「クリニックビルの開設に関する情報」,「医療DX 関連の情報」 について議論

 京都市西陣医師会と府医執行部との懇談会が1月29日(水),府医会館で開催され,西陣医師会から10名,府医から7名が出席。「クリニックビルの開設に関する情報」,「医療DX関連の情報」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は1月29 日現在のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

クリニックビルの開設に関する情報について

 地区から,昨今,市内で見かける新規クリニックビルでの医療機関開設勧誘等をふまえて,①府医として事前の情報把握はされているのか,②厚生局からの開設情報収集等はされているのか,③府医としての会員増加に向けた具体的なアピール方法等-について質問が出された。

 府医において事前にクリニックビルの建築に関する情報を把握することは非常に困難であり,現在は把握できていない状況である。近畿厚生局京都事務所から保険医療機関の指定に関する通知により医療機関の新規開設の情報を得ているが,医療機関を開設し,保険医療機関の指定を受けた後の情報把握となる。
 医療機関の新規開業時には,開業場所や建物,医療機器の選定,医療機関の開設に係る行政関係の書類や,スタッフの確保など様々な調整や手続きが必要になり,一人で開業準備することは難しいことから,現状では多くの先生方がこうしたディベロッパーやコンサルタントに相談していると考えている。
 新規開業時には,本来,地区医に事前相談があり,場所や診療科など周辺医療機関との関係性や,医療機関名称など様々な調整が行われた後に,新規開業に向けた準備が進められることが望ましいが,ディベロッパーや建造物のオーナー等の思惑が先行し,医師会に事前相談なく,医療モールなどの「箱もの」が先に出来上がる事例がある。建設後に医師を探す場合,そこに入る医師は必ずしも地域の事情を把握されているとは限らないため,その結果,不適切な医療機関名称や事前の調整がなされず,同じ専門科の医療機関が乱立するなど地域医療の混乱も懸念される。
 府医では,会員増加を図るべく,勤務医や研修医の先生方を対象とした取組みの充実を図り,医師会入会の具体的なメリットとして,日医の医師賠償責任保険や医師年金などをあげているが,目に見えるメリットよりも,医師会に入会する理由として最も重要なことは,医療の専門家集団として医師会の組織力を強化することにより,国の医療政策への提言力が増し,医療制度を守り,結果として医師個人の職務を全うできる環境の実現に繋がることである。
 さらに,診療報酬の決定プロセスについて,財務省を中心とした医療費削減への圧力が増す中において,医療界が求める制度や政策を実現するためには,政策決定へのプロセスにより深く関わり,医療現場の意見を反映させていくことが重要である。そのためには,「組織力」が極めて重要であり,発言力をより強いものにするためには「医師の総意である」ということを示すために会員数を増やし,その提言を後押しする必要がある。

〜意見交換〜
 地区からは事前相談なく医療モールが建設されると,従来からある医療機関の場所や診療科が考慮されないことから,地域の医療提供体制に混乱をきたすと改めて指摘があり,行政に届出や相談があった際には,医療機関名称ガイドラインのより強い指導とともに,医師会への相談を促すことが求められた。
 府医からは,医療機関名称ガイドライン順守の指導について継続的に行政へ依頼を行う意向を示すとともに,医療機関名称に開設者の名前を入れることが難しいケースでは別途,開設者名や法人の構成員等を明示する等,責任の所在を明らかにすることが必要最低限の対応ではないかとの考えを示した。
 また,地区においては,新規開業時に相談が持ちかけられるような顔の見える関係性が構築されることが理想的であり,地域での地道な活動が組織力強化につながるとしてさらなる協力を求めた。

医療DX 関連の情報について

 地区から,「京都府内での電子処方普及率,昨年12月に発生した電子処方箋トラブル対応の進捗状況,DX加算の延長の見込みとマイナンバーカード使用率低下に伴うペナルティの有無,オンライン資格確認居宅同意取得型をスマホアプリで行う場合の補助金申請,子ども医療証のマイナンバーとの紐づけ予定」などについて質問が出された。

 京都府内の電子処方普及率は,診療所が5.7%,病院が1.3%,薬局が60.9%となっている。
 また,昨年12月20日に発生した電子処方箋トラブルについては,医薬品マスタ等の設定が適切になされていないこと等により,医療機関で意図した医薬品名や単位とは異なるものが薬局において表示された事例が報告されたため,電子処方箋管理サービスの機能を一時停止し,医療機関・薬局における医薬品マスタの確認作業の実施期間を設けることとなった。当初,12月20日から24日までとされていたが,26日までに延長され,27日以降,厚労省に「点検報告」をした医療機関で発行が再開されている。
 日医が医療DX推進体制整備加算の施設基準要件である「3月末までの電子処方箋の導入」の延長を要望し,結果的には,4月から導入済みと未導入で点数が分けられた。
 マイナンバーカード使用率の低下でのペナルティの有無については,ペナルティではなくインセンティブとして,医療DX推進体制整備加算については,一定のマイナ保険証利用率が施設基準要件となっており,利用率が高い場合は点数も高くなっている。
 オンライン資格確認居宅同意取得型をスマホアプリで行う場合,補助金申請については,2月1日が期限となっているが,これまでも期限の延長はあったことから,さらに延長の可能性はあるかもしれない。
 子ども医療証のマイナンバーとの紐づけについては,国の工程表では2026年度から紐づけることになっており,現在は実証事業として一部の市町村で紐づけがされている段階である。

府医からの連絡事項

 ※山科医師会との懇談会参照

2025年4月1日号TOP