「MAMIS における個人情報の共同利用・情報入力の主体」,「各医師会および関係団体とのコミュニケーション」について議論

 宇治久世医師会と府医執行部との懇談会が12月11日(水),うじ安心館で開催され,宇治久世医師会から24名,府医から6名が出席。「MAMISにおける個人情報の共同利用・情報入力の主体」,「各医師会および関係団体とのコミュニケーション」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は12月11日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

MAMISにおける個人情報の共同利用・情報入力の主体について

 日医の新会員情報管理システム(以下,MAMIS)は,すべての医師会に所属する医師を利用対象として,三層構造の流れに則って従来の紙ベースによる届出書の流れと同様の手続きフローをWEB上で行うシステムであり,10月30日に公開されたところである。
 MAMISでは,入退会や異動の手続きに際して,これまで地区医,都道府県医,日医それぞれに届出書を提出していたものを,会員が自らMAMISに入力することで,ワンストップで手続きが可能となるため,先生方の手続きに係る負担軽減が期待できる。会員がMAMISに入力すると,システムを通じて申請が郡市区医にあがり,地区で承認がなされると,次に都道府県医,日医と従来の流れに沿って申請・承認され,三層構造が堅持される形となっている。
 MAMISにおける個人情報の取り扱いについては,まず,日医の会員に関しては,個人情報保護法第27条第5項に基づく「共同利用」にあたるとして,日医,都道府県医,郡市区医の各階層で共通して入会している会員情報を共同して利用することは,第三者提供にあたらず,改めて本人からの同意取得は必要ないと整理されている。
 また,日医未入会の会員の個人情報の取り扱いについては,前提として,MAMISにおいて,ある特定の医師の個人情報を取り扱うことができるのは,その医師本人とその医師が所属する医師会のみであって,各医師会は自医師会に所属していない会員の情報を取り扱うことはできない仕組みである。例えば,地区医のみに入会している会員の場合,日医,府医は当該会員の情報にアクセス・閲覧できない建付けとなっている。
 さらに,MAMISの開発・運営等に関わる業務委託先とは,MAMISの運営以外に個人情報を利用しないことを盛り込んだ契約を締結しており,各医師会が保有する会員情報をMAMISに登録することは,個人情報の第三者提供にはあたらず,改めての本人同意は必要ないと整理されている。
 例外として,今後,MAMISの機能拡張を図り,認定産業医や認定健康スポーツ医等の資格の管理や,日医の生涯教育制度の取得単位等の管理を行う予定としているため,それらの情報については,日医および当該医師が参加する研修会の主催医師会が取り扱うことは可能とされているが,システム上,個人の情報にアクセスできるのは,医師本人もしくは所属の医師会のみであり,医師会事務局によるMAMISへのデータ登録に関しても,日医を経由してではなく,MAMISシステムに直接登録する形となるため,日医や他の医師会が権限を超えて情報にアクセスできるものではない。
 以上のことから,府医としても,MAMIS上に各医師会が保有するデータを登録することは,個人情報の観点からも問題ないと考えている。
 MAMISのメリットとしては,まず,医師はいつでもオンラインで入会・退会や異動に係る手続きが可能になる点である。先述のとおり,これまでは地区,都道府県,日医それぞれの手続き書類が必要であったが,MAMISへ入力するだけで,ワンストップで手続きが可能になり,手続きに係る負担軽減が期待できる。また,医師本人が入力するため,各医師会においては,書類からデータ入力する手間・時間が省略でき,負担軽減につながると考えられる。
 今後の展開として,「研修管理機能」が追加され,日医生涯学習制度や日医かかりつけ医機能研修,さらには産業医,健康スポーツ医等の研修に係る研修会の申し込み,取得単位の管理,認定証の発行申請,認定医の新規・更新申請等がMAMIS上で可能となる見込みである。その他,医師年金や医賠責の特約保険の加入状況の確認等も可能とすることが想定されており,会員の先生方の利便性の向上が期待できる。
 各地区医によって様々な事情もあることから,従来の紙での入会・異動・退会の届出を残さざるを得ないことも想定され,当面は,紙ベースの届出とMAMISの両方が混在することになると思うが,将来的にはすべての医師会(地区,都道府県)がMAMISを利用することにより,完全なペーパレス化の実現と,先生方の利便性の向上につながると考えている。医師会としても,医師本人がデータを入力するため,医師会ごとに作成していたデータを一元化することで,事務負担の軽減や効率化が期待できる。各地区医には是非,MAMISを会員管理データベースとしてご活用いただきたい。
 MAMISの入力の主体は医師本人であるが,先生ご自身によるMAMISへの入力が難しい場合,各地区医においてサポートをお願いしたいと考えている。各種手続きに係る手間が省力化でき,認定産業医や生涯教育単位の確認など,会員の利便性向上を図ることは,医師会の組織力強化の観点からも重要なことであるため,各地区医のご協力をお願いしたい。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,MAMISの登録データが他の目的で使用されることへの懸念や,医師本人の同意を取らずに地区医から日医へ個人情報を提供することに不安感が示された。
 府医からは,日医に個人情報を提供するものではなく,MAMISにおいては医師本人と所属の医師会のみにアクセスが許可されていることから,各医師会における従来の会員管理方法と同様に,あくまで新たな管理方法が追加されただけであると説明し,すでに地区医に個人情報として提供されているデータであるため,MAMISへのデータ登録に関して新たに個人情報の問題は発生しないとの見解を示した。

各医師会および関係団体とのコミュニケーションについて

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは,改めて府医,地区医,京都府,各市町,保健所との間の円滑なコミュニケーションおよび情報共有の必要性が明らかになり,今後発生が予想される新興感染症のみならず,南海トラフ地震や台風等の大規模災害に備えて,関係機関との平時からの情報共有と連携が重要であるとの考えについては府医も同じ認識である。
 府医では,月2回の京都医報による情報提供に加えて,必要な情報を迅速に会員の先生方へ伝えるため,府医会員メーリングリストを運用するとともに適宜FAXも使用して情報を配信しており,情報共有に努めている。また,府医と地区の先生方との顔の見える場としては,年2回の参与会,月1回の庶務担当理事連絡協議会の他,各地区との懇談会を年1回開催している。
 地区医同士の連携の場としては,南部4地区連絡協議会や両丹医師合同協議会,また,実施主体は異なるものの,行政も参加する場としては地域医療構想調整会議があり,それぞれ府医もオブザーバー参加している。感染症に関しては,感染症担当理事連絡協議会を開催しているが,確実な情報伝達を目的として,日医等からの文書については直接,地区の担当理事の先生に情報提供する形とさせていただいている。
 災害時の情報共有等に関しては,府医の会内委員会である救急・災害委員会および地域MC連絡協議会および災害対策小委員会において活動状況を報告するとともに,担当理事を中心に災害医療コーディネーター研修会やJMAT研修の開催を通じて連携強化を図っているところである。
 府医としては引続き,平時からの地区の先生方との顔の見える関係の構築に向けて積極的に取組んでいきたいと考えている。
 災害時のコミュニケーションのあり方については,府医としても災害対策基本法に基づく指定地方公共機関として防災業務計画の策定が求められており,能登半島地震の経験を踏まえ,防災業務計画をとりまとめているところである。府内で大規模災害が発生した場合,会長の判断に基づき「京都府医師会災害対策本部」を設置し,地区医および関係団体に災害対策本部の設置を報告するとともに,状況に応じて被災した地区医に「地区医師会災害対策本部」の設置を要請することとしている。情報の収集と発信については,府医災害対策本部はあらゆる手段を用いて役職員の安否確認,府内の被害状況,地区医および会員の被災状況について情報収集し,発信することとし,また,JMAT京都の活動状況や他府県からのJMATの受入れ状況等を随時,情報発信するとしている。なお,情報の収集にあたっては,被災地域内の災害拠点病院や京都府・地区医の災害対策本部,市町村にも問い合わせ,さらに広域災害救急医療情報システム(EMIS)や報道資料も確認を行うことになっている。
 災害発生時には,都道府県,市町村,日医,都道府県医,地区医それぞれに災害対策本部等が立ち上がるため,各地区医においては,カウンターパートとなる行政と適切な連携を図る必要がある。この防災業務計画には,地区医において取組んでいただきたい重要項目として,緊急連絡網の作成や被災状況の情報発信,本部機能の設置,本部会議において地区医の方針を決定すること等の記載がある。また,地区医から行政や府医へ発信していただくこととして,災害医療の体制構築に地区医として協力する意向の有無や,医療機関が災害対策に取組むにあたってどのような情報が必要か,どれぐらいの規模の災害であれば地区内で対応できるかの限度等について,確認させていただきたいと考えている。
 この防災業務計画は,災害対策小員会で最終案を作成の上,府医理事会での承認を経て,地区災害医療担当理事連絡協議会において周知を図る予定となっている。宇治久世医師会が管内二市一町と新たな協定を締結する過程で,情報共有の手段等について新しい提案等があればご教示いただきたい。

〜意見交換〜
 地区からは,災害時や新興感染症発生時の関係機関との連携には,平時からどれだけ関係機関とのコミュニケーションがとれているかが重要になると指摘があり,地区医と府医との間の情報共有については,現在準備されている様々なコミュニケーション手段を引続き有効活用していきたいとの意向が示された。
 また,地区においても並行して災害時対応マニュアルの策定を進めていることと併せて,行政との協定に関しても従来の内容を見直し,有事により柔軟に対応できるよう行政へ提案していることが紹介された。また,災害時の連絡網に関しては,SNS等の活用を含め,複数の手段を検討するとともに,会員の先生方には事前にアンケートを実施し,救護班として出務が可能かどうかのリストを作成していることなど,地区における取組みの進捗状況が報告された。
 最後に,有事の際の府医の連絡先および連絡手段等を示すよう要望が出された。

府医からの連絡事項

 ※乙訓医師会との懇談会参照

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