「かかりつけ医機能報告制度」,「外来医師過多区域」について議論

 山科医師会と府医執行部との懇談会が3月 11 日(水),山科医師会館にて開催され,山科医師会から21 名,府医から6名が出席。「かかりつけ医機能報告制度」,「外来医師過多区域」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

かかりつけ医機能報告制度について

 府医では,すべての医療機関からの報告を目指し,説明会の開催や報告の勧奨を京都医報,ML,FAX情報等を通じて制度の周知を図るとともに,各地区医にも協力を依頼してきた。
 地域におけるかかりつけ医機能を可視化し,医療機関同士の連携を通じて地域全体で患者を支える体制を強化することを目的としているため,多くの医療機関からの報告が不可欠とされる。
 かかりつけ医機能をめぐっては,これまで政府の骨太の方針において,かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入や,かかりつけ医の制度化などが議論されてきた。しかし,日医が強く反対し,制度化ではなく「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」という形で整理された。
 その後の制度設計においても,財務省からは報告する医療機関としない医療機関を分断し,フリーアクセスを制限するような提案がなされたが,日医は医療機関同士の連携によって地域医療を支える仕組みとすべきと主張した。その結果,診療科にかかわらず,すべての医療機関が「かかりつけ医機能あり」と報告できる制度として,令和8年1月から報告が開始されている。
 一方で,財務省はかかりつけ医の制度化や登録制,診療報酬の包括評価などを引続き主張しており,本制度についても5年後に見直しを検討することがすでに決められている。報告率が低く,地域のかかりつけ医機能が十分に可視化されない場合,将来的に制度化の議論が再燃する可能性がある。こうした動きを踏まえると,すべての医療機関が本制度において「かかりつけ医機能あり」と報告することが極めて重要である。
 報告期限は3月31日までとなっているが,報告率が低調でまだ十分とは言えない状況である。同制度は医療法に規定された報告義務のある制度であるため,未報告の医療機関に対して,各地区からも会員へ必ず報告するよう周知協力を依頼した。

〜意見交換〜
 その後の意見交換ではG-MISシステム面での課題が指摘された。具体的には,1月に報告を完了したにもかかわらずシステム上は「報告中」のままと表示され後日修正が必要となる事例や,データ反映の遅延により実際には報告済みであるにもかかわらず京都府から未報告機関として督促メールが送付される事例が報告された。また,G-MISと都道府県側との情報連携が十分とは言えず,都道府県側においてもシステム運用に対する不満が見受けられるとの意見があった。さらに,G-MISと連動する患者向け医療機能情報提供・ナビィにおいて,診療時間など入力した情報が正しく反映されない事例があることや,コロナ関連登録終了にともないG-MISの利用権限が失効し再取得までに時間を要するなど,報告に至るまでの手続き上のハードルが高い点も課題として挙げられた。加えて,本来義務となっている医療機能情報提供制度の報告が未了の場合,かかりつけ医機能報告の入力項目が簡略化されず,同様の内容を二重に入力する必要が生じるなど,現場の事務負担や混乱を招いているとの指摘があった。
 府医としては,同様の事象が全国でも発生している可能性があることから,現状について日医へ意見を伝える考えを示した。

外来医師過多区域について

 近年,全国的に医師の地域偏在が課題となる中,厚生労働省は令和6年12月に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を公表した。従来は若手医師の配置に重点が置かれていたが,今回は全世代の医師を対象とした複合的な施策が特徴である。
 さらに,令和7年12月の医療法等改正では,①医師確保が必要な区域の設定,②医療機関管理者要件の見直し,③外来医師過多区域での無床診療所への対応強化が盛り込まれ,本年4月1日から施行される。
 本制度では,都道府県が外来医師過多区域を設定し,新規開業者に対して,開業6か月前の届出を義務付けるとともに不足する医療機能を提供しない場合には協議の場への参加を求める仕組みとなっている。正当な理由なく要請に応じない場合には,保険医療機関の指定期間短縮や勧告・公表などの措置が規定されている。ただし制度の趣旨は規制強化ではなく,地域医療を維持するための協働の枠組みである。
 候補区域としては,外来医師偏在指標が高いことに加え,可住地面積あたりの診療所数が上位10%に入る二次医療圏が対象とされており,全国9区域の一つとして京都・乙訓医療圏が挙げられているが,あくまでも指標上の評価であり,圏域内にはへき地的要素も含むため一律に評価すべきではない。今後は高齢化や交通事情など地域の実情を踏まえ,行政と医師会が連携して運用を検討する必要がある。
 既存の開業医に新たな義務はないが,新規開業者には,地域において不足している医療機能の提供が求められる(例:在宅医療,夜間・休日の輪番対応,へき地医療への協力など)。正当な理由なく応じない場合,機能強化加算や地域包括診療加算など地域医療に関する加算の算定が認められない可能性がある。
 制度は3年程度で効果検証と見直しが行われる予定で,候補区域は令和11年度まで変更しない方針である。京都府では医師会との意見交換を継続し,国や日医の動向を踏まえつつ運用方針を検討している。また,厚生労働省の検討会では,事前届出や要請・勧告の実施状況を都道府県が毎年国に報告する仕組みが新たに盛り込まれた。
 本制度は,いわゆる「開業規制」を目的とするものではなく,地域医療の状況を共有しながら医療提供体制を維持していくための枠組みとして運用していく方針である。制度は施行後3年を目途に効果検証が行われる予定であり,実効性ある制度とするためには,地域の実情を熟知する医師の意見が不可欠である。府医としては,今後も京都府や日医からの情報を地区医に随時提供するとともに,地域の意見を踏まえながら丁寧に制度運用を進めていく考えである。

〜意見交換〜
 その後の意見交換では,外来医師偏在指標の算出方法と新規開業者への周知状況が問われた。指標は人口10万人あたりの診療所医師数を基礎に,外来患者割合などを加味して算出され,人口の少ない地域での過大評価を避けるため可住地面積を用いる方式が試行的に導入されると説明。京都での運用が定まっていないため現時点で周知は行われておらず,今後京都府が内容を固めて周知する方針とされた。
 次に,新規開業者と地区医の軋轢や医師会入会への行政関与について質問があり,制度は行政主導で進むため摩擦は生じにくく,行政は医療ニーズ把握のため医師会に相談する立場であると整理された。また,医師会入会に行政は関与しないが,コンサルタント経由で医師会と関わらずに開業するケースが増えている現状において,行政を介して必ず情報が入る仕組みは有益であり,6か月前の届出により開業予定者を早期に把握でき,地区医が接触する機会の創出につながることが期待されるとした。
 外来医師過多区域に関東圏や名古屋が含まれない点については,標準偏差による区分の結果,東京・京都・大阪・神戸・福岡が上位となったためであり,試行段階のため今後拡大の可能性があると説明した。
 区域内の医師偏在(例:山科区内の駅周辺集中)については課題を認識しており,区域細分化を京都府と医師会で検討中であること,地区医が自区域の医療機能の過不足を整理し,不足分野への参入を開業予定者に促す役割が重要とされた。
 また,長期的な視点から,現在の開業医の平均年齢(65〜70歳)を考慮すると,10〜20年後には地域の医師数が大幅に減少し「過多」から「不足」に転じる可能性が高いと指摘。将来を見据え,現時点での「過多」という評価だけで新規開業を抑制するのではなく,地域医療の持続可能性を考えた制度運用が重要であるとの認識が共有された。

2026年4月15日号TOP