2025年12月15日号
下京西部医師会と府医執行部との懇談会が10月31日(金),下京西部医師会事務所にて開催され,下京西部医師会から10名,府医から9名が出席。「次期診療報酬改定」,「オンライン資格確認に関する問題」,「OTC類似薬に関する問題」,「最近の監査や指導の動向」をテーマに議論が行われた。
~意見交換~
その後の意見交換では,特に病院では看護師等の確保が大きな課題となっており,有料職業紹介を利用せざるを得ない状況にあるため,事業者に支払われる高額な手数料が病院経営を圧迫する大きな要因になっていると指摘があった。府医からは,日医としても診療報酬の中から有料職業紹介業者に高額な手数料が流れていることを認識しており,改善に取組む姿勢を示していることを報告した。
オンライン資格確認システムの「災害時モード」とは,災害等により患者がマイナ保険証を持参できない,あるいは通常の資格確認端末接続に支障がある状況等を想定し,被保険者の氏名・生年月日・性別・住所等を用いて,医療機関・薬局において被保険者の「保険資格情報」および「医療情報(薬剤情報・特定健診情報・診療情報等)」を閲覧できるようにする仕組みである。具体的には,被災地など,災害救助法適用地域等を対象として,システム運用主体(支払基金・国保中央会)が「アクティブ化(利用可能化)」を指示することで,このモードが稼働することになっている。
ご指摘のとおり,災害時モードは「災害現場そのものの診療継続」ではなく,もう一段階後のフェーズが想定されており,被災初期ではなく,「通信が復旧した後の医療提供」段階で有効な仕組みであるため,停電時には利用できない。現行制度では,災害時モードはあくまで通信・電源が維持されている医療機関における被災患者の情報照会支援を目的としており,自院が停電・通信断の状態にある場合には機能しない。そのため,オンライン化によってむしろ災害初期段階の資格確認は脆弱化しているように見える。
しかし災害初期において,実際はオンライン資格確認やマイナ保険証によらずとも,被災者が氏名・生年月日・連絡先等に加え,勤務先または住所・組合名等を申し出れば保険診療として取り扱うことが制度上認められ,そのままレセプト請求も可能となっている。この取り扱いは東日本大震災以降,厚労省通知で明確に定められており,災害初期における医療アクセスを保障するアナログな補完方法である。
ただ,「大災害」ではない状況で停電が発生し,患者がマイナ保険証を持参した場合などにはこの取り扱いは適用されず,令和5年7月の厚労省通知の一部「マイナンバーカードによるオンライン資格確認を行うことができない場合の対応」が該当し,マイナポータルまたは被保険者資格申立書によって対応することになる。いずれにせよ,マイナ保険証の原則化によって資格確認方法は複雑化しているため,医師会としては,医療現場が混乱しないよう,医療機関への周知とともに,国民への周知徹底を国・行政に求め続ける必要があると考えている。
薬剤の出荷調整については,コロナ禍以前より生産量自体は増産されているにもかかわらず供給不足が発生している薬剤があり,その背景には大手チェーン薬局に偏在しているという構造的な問題があることが指摘されている。医薬品不足の解消は当初2029年度と予測されていたが,業界団体の努力により2027年度への前倒しが目指されている。
こうした状況を受け,日医も本年8月に政府へ提出した2026年度予算要望の中で,新たに「医薬品の安定供給」に関する項目を追加し,安定供給に向けた製造能力の強化や後発医薬品産業の構造改革を強く求めており,医療界全体として政策レベルでの抜本的な対策を要請している。現場の声を国に届け続け,実効性のある対策を求めていくことが重要であると考えている。
集団的個別指導の対象医療機関の選定方法等に対するご懸念について,指導の詳細は指導大綱および指導大綱実施要領に定められているが,集団的個別指導は,診療科等を基準とする類型区分に応じて,レセプト1件あたりの平均点数が,各都道府県の平均点数の一定割合(病院は1.1倍,診療所は1.2倍)を超えるもので,かつ類型区分ごとの医療機関等の総数の上位から約8%の範囲の医療機関等を対象として,講義形式で行われる指導である。
府医では,従来から「高点数=悪」ではないことと併せて,医療機関の専門性を考慮することなく,必然的に高点数となってしまう場合においても指導が行われることや,類型区分の根拠が現状に合っていないこと等を鑑み,その方法に根本的な問題があることを指摘した上で,集団的個別指導の廃止を訴えてきたところである。一方で,医療機関に対しては,集団的個別指導の対象となったことで委縮診療にならないこと,理由なき欠席が個別指導につながる可能性があることについて周囲喚起しつつ,対象となった場合には必ずご出席いただくよう呼びかけている。
また,個別指導は,診療報酬請求等に関する情報提供があった場合や,個別指導を実施したが改善が見られない場合などに実施されている。患者や医療機関内部からの情報提供によって対象になる可能性があることから,患者,院内スタッフとしっかりコミュニケーションを図ることも重要である。