投稿エッセイ 北山杉 高次脳機能障害者支援法の成立と今後の課題

御所南リハビリテーションクリニック  武澤 信夫
(高次脳機能障害リハビリテーション講習会京都実行委員長)

 高次脳機能障害支援法が,2025年12月16日に成立し,2026年4月1日より施行されています。この法律は,当事者や家族の強い願いで,議員立法により成立しました。また,対象者も記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害の高次脳機能障害だけでなく,失語,失行,失認その他の認知機能の障害も対象とするもので,その患者数は全国で約23万人と推計されています。
 2001年度より,厚労省は国立障害者リハビリテーションセンターを中心に,全国の12自治体で高次脳機能障害支援モデル事業に取組みました。そして,高次脳機能障害の行政的診断基準,リハビリテーションプログラム,支援プログラム等が開発されました。その行政的診断基準として,頭部外傷や脳血管障害などの原因により「日常生活または社会生活に制約があり,その主たる原因が記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などの認知障害である」としました。京都府には,数千人ほどの高次脳機能障害者および失語症者が推定されます。
 また,2004年度より高次脳機能障害の診断により医療保険の対象となり,徐々にリハビリテーションが普及してきました。2007年の障害者自立支援法(現在,障害者総合支援法に改訂)の成立により,高次脳機能障害支援普及事業は,都道府県が行う専門的相談事業として法的に位置づけられ京都府健康福祉部リハビリテーション支援センターを支援拠点として取組みを開始し,府立医大脳神経内科にも高次脳機能障害外来が開設されました。
 2011年度に京都府は「京都府高次機能障害者支援プラン」を策定し,京都府心身障害者福祉センターに高次脳機能障害外来と生活訓練施設「ひまわり」を,舞鶴市に北部高次脳機能障害支援センターを開設しています。また,京都市も京都市身体障害者リハビリテーションセンターを再編し,高次脳機能障害支援センターと障害者施設を生活訓練施設として整備しています。
 原因疾患は,脳血管疾患が最も多く,外傷性脳損傷や低酸素脳症,脳腫瘍,小児がんへの化学療法後の高次脳機能障害も見られます。小児や若年者では,学習・学業への支援,就労支援など教育機関,就労支援機関との連携など,医療機関と公的機関の支援と連携が不可欠になります。最近は,自動車運転の再開を希望する方も多く,自動車教習所と連携して運転支援にも取組まれています。
 また,2008年度より高次脳機能障害の当事者・家族と協力して,医療福祉関係者や一般市民向けにも,日本損害補償協会の助成金を得て高次脳機能障害リハビリテーション講習会を年1~2回定期的に開催し,今年度は30回目の予定です。府医のご後援もいただき,大変,感謝しています。
 このように経過を振り返ると,高次脳機能障害者支援法の成立の意義を踏まえて,新たな「高次脳機能障害支援プラン」の策定なり,支援法で提案されている「高次脳機能障害支援協議会」の設置が望まれます。課題としては,小児・学生へのリハ・学習支援,成人への就労支援,運転支援,重度障害者への社会参加および施設支援,医療・教育・福祉・介護関係者への研修,産業医・企業関係者への研修・啓発,府民・市民への啓発など多岐にわたっております。
 今後とも,会員の皆様のご理解とご支援をお願いします。

2026年7月15日号TOP