2026年5月15日号
舞鶴医師会と府医執行部との懇談会が3月 28 日(土),舞鶴医師会館にて開催され,舞鶴医師会から11 名,府医から6名が出席。「総合診療医の育成状況」,「診療所等の閉院問題」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
高齢化にともなう複数疾患併存,医師の地域偏在,医療の細分化による全体最適の欠如等の課題が顕在化してきたことを背景に,幅広く診て適切につなぐ医師として「総合診療医」の必要性が高まったことを受け,2010年頃からの専門医制度改革の議論の中で,医療の質の担保や専門医の標準化に向けて「基本領域としての総合診療」が議論されるようになり,2018年に日本専門医機構を中心とした「新専門医制度」が開始される中で,19番目の基本領域として「総合診療専門医」が正式に位置づけられ,専攻医の養成が全国でスタートした経過である。
総合診療専門医には,新専門医制度のもとで養成が開始されているが,京都府における専門研修プログラムの採用状況を見ると,総合診療科は例年10名前後で,他の診療科と比較してもその規模は限定的な状況である。また,京都府内における自治医科大学卒業生や地域枠医師など,義務年限を有する医師の診療科選択の状況を見ても,現時点で総合診療科の選択は必ずしも多いとは言えない状況である。
総合診療が19番目の基本領域として位置づけられ,新専門医制度がスタートした背景には,「細分化された医療をつなぎ,患者と地域を丸ごと支える医師」として,適切な初期診療と必要に応じた継続的な診療を全人的に提供するとともに,地域のニーズを踏まえた疾病の予防,介護,看取りなど,地域で生活する人々の生命や健康に関わる幅広い問題について適切に対応できるという,多岐にわたる役割への期待がある。一方で,キャリアパスの見えにくさや他診療科との役割の重なりなど,若手医師が選択を検討する上での課題が指摘されてきたが,専門医試験の受験者数・合格者数を見ると着実にその数は増えてきており,今後の活躍が期待されるところである。
こうした状況を踏まえると,総合診療専門医の育成は引続き重要である一方で,それのみによって地域の医療提供体制の課題に対応していくことには一定の難しさもあると考えられる。総合診療専門医の育成を着実に進めることに加え,地域で診療にあたるすべての医師が,総合的な診療能力を備え,かかりつけ医としての役割を果たしていく体制を構築することが重要である。
日医では,専門医資格とは別の次元で,地域医療を担う医師一人ひとりの診療能力の向上を目的とした取組みとして,平成28年より「日医かかりつけ医機能研修制度」を開始している。本研修制度は,基本研修・応用研修・実地研修の三層構造となっており,知識のみならず,地域における実践を重視した内容となっている。
京都府における修了者数は,直近3年間で毎年50~60名を推移しており,コロナ禍で一時は減少したものの,近年は再び増加傾向にある。これは,現場の先生方が地域医療に対して責任感を持っておられることの表れであると認識している。
地域医療の現場では,診療科にかかわらず,それぞれの専門性を持つ開業医の先生方が,日常診療の中で患者を包括的に診ておられ,この積み重ねによって地域医療が支えられている。こうした中で個々の医療機関が点として存在するのではなく,それぞれが役割を持ちながら連携し,「面としてのかかりつけ医機能」を発揮していくにあたり,今年度から開始された「かかりつけ医機能報告制度」は極めて重要な制度であると認識している。
本制度の趣旨は,地域の医療機関が自らの機能を明確にし,それを可視化することによって,地域全体として必要な医療機能を確保することにある。この制度を実効性あるものとするために最も重要なことは,できる限り多くの医療機関に「かかりつけ医機能あり」と報告していただくことである。もし報告が限定的なものにとどまれば,地域におけるかかりつけ医機能が不十分であるとの評価につながり,結果として,制度的な関与や新たな枠組みの導入といった議論が進む可能性も否定できない。地域の実情をよく理解している医師自身が主体となって,地域医療のあり方を示していくことが重要である。
専門医不足という課題に対しては,総合診療専門医の育成を着実に進めるとともに,開業医を含めたすべての医師が,かかりつけ医としての機能を発揮し,地域を面として支える体制づくりが不可欠である。そのためにも,かかりつけ医機能報告制への確実な対応や日医かかりつけ医機能研修制度への積極的な参加により,地域医療の持続可能性を確保していく必要があると考えている。
〜意見交換〜
その後の意見交換で,府医は,総合診療専門医は,高齢化社会への対応に向けて,総合的・全人的に診ることを想定していると言いながら,国が医師偏在対策にも利用しようとしたため,なかなか選択する医師が増えないまま現在に至っていると指摘。総合診療専門医の特徴として挙げられる「どのような患者,症状でも診察し,必要に応じて専門医へ紹介する」,「領域を問わず対応する」,「患者個人だけでなく患者の生活を支える家族も丸ごと診る」,「どんな相談にも耳を傾け,向き合う」,「病気の治療だけでなく,予防から終末期まで継続的に診る」,「地域全体の健康を考える」,「多職種や行政と連携し,地域の暮らしを支えるチームの核となる」といった内容は,まさに「かかりつけ医」の役割そのものであると説明し,総合診療専門を各地域に配置するといった体制になっていない現状では,患者に必要な医療を継続的に提供できるよう,かかりつけ医機能報告制度によって可視化された各医療機関の医療機能の情報を活用しながら,地域の医師が相互に協力・連携し,「面としてのかかりつけ医機能」を発揮していくことが求められるとした。
舞鶴医師会・隅山会長は,地域課題として,後継者不足による診療所の閉院問題を挙げ,開業医がこのまま減少を続けると,在宅医療はもちろん,学校医や産業医活動にも著しい影響を及ぼすだけでなく,医師会活動の存続にも危機感を示した。医師の地域偏在を是正し,地域での開業を促したいところであるが,医師会に入会しない医師が増えることも懸念されるとした。また,病院の統合も進んでいるものの,専門医がいないため,地域完結型の医療は難しい状況にあると説明した。今後,郡部開業の推進によって明るい兆しが見られるのか,また,同じような課題を抱える他の地域での成功例等について,情報の提供を求めた。
府医からは,外来医師過多区域の候補となった京都市内においてもA会員の高齢化が進んでおり,将来的に地域の医療提供体制が維持できるかどうかが懸念されていることを紹介した上で,医師の地域偏在の問題は,人口の動向とも深く関わり合い,地域のマーケットや産業,教育環境など,他の要素も大きく影響すると指摘した。
今後,病院の機能分化と連携が進む中で,地域において開業医が不足し,無医地域が出てきた場合は,病院の先生方に協力を依頼し,地域医療をサポートしていただく体制も必要になるとの見方を示した。
府医の地域医療対策委員会において情報収集した他府県の取組み事例等として,週に数回,病院から診療所に医師を派遣して日常診療を維持,あるいは,診療機能を持った車で巡回し,診療を継続している取組みの他,厚生労働省では,各地の郵便局にオンライン診療の拠点をつくり,病院の医師によるオンライン診療の活用が構想されていることを紹介。「医師を確保する」という発想から,現在は「医療を確保する」という視点に移行してきており,医療をどのように継続するかという方向で議論が進められていると説明し,病院や診療所を新たに作ることも難しいため,D to P with Nによるオンライン診療も現実的な手段となりうるとの見方を示した。
日医もドクターバンクで医業継承やマッチングに積極的に取組んでおり,府医のドクターバンクもタイアップし,第三者による医療機関継承も含めて日医と連携して対応していく意向を示し,府内だけでなく全国に向けた情報発信に並行して取組むことで,北部の医療提供体制に寄与することに期待を示した。
最後に,北部における医療提供体制の整備にあたって,府医として協力を惜しまないと述べ,今後も継続的に関わっていく意向を示した。
初・再診料の加算や生活習慣病管理料と他の点数の併算定の可否等について整理し,算定にあたっての留意点を説明するとともに,算定漏れを防ぐなど適正な運用により健全な医業経営を呼びかけた。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する留意点を解説し,慎重な判断と適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。