「連立政権の変化による今後の医政展望と医師会の対応」,「医薬品等の一部保険外療養に対する見解と府医・日医の対応方針」,「京都府北部の医療体制」,「医療材料価格高騰に対する診療所経営への影響」について議論

 与謝・北丹医師会と府医執行部との懇談会は当初2月に開催が予定されていたが,雪による荒天のため延期となり,5月23日(土)にセントラーレホテル京丹後で開催され,与謝医師会から12名,北丹医師会から14名,府医から9名が出席。「連立政権の変化による今後の医政展望と医師会の対応」,「医薬品等の一部保険外療養に対する見解と府医・日医の対応方針」,「京都府北部の医療体制」,「医療材料価格高騰に対する診療所経営への影響」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

連立政権の変化による今後の医政展望と医師会の対応について

 自民党と日本維新の会は連立政権合意に基づき,社会保障改革の協議体を設置した。維新の要望がほぼ満額回答で盛り込まれ,2025年度中の骨子策定,2026年度中の制度設計と順次実施を目指すとされた。改革の主眼は現役世代の負担軽減であり,金融所得の反映や,OTC類似薬(約1,100品目)の4分の1自己負担化などが方針に掲げられている。
 しかし,医療費削減の数値目標明記を求める維新に対し,自民党は慎重であり,衆院選で自民党が単独3分の2超の議席を確保したことで力関係の変化も予想される。また,高齢者医療費の原則3割負担や医療法人の収益事業解禁といった論点に対し,日医は地方医療の崩壊や経営悪化への懸念から強く反対している。
 現在,医療保険制度改革法案は参院で審議入りしており,政府は保険料負担軽減のみを目的とせず医療現場や患者への影響を十分に検証し,客観的データや患者の意見を踏まえた慎重な制度設計を進める方針を示しているが,今後は骨太の方針への反映を見据えた骨子策定が焦点となる中で,与党内の政策スタンスの違いや政治状況の変化により議論の行方は不透明である。
 こうした状況を踏まえ,府医としては患者負担の急激な増加の回避,地域医療体制の維持,医療機関経営の安定を最優先に据え,引続き動向を注視するとともに,政府・与党に対して我々が求める医療政策を積極的に提言していく考えを示した。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,社会保障の給付維持を前提とした財源のあり方について,今後,高齢化の進展,人口減少,少子化という構造的な変化の中で,社会保障制度をどのように維持していくかという議論が本格化していくとの認識が示された。
 この際,負担と給付のバランスが大きな論点となり,給付の見直し,すなわち削減の議論が出てくる可能性は高いが,日医の基本的な立場としては,医療・社会保障の給付は維持すべきであり,これを安易に縮小すべきではないという考えが大原則である。問題は財源をどのように確保するべきかであり,保険料など国民負担で賄うのか,あるいは税を中心とした公費で賄うのかという選択で,現政権においては,高市首相が積極財政の必要性に言及していることから,今後は公費による支えをより重視する方向で議論が進む可能性があるとの見解が示された。

医薬品等の一部保険外療養に対する見解と府医・日医の対応方針について

 社会保障制度は,国民の安心と生活の安定を支えるセーフティーネットであり,社会保険,社会福祉,公的扶助,保健医療・公衆衛生の四つの柱から構成されている。しかし,社会保険料の軽減を図る場合には,公費負担の増加や自己負担の増加,医療水準の低下といった課題が生じる。例えば,OTC類似薬を保険給付の対象から除外すると患者負担が増加し,高額医療を民間保険で補完する場合も保険料の上昇は避けられないため,負担軽減のみを追求することには限界がある。
 OTC類似薬の保険適用除外については,一般用医薬品が全額自己負担となるため,難病患者や障害者,生活保護受給者などへの影響が大きく,経済的負担の増加が懸念される。また,地方やへき地での医薬品入手の困難さや,受診控えによる健康被害,重篤な疾患の発見遅れといったリスクも指摘されている。
 一方で,社会保険料の引上げには否定的な意見があるものの,給付と負担を一体的に問う調査では負担増を容認する回答が4~6割を占めている。また,「所得にかかわらず公平に医療を受けられるべき」という国民皆保険制度の理念も約7割が支持している。従って,医薬品の一部保険外療養については,負担軽減だけでなく,医療アクセスや健康への影響も踏まえ,国民皆保険制度の理念を維持しながら慎重に議論することが重要である。

京都府北部の医療体制について

 京都府内では各医療圏で地域医療構想調整会議が開催されており,丹後地域においても直近では3月12日に会議が行われた。その中で京都府から「丹後6病院事務長等会議」を開催した旨の報告があり,今後,6病院に対して,救急・手術の輪番制を維持しつつ段階的な集約の可能性,医療機能の分担と連携強化に向けた共通クリティカルパスの導入,分娩数減少への対応,委託業務の共同化によるスケールメリットの活用,人材不足への対応としての職員の在籍出向の導入などについてヒアリングを実施する予定であることが示された。
 これに対し,地区からは,「地域医療を守るためには京都府が主導し,機能集約など大胆な変革を進めるべき」との意見が示される一方,「集約化を進める際にはアクセスの問題も十分考慮すべきであり,人口減少にともない交通網が縮小する中,現行の6病院体制が分散地域の医療アクセスを支えている側面がある。整備した医療体制が実効性を欠くものとならないよう留意すべき」との指摘があった。
 他府県と比較すると,東京や大阪のように医師が集中する地域,山形や秋田のように過疎が進行する地域とは異なり,京都府は課題がグラデーション状に分布している全国的にも稀な状況にある。このため,京都府における課題解決の取組みは,全国への有用なモデルとしてフィードバックできる可能性がある。
 地域医療構想調整会議の運営傾向としては,冒頭は京都府からの情報提供が中心で各地域ほぼ共通の内容となり,後半にディスカッションが行われるが,その議論の深まりには地域差が見られ,また議事進行を担う保健所長のスキルやスタンスにも影響を受けている。さらに,本会議は本来,急性期病床から回復期病床への転換の進捗確認を主目的として設計されたものであり,現在求められている地域ごとのかかりつけ医機能の過不足といった議論には必ずしも十分対応できていない。今後,厚生労働省から新たな地域医療構想策定ガイドラインが示される予定であり,その動向を注視する必要がある。
 府医では,従来の地域ケア委員会を昨年9月に地域医療対策委員会へ改組し,在宅医療を中心とした検討に加え,全地区医が参画する形で地域医療対策全般を議論する場へと発展させた。5月12日に開催された第4回委員会では,与謝・北丹地域の在宅医療の現状についてヒアリングが行われた。
 与謝地域では,在宅医療を取り巻く状況を把握するため,開業医の年齢構成や訪問診療件数などに関するアンケート調査を定期的に実施している。その結果,在宅医療を担う医師の高齢化や,一部医療機関への負担集中など,地域医療が抱える課題が明らかとなっている。このようなアンケート調査の実施は極めて有意義であり,将来予測の精度向上のためにも継続的な調査を行い,その時点で不足している医療資源を把握・検討していくことの重要性が指摘された。
 北丹地域では,将来的に「介護認定審査」,「学校医」,「警察医」などの地域機能の維持が困難となる可能性が示された。実際,他地域においても産業医や学校医,さらには京都市内においても介護認定審査会の担い手不足が生じており,地域医療を支える人材確保が喫緊の課題となっている。
 さらに,与謝・北丹地域の医師は,現状においても過大な負担のもとで地域医療を支えている。しかし,その状況が行政側に「現行体制でも対応可能である」との誤認を生じさせる懸念がある。そのため,アンケート調査等を通じて,どの分野で,どの程度,いつ頃不足が生じるのかといった将来予測を具体的に可視化し,行政に対してデータに基づく提言を行っていく必要性が強調された。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,北部地域における病院統合に関し,府医の見解について質問があった。
 これに対し,府医からは,「病院単体で見ると,多くの医療機関が赤字経営に陥っている。そもそも診療報酬制度が病院経営の黒字化を前提としない構造となっているのであれば,府医として主体的に働きかけ,持続可能な病院経営が成り立つよう診療報酬の見直しを求めていく必要がある」との考えが示された。
 一方で,医療提供体制が供給過多となっている地域においては,病床数や医療機能の適正化を図ることが不可欠であり,今後はその調整を着実に進めていく必要があるとの認識も示された。
 また,こうした課題に対応するための体制整備として,府医では従来の地域ケア委員会を地域医療対策委員会へ改編したことに改めて触れつつ,現行の地域医療構想調整会議については,各保健所長が議長を務める中で,一方向的な議論にとどまりがちな現状があるものの,府医がアドバイザーとして参画することとなったことが説明された。
 最後に,「今後は先生方との丁寧な情報共有と意見交換を重ねながら,地域の実情に即した望ましい医療提供体制の実現に向けて尽力していきたい」との意向が示された。

医療材料価格高騰に対する診療所経営への影響と医師会の対応ついて

 現在の中東情勢の悪化にともない,2026年3月中旬頃からナフサ価格が急騰し,これを原料とするプラスチック製品を中心に広範な医療材料で供給不安と価格高騰が発生している。特に,輸液バッグや輸液セット,医薬品包装(PTPシート),小児用シロップ容器,さらには検査・消毒関連資材など,多岐にわたる分野で影響が顕在化しており,診療所経営においてもコスト増加と供給制約の両面から大きな負担となっている。
 厚生労働省の資料によると,安定供給に影響がある品目は74品目にのぼり,そのうち一部は解決済みとされているものの,依然として多くの品目で対応が継続中である。また政府は医療用手袋の備蓄放出など一定の対策を講じているが,現場では依然として入手困難や数量制限,納期遅延といった状況が続いている。
 こうした中,日医は,医療物資不足や価格高騰に対し,政府と連携しながら,供給確保策の迅速な実行,情報提供の充実,サプライチェーン全体での安定供給体制の構築を強く求めている。また,医療機関の経営状況については,物価高騰と賃上げの影響により極めて厳しい状況にあるとして強い危機感を示し,診療報酬についても一時的な対応ではなく,持続可能な経営を可能とする抜本的な見直しの必要性を訴えている。
 さらに,従来の診療報酬改定では急激な物価変動に対応できないことから,改定時期にとらわれない機動的な対応や,人件費・物価に対する別枠での措置,医療材料の逆ざや解消に向けた償還価格の適正化などを提言している。
 府医としても,現場の実態を的確に把握するため,不足品目や価格変動の状況についての調査を早急に検討するとともに,会員からの意見を集約し,日医を通じて国に対し必要な対策を働きかけていく方針である。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,診療報酬が低く抑えられている小児科,とりわけ医療的ケア児の在宅医療の現場では,カテーテル等の材料費高騰が経営を極めて深刻に圧迫している実態が訴えられた。医療的ケア児の在宅医療は採算が合わず,担い手が育たない構造的な問題を抱えており,行政による抜本的な支援がなければ地域医療が崩壊しかねないとの強い危機感が示された。
 これに対し,府医として日医へ要望を上げていくためには,現場の声をより強く発信していく必要があるとの認識が示された。その上で,まずは具体的な課題や要望,困っている事例等について,書面により府医へ提出してもらい,それらを集約した上で対応を検討していきたい旨の回答がなされた。

保険医療懇談会

 初・再診料の加算や生活習慣病管理料と他の点数の併算定の可否等について整理し,算定にあたっての留意点を説明するとともに,算定漏れを防ぐなど適正な運用により健全な医業経営を呼びかけた。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。

2026年7月15日号TOP