決着が図られたものが,今回の法律である。
 OTC類似薬の保険給付見直しについては,子ども,がん患者や難病患者,低所得者,入院患者,医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える患者などへの配慮が必要であり,今後もそれらの点を主張していく。
 妊娠・出産に対する支援の強化については,具体的な給付水準に関して法改正を踏まえ,今後議論が本格化される中で,十分な財源を確保する必要がある。

7.将来の日医会館についての中長期的な検討

 現在の日医会館は,平成2年2月に東京都文京区本駒込に移転,新築されたもので,約36年が経過しており,修繕費・維持費などの費用は年月の経過にともない,さらに増加する見込みである。建替や改修に備えた積立を行っているが,長く続いたデフレから脱却しインフレへと転じた状況にあることから,将来に向けての懸念もある。
 将来の日医会館についての中長期的な検討を進めていかなければならず,新執行部において検討を始めていきたい。

代表質問

 6月28日(日)に行われた第163回日医臨時代議員会では,計18の代表質問があり,医療界が抱える喫緊の課題・問題について,出席代議員より様々な角度から質問や要望が寄せられた。
※以下,主な代表質問に対する回答を記載

◇医療に係る消費税問題について
~消費税問題について,慎重かつ丁寧に検討を進める~

 医療に係る消費税問題に関する質問が,北海道医・富山県医・岐阜県医・東京都医・大阪府医の5都府県から出された。

※質問概要
【鈴木代議員(北海道)】

  • 日医として消費税問題への現在の方針を再検討する考えはあるか?
  • 課税時の事務手続きや診療報酬の上乗せ補填分の引きはがしの影響について,医療機関で想定される資料の提供はなされるか?

【堀地代議員(富山)】

  • 1980年代に日医が「非課税」を強く主張したことが,現在の控除対象外消費税問題の根源となっていると考えているが,当時の判断をどのように評価・総括しているか?
  • 日医が要望する「病院は軽減税率・診療所は非課税」という制度は社会一般に理解されるか認識を伺いたい。
  • 消費税問題の抜本的解決と医療経営の安定化に向けて,日医の見解を伺いたい。

【加川代議員(岐阜)】

  • 日医が主導して「控除対象外消費税」負担の解消という目標に邁進していくことが最重要課題であり,この問題に関する日医の新たな方針を示していただきたい。

【増田代議員(東京)】

  • 消費税導入以来の「非課税・補てん方式」が医療機関の経営を圧迫している現状を踏まえ,国に対してどのような制度改革を求めるのか日医の意見を伺いたい。

【北村代議員(大阪)】

  • 診療所と病院の経営構造の違いを踏まえ,「診療所は非課税・病院は課税(軽減税率)」が現実的とも考えられるが,日医の考えを伺いたい。
  • 病院建設や高額医療機器購入時の消費税負担は莫大であり,国に対し無利子・無担保の融資制度創設を働きかけていただきたい。

 今村日医常任理事は冒頭,都道府県医会長に実施したアンケート結果を示し,「診療所の課税転換について,非課税維持・ゼロ税率課税・課税容認の三つの意見が拮抗し,現時点で方向性を一本化できる状況ではない」と述べた。
 アンケートでは,無床診療所は非課税維持が最多,有床診療所では“デメリットが回避できればゼロ税率課税”が最多となり,診療所の規模や収入構造によって意見が大きく分かれたとし,自由記載でも制度変更への不安や事務負担増への懸念が多数寄せられ,現場の理解不足も浮き彫りになったと認識を示した。
 また,課税転換にともなう「診療報酬補填の引き剥がし」,「免税・簡易課税事業者の事務負担増」,「所得税特例や事業税非課税制度への影響」など,特に小規模診療所への深刻な影響を強調。「地方医療を支える高齢医師の診療所が経営困難となり,地域医療の崩壊につながる事態は絶対に避けなければならない」と訴えた。
 その上で,日医は従来どおり「診療所は非課税維持,病院は軽減税率課税」を基本方針としてきたが,今回の議論やアンケート結果を踏まえ,医業税制検討委員会で再度議論を深める方針を示した。
 病院の建築・設備投資で発生する巨額の消費税負担については,「国による無利子・無担保融資制度の拡充を働きかける」と述べ,資金繰り改善策の必要性を指摘した。
 最後に,「消費税問題は医療界だけでは解決できず,国民や国会の理解が不可欠。慎重かつ丁寧に検討を進める」と締めくくり,制度変更による地域医療への影響を最重要視する姿勢を明確にした。

◇医師会の組織力強化について
~組織力強化は最重要課題 積極的に取組む~

 齊藤代議員(福島県)より,各病院団体や大学等との連携強化,医師会加入の魅力発信などさらなる組織強化策の新たな戦略,SNSや医師会会員情報システムMAMISの活用など,今後の医師会の組織力強化に向けた取組みについて質問が出された。
 藤原日医常任理事は,組織力強化を「松本執行部の最重要課題」と位置づけ,大学・病院団体との連携強化については,全国医学部長・病院長会議で継続的に意見交換を行うとともに,今期から,国立大学協会と日本私立医科大学協会からの推薦で就任された2名の参与の協力を得ながら,より一層の連携強化に努めていくと強調した。
 また,若手医師への医師会入会のメリット発信としては,各地域で行われている「研修医オリエンテーション」へ役員の参加,医師賠償責任保険や医師年金などのサービスを丁寧に紹介し,医師会活動の意義を伝え,入会促進につなげていきたいと意気込みを示した。
 SNS については,公式 YouTube や LINE 公式アカウントなどに加え,短編動画の配信などにも取組むとともに,7月からは新たにInstagramを開設し,正確な情報発信を行う予定であると述べた。
 医師会会員情報システム MAMIS については,会員情報の一元管理とともに異動手続きの簡素化に寄与しており,組織運営の基盤を果たせているとし,今後はデータ分析により,勤務医・若手医師など各層のニーズに応じた組織強化策の立案など,積極的な活用に努めていきたいとした。

◇新たな地域医療構想:2040年に向けた医療提供体制について
 ~全国的な病床数の目標値設定,目標値に向けた病床削減には断固反対~

 上林代議員(和歌山県)より,新たな地域医療構想が2040年を見据えて策定される中,今後の人口減少や病床数に対する日医の考え方について,質問された。
 坂本日医常任理事は,まず人口減少が進む中で病床数のあり方が「必須の論点」であるとした上で,現行の地域医療構想の目的は病床削減ではなく,将来の医療需要を見据えた病床機能の分化を図ることであるとし,新たな地域医療構想においても医療機関が現在および2040年の病床数を自主的に検討し,病床機能報告を行う点は変わらないとの認識を示した。
 また,新たな地域医療構想において,いずれ国から2040年の全国の必要病床数が示されるとしても大切なことは全国単位ではなく,構想区域単位で考えることであり,日本は人口減少と同時に高齢者を中心に医療・介護の複合的ニーズが高まっており,必要とされる医療提供体制は地域や患者の特性などによって変わるとした上で地方において病床数を機械的に削減することは医療アクセスの低下や救急医療体制の弱体化を招きかねず,慎重な対応が必要であると述べた。
 最後に,日医としては,全国的な病床数の目標値を設定し,それに向けて削減すべきという考えには反対しているとして,構想区域単位の必要病床数は重要な指標であるが,地域医療構想の根幹をなすのは,郡市区医等の関係者による協議,医療機能の役割分担と連携推進,そして適切な財政支援によるものであるとし,病床数は将来ニーズに応じて自主的に収斂されていくものであり,機械的な削減は避けるべきと見解を示した。

日本医師会 執行部職務分担表

(役員別,敬称略)

2026年8月1日号TOP