「2024年の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬トリプル改定」,「医師の働き方改革」について議論

 伏見医師会と府医執行部との懇談会が10月30日(月)伏見医師会館で開催され,伏見医師会から10名,府医から8名が出席。「2024年の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬トリプル改定」,「医師の働き方改革」をテーマに活発な議論が行われた。

〈注:この記事の内容は10月30日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合がございます〉

2024年の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬トリプル改定

~令和6年度診療報酬改定・6月改定へ~
 従来の4月改定では3月上旬に告示・通知が示され,約1カ月という短期間で医療機関やベンダが改定作業を余儀なくされ,非常に負担が大きかったことから,施行時期を後ろ倒しし,令和6年度診療報酬改定は6月改定が決定した。
 薬価改定は従来どおり4月改定であり,介護報酬改定の時期も現在議論されているが,こちらも6月改定となる可能性がある。

~令和6年度診療報酬改定の論点~
 6月に開催された中医協では外来医療について,かかりつけ医機能と生活習慣病対策が議論されている。かかりつけ医機能については,支払側から機能強化加算など既存のかかりつけ医機能を評価する点数の整理が提案された一方で,診療側の日医の委員はかかりつけ医機能では複数の医療機関の連携が重要であることを強調し,その評価を求めている。
 生活習慣病対策については,支払側は高血圧症や糖尿病の患者に特定疾患療養管理料が多く算定されている一方で,生活習慣病管理料の算定が少ないことを指摘し,整理を求めている。その中では,特定疾患療養管理料の算定要件として,患者への診療計画書の交付を追加することを提案している。その一方で,診療側の日医の委員からは特定疾患療養管理料の対象疾患の拡大を求める意見が出されているが,今後本格的な議論がなされる予定である。

~令和6年度診療報酬改定に向けた府医の動き~
 府医では,診療報酬改定に向けて基本診療料の引上げを近医連などの場で強く申し上げており,日医にも提言しているところである。
 物価高騰や光熱費の上昇等が医業経営を圧迫しており,スタッフの賃金上昇への対応も含めて,医業経営を安定させるためには基本診療料の引上げが必要と考えている。同時に,新型コロナだけでなく新興感染症への対応も含め,平時からの感染症への対策が重要であり,多くの医療機関が適切な感染対策を講じるためにも基本診療料の引上げが必要である。
 府医としては,平成22年度改定において,診療所の再診料が理由なく引下げられたまま現在に至っていることを問題視しており,元の点数に戻すよう主張している。

~医療・介護分野への適切な財源の確保に向けて~
 財務省からはトリプル改定への厳しい対応を求める意見が出されているが,日医では10月10日に医療・介護42団体で構成する国民医療推進協議会を開催し,国民の生命と健康を守るため,医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組みを進め,国民に不可欠,かつ日進月歩している医療・介護を提供するために,適切な財源の確保を求めることを盛り込んだ決議を採択したことを受けて,府医としても11月19日(日)に「府民の生命と健康を守るための総決起大会」の開催を決定した。京都府医療推進協議会を構成する31団体に対して参加を呼び掛けるとともに,京都選出の国会議員や府議会・京都市会議員に加え,地区医からの参加を得て日医と同様の決議を採択し,京都からも医療機関等の厳しい状況を訴え,改定財源の確保を強く求めたいと考えている。

~意見交換~
 人員不足により派遣で人員補強を行うと費用がかさみ,医療機関経営を圧迫している現状が示され,医療・介護・福祉分野における派遣業への問題提起がなされるとともに,国の財政のあり方や負担と給付についても意見交換が行われた。
 府医からは,公定価格である診療報酬により運営する医療機関は,昨今の水道光熱費・食材料費等の物価高騰や,国全体での賃金上昇に対応するためには,価格に転嫁できないため,診療報酬で対応するしか方法がないとして,医政活動の重要性を改めて強調した。また,今後,少子高齢化がより進む日本において,医療・介護・福祉分野の人材確保は非常に重要であり,賃金という観点から,他の産業よりも高くなければ,人材確保は難しくなるとの考えを示した。

医師の働き方改革

~府医会内に医療政策会議を設置~
 2021年5月に公布された改正医療法により,医師の勤務環境を改善すべく,2024年4月から医師の働き方改革が施行される。時間外労働時間の把握と適切な管理,また勤務間インターバル・代償休息を確保することは,医療の質と安全への担保にも寄与すると考えられる。一方で,医療者は救急医療をはじめ地域の医療提供体制を維持する使命を負っており,「医師の健康」と「地域医療提供体制の維持」を両立させることは容易ではないと考えられる。
 各病院の対応状況として,地域の労働基準監督署に対して,宿日直許可の取得を進めていると思われるが,許可に対して統一された基準はなく,特に救急医療体制に関しては,その議論が宿日直許可の取得に終始している感は否めないことから,中小病院の夜間の救急受け入れ可能数が減少し,救急搬送困難事案が急増することが危惧され,府医では今期より府医役員と外部の識者などで議論する場として医療政策会議を設置し,最初のテーマとして「医師の働き方改革」を取り上げている。

~京都府に対して年内に提言を目指す~
 京都府では地域医療支援病院と京都市内の救急告示病院を対象に救急受け入れアンケートを実施。その結果では,来年4月以降の救急受け入れ見込みについて,多くの医療機関でほぼ維持できるとの回答であった。
 しかしながら,宿日直許可を取得した病院に派遣された医師が救急患者を受け入れ,その業務内容が入院指示など「当直」ではなく,「勤務」の状態となった場合,9時間の勤務インターバルルールによって翌日朝の業務を調整する必要があることから,派遣された医師が翌朝からの自院での業務を理由に救急応需を断ることは十分に予想される。
 実際に京都市内では年間約1.5万台が午後11時から午前7時の時間帯に救急車搬送されており,平均で毎日40人の深夜帯救急搬送がある計算となる。そのうちの何割かは処置が必要な患者で,時間外勤務の状態になる可能性はそれなりに高くなると考えられ,働き方改革が京都府内の夜間救急体制に大きな影響を及ぼす可能性がある。
 引続き医療政策会議で議論し,11月を目途に救急医療体制に生じる問題点などを整理し,特に来年4月以降に予測できる事態については事前に京都府に提言するとともに,スタート後に生じた問題は速やかに解決できるよう準備しておく必要がある。

保険医療懇談会

中京西部医師会との懇談会参照

2023年12月1日号TOP