2026年4月15日号
京都大学医師会と府医執行部との懇談会が2月 19 日(木),芝蘭会館山内ホールで開催され,京都大学医師会から医師8名をはじめ薬剤部・事務部門など計 18 名,府医から 13 名が出席し,「地域連携の推進」,「救急医療」をテーマに議論が行われた。
京都大学医師会より,京大病院における地域連携の取組みや今後の課題等について説明が行われた。
〜制度改定と京都の医療提供体制の方向性〜
今回の診療報酬改定は,医療機能の分化と地域連携を強力に後押しする内容である。逆紹介割合の基準引上げや病診間の定期的な情報提供を評価する方向は,高度急性期病院の外来集中を抑え,地域医療機関との継続的な連携を促す政策的メッセージといえる。
救急医療では,下り搬送評価の引上げや長時間加算の新設により,転院調整の円滑化が制度的に支援された。さらに,紹介初診加算の新設やロボット手術・脳死移植の評価強化など,高度医療機能の明確化も進んでいる。
これらを踏まえると,京都では役割分担の明確化と情報共有の強化を軸に,地域全体で医療提供体制を再設計する方向性が求められる。
〜京大病院の連携強化と救急体制の高度化〜
(1) 地域連携の強化
京大病院はPFMセンターを設置し,病床管理・患者支援・地域連携を統合。前方・後方連携を一元化し,患者フローの最適化を進めている。
Web 予約(SAKU 洛連携)は紹介予約の約2割を占め,CAREBOOK による下り搬送調整では一括打診や情報共有の効率化が進んだ。さらに,診療科ごとの窓口を明確化する「地域連携リンクドクター制度」も構築中である。
(2) 救急・集中治療・手術体制の強化
2024年の救命救急センター指定を契機に,救急外来・ICU・救急病棟を一体運用する体制を整備。ECMO対応を含む重症救急に対応できる病床群を確保し,搬送受入は国立大学病院でもトップクラスの水準に達している。
観察ベッド運用の改善や人員増強により救急滞在時間も短縮。緊急手術では麻酔科のトリアージ強化と定期枠調整により,受入拒否をほぼ回避している。
〜下り搬送とベッドコントロールの課題〜
一方で,3日以内転院は依然困難で,冬季には調整に2週間を要する例もある。自家用救急車や平日稼働など現行要件は24時間運用の障壁となっており,要件緩和が課題である。受入不可理由は専門科対応困難,救急病床満床,重症対応中が中心で,専門科連携と病床運用の高度化が引続き必要である。
〜地域連携文化と患者受療行動〜
病院完結型から連携型医療への文化転換が不可欠である。紹介・逆紹介を通じた継続治療の考え方を,医療者だけでなく患者・家族にも共有する必要がある。
中小病院の経営環境が厳しい中,地域の二次救急拠点を維持し,偏在を是正することが持続可能性の鍵となる。患者希望と医療資源のバランスを取りながら,初期トリアージと適切な振り分けを徹底することが求められる。
〜意見交換〜
その後の意見交換では,今回の診療報酬改定は,高度医療を担う大病院に手厚い一方で,中小病院には依然として厳しい状況が続くとの指摘があった。その上で,患者が治療段階に応じて医療機関を移っていくという文化を,患者側・医療機関側の双方が受け入れていく必要性が強調された。また,下り搬送に対する患者の心理的抵抗は現場における大きな課題であり,入院初期から丁寧に説明を行うことが不可欠であるとの認識が示された。さらに,京大病院においても病床稼働率の上昇により「曲がり角」を迎えており,下り搬送を前提とした病床運営が避けられない状況であることが共有された。
理想としては,初期の救急搬送段階で適切なトリアージを行うことが望ましいが,現状では地域全体で患者を循環させるためのコンセンサス構築が急務である。将来的には,地域全体を一つの病院とみなす広域ベッドコントロールや,AIによる需給予測・病床可視化の導入が重要となるのではないかなどの意見があがった。
京都大学医師会から,2025年度の京都市内の救急医療および災害医療体制について,概要や実績等の説明が行われた。
市内の救急出動件数は増加傾向にあったが,2025年度はやや鈍化が見込まれている。一方,救急搬送困難事例は減少しており,救命救急センター増設などの体制整備が効果を上げていると評価された。京大病院は2024年に救命救急センターの指定を受け,年間7,000台超の受け入れを目標としている。院内改革や看護師増員により応需率は約10%向上して86.53%に達し,年末年始の9連休では90%台後半を記録した。2025年4月からは外傷専門医が加わり,開放骨折や小児骨折への対応が改善するなど外傷診療体制も強化されている。
一方で,応需困難理由の約4分の1が「処置ベッド満床」であり,下り搬送の停滞が新規受け入れの制約となっている。また,救急搬送が大学病院に集中し,6つの救命救急センターが全体の約4割を担う一方,残り6割を46病院が分担する構造が続いている。働き方改革や病院規模の差により受け入れ能力にばらつきが生じており,大学病院への過度な集中は医師の疲弊につながることが懸念される。このため,初期トリアージの徹底や二次救急体制の底上げ,人員確保と働き方改革の両立が重要課題である。
災害医療では,2025年11月の近畿ブロックDMAT訓練において,京大病院が京都市北部のDMAT活動拠点本部を担当し,花折断層による直下型地震と鴨川橋梁の落橋による市内東西分断を想定した対応が検証された。DMAT運用は事前のハザード・耐震情報を踏まえ,高リスク地域を優先的に調査する方式へ転換され,自衛隊(UH-1)との連携訓練も行われた。搬送フローとしては,重症患者を東側は京大病院,西側は京都府立医科大学附属病院に集約し,その後,南側医療機関へトリアージ搬送する案が示され,液状化リスク地域への進入困難性も確認された。
〜意見交換〜
その後の意見交換では,DMATとJMATの連携不足,司令塔機能やリエゾン運用の課題,集結場所の分断などが指摘された。医療資源が限られる地域との広域連携,橋梁途絶や液状化による搬送制限への備え,さらに京大病院手術棟の代替機能確保なども課題として共有された。 また,平時の救急医療機能の充実と持続可能性が有事対応力の基盤であることが再確認され,救急搬送の適正化,トリアージ強化,二次救急の底上げに加え,多職種連携による実動訓練や代替動線整備の継続が急務であると意見があがった。