2026年11月1日号
下京東部医師会と府医執行部との懇談会が9月16日(水),ホテル日航プリンセス京都(Web併用)で開催され,下京東部医師会から19名,府医から10名が出席。「災害対策」,「社会保障費」,「地域医療構想」をテーマに議論が行われた。
※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。
◇ JMAT 京都の出務可能者の確保と育成について意見交換
JMAT京都については,「災害が起きたら協力したい」という気持ちはあっても,実際には一人医師の診療所や訪問診療を担う医師にとって,日常診療を休んで被災地へ出務することは極めて難しく,また,「被災地で自分に何ができるのか」という不安も参加へのハードルとなっている。一方で,将来,京都府内で大規模災害が発生することを想定すると,JMAT 京都として活動できる医師を平時から一定数確保し,育成していくことは重要な課題である。日医の「JMAT 要綱」においても,平時から災害医療に関する研修を通じた人材育成の重要性が示されている。
府医としては,JMAT のために無理をして診療を休んでいただくという考えはなく,特に一人医師医療機関や訪問診療を担う医師であれば,目の前の患者への診療が第一であり,その診療を中断してまで出務していただくことは,地域医療を守るという JMAT の本来の趣旨からも適切ではないと考えている。予約患者の調整や一時的な休診が可能な場合などに,無理のない範囲でご協力いただくということを基本原則にしたいと考えている。
その上で,下京東部医師会からいただいた経験者と初回参加の医師を組み合わせるというご提案は,参加への心理的ハードルを下げるものであり,検討する価値があると考える。一方で,経験医師と初回参加医師の2名体制に固定すると,看護師やロジの増員も含めたチーム全体の編成が難しくなる側面もあるため,直ちに一律の制度化を図るのではなく,チーム編成のバランスを見ながら初回参加医師が経験者と同行できる機会を設けていくことが現実的だと考えている。また,JMAT 研修を「出務への入口」と位置づけ,自分にも参加できそうだと感じていただけるよう,段階的な参加モデルを構築していく予定である。
京都が被災地となった場合,先生方には,第一にご自身・ご家族,スタッフの安全確保,そして自院での診療再開を最優先にお願いしたいと考えている。地域医療の崩壊を防ぐためには,全国から DMAT や支援 JMAT が入って医療を支える間に,まず自院と地域の医療を立て直し,その上で余力があれば被災地JMATとして協力いただくという順序で考えていただくことが重要である。
◇ 災害時の被災状況の確認方法について~府医「KMIS」の導入に向けて~
過去の大規模災害で,地区医を中心とした無床診療所の被害状況の把握に難しさがあったことは,府医としても重要な課題だと受け止めている。
国の災害医療情報システムである EMIS は,2025年3月に新システムへと刷新され,利便性の向上とともに,平時の医療機関情報を登録する G-MIS との連携も進められているが,この新しい EMIS においても原則として無床診療所が医療機関情報の対象外となっていることが大きな問題である。国に対して全国共通の使いやすいシステムの構築を強く求めていくと同時に,それが実現するまでの間,府医においても独自の仕組みを整備していく必要がある。
現在,府医では,災害時の医療機関安否確認システムとして,「KMIS(Kyoto Medical Information System)」の整備を進めている。すでに一部の地区医で試験的に運用いただいているが,これまでの災害経験を踏まえ,すべての会員医療機関に利用範囲を広げていきたいと考えており,現在,医療機関の地図情報の整理・確認,システムの管理・運営体制の構築,管理運営会社との契約等,本格運用に向けた諸調整を急ピッチで進めているところである。この KMIS により,新 E-MIS ではカバーしきれない無床診療所の安否や被害状況を地区医と府医がリアルタイムに共有し,迅速な相互扶助や物資支援に繋げられるよう運用方法等を検討していきたいと考えている。
災害医療は,特別な一部の先生だけが担うものではなく,できる先生が,できる時に,できる範囲で参加可能な仕組みを作ることが何より重要である。システム面では,G-MIS(平時の基礎情報)+新 EMIS(全国的な災害医療情報)+KMIS(京都府内の医療機関,特に無床診療所を含む安否・被害情報)を適切に整理・運用し,先生方が安心・安全に地域医療を守ることができる環境を整えていく所存である。
◇意見交換
その後の意見交換では,「KMIS」について質問があり,府医からは,発災時にあらかじめ登録されたメールアドレスへ安否確認メールが配信される仕組みで,各医療機関はメールに記載された URL にアクセスして「開業」,「閉業」の回答ボタンを押すだけの簡易なシステムであると説明。各医療機関からの回答が即時にマップ上に反映されるため,各エリアの被災状況が容易に把握できるとした。また,電子媒体の利用に不慣れな会員に対しては,当面はFAX 等を組み合わせ,併用して情報収集に努める必要があるとの認識を示した上で,今後,府内全域での KMIS の運用に向けて,より多くの先生方に参加していただけるよう,各地区には,登録メールアドレスの確認や会員への周知等について協力をお願いしていく考えを示した。
その他,災害時の通信および電源の確保といった課題が共有され,今後は,診療所においても電源の確保等を含むBCPの策定が求められていくとの見通しが示された。
地区より,社会保障費の伸びが問題視されていることについて,その中には,高齢化を背景とした薬剤費の増加等,直接的に医療に関わる費用だけでなく,デジタル関連や看護師等の人材派遣関係,郵便・物流に係る費用等,医療機関から営利企業へ支払われる費用も含めて「社会保障費」として一括りにされていると指摘があり,社会保障費として集めた予算が,本来は社会保障費外であるはずの費用へと流出することを問題視し,例えば,デジタル関連の営利企業が手掛ける事業を医師会が運営するなど,社会保障費が社会保障費外へ流出することを防ぐために検討できることはないかと問題提起があった。
また,現在の医療におけるデジタル化は,紙媒体で運用してきたものを電子媒体に置き換えているに過ぎず,デジタル化による利点は限定的で,医療が良い方向に展開するまでには至っていないとして,機器更新に係る費用を営利企業へ流出させる要因になっていると指摘。医師会として講じることができる対策について意見が求められた。
府医からは,日医の代議員会においても,医療機関が得た診療報酬が高額な紹介料として人材派遣会社へと流出していることが問題提起され,日医としても重要な問題と認識していることを紹介。その対策として,日医はドクターバンク事業の全国的な展開を開始しており,府医も連携して取組んでいく考えを示した。医療機関としても,対応の迅速性を求めて人材派遣会社に頼らざるを得ない状況があることに理解を示しつつ,医師会のドクターバンクを積極的に活用していただくためには,確実性,スピード感を上げていくことが今後の課題であるとした。
患者の診療以外の部分で,オンライン資格確認に係る機器の導入・更新,システム接続にともなうセキュリティ対策費用等,業者やベンダーに支払われる費用の負担が増加していることに対しては,日医が当初から一貫して,医療DXに係る費用は国が全額負担すべきと主張していることを紹介した上で,今後も引続き主張していくことと併せて,医師会としての組織力を強化し,発言力を高めていく必要があるとの考えを示した。
その他,医師会のドクターバンク事業をもっと周知すべきとの意見や,医療機関に対するネット上の口コミに対して,個別の医療機関ではなく,医師会として組織で対応することはできないかとの要望が上がった。
◇ 2040 年に向けた新たな地域医療構想
地域医療構想は,2025 年を目標年度として2017年度に各都道府県で策定されたものであるが,昨年度までの検証を経て,今度は2040年を見据えた新たな構想の策定に向けて,国からガイドラインが提示されたところである。これまでの地域医療構想は,病床機能および病床数の整理を中心とした,主に入院医療に係る議論であったが,2040 年に向けて,人口構造や医療ニーズの質・量が変化し,85 歳以上人口の増加とともに,外来・在宅医療・介護の重要性が高まる一方で,医療・介護人材が不足すること等を踏まえ,新たな地域医療構想では,その対象を「高齢者救急」の整理等の入院医療だけでなく,外来や在宅医療,介護との連携,さらには人材確保まで広げ,医療機関へのアクセスの確保も含めた将来の医療提供体制全体に及ぶ議論が想定されている。
京都府が 2017 年度に策定した「京都府地域包括ケア構想(地域医療ビジョン)」では,他府県とは異なるアプローチをとっており,将来の医療提供体制に係る目標を数字として示すのではなく,地域の実状や医療需要,医療機関の役割を踏まえて,柔軟に将来像を描くという考え方に基づき,推計値から現在の病床や各地域の資源を考え,当該地域における議論を通じて現実的な目標を掲げるという流れで策定してきたものである。
新たな地域医療構想をめぐっては,「必要な医療」と「可能な医療」の両面から考える必要があると考えている。「必要な医療」の議論には,将来の人口構造や疾病構造・医療需要等,様々な変化を把握する必要があり,また,「可能な医療」については,現在の医療人材,医療資源で提供できる医療は何かということを踏まえて,持続可能な地域医療の確保に向けて議論していく必要がある。
各構想区域によって人口構造や医療資源,人材確保の状況,患者流出入等の周辺の状況が大きく異なるため,新たな地域医療構想では,同じ形を全地域一律に当てはめるのではなく,各地域でどのような医療提供体制が必要なのか,地域ごとに最適な形を考えていくことが重要である。その議論においては,各地区医の先生方の意見を中心に進めていく必要があると考えている。
府医としては,新たな地域医療構想の方針として,① 2017 年の京都方式の理念を継承する,②病床機能の変更・削減を「目的」にしない,③病床数だけでなく,医療機関の役割や機能を評価する,④「必要な医療」と「可能な医療」の両面から検討する,⑤ 2040年に固定せず,人口・医療需要・技術等の変化に応じて見直し,構想に反映していく―という考えである。
今回,医療機関の集約化を懸念するご意見をいただいたが,財務省は開業医の収入を敵視し,病院との分断を図っており,このまま診療所には厳しい状況は続くと思われる。また,開業医の平均年齢は62歳を超え,日医の統計では医師の引退年齢が74歳であることを鑑みると,将来的に開業医の数は減少していくと予想されるが,一定期間は人口減少にともなう医療ニーズの減少と並行して推移するため,大きなミスマッチは起こりにくいのではないかと考える。ただ,診療所の閉院によってその医療機能が失われると,当該地域で提供可能な医療についても弱体化が予想されるため,かかりつけ医機能報告によって地域の医療機能を見える化し,不足する医療機能をどのように確保していくかという議論が重要になると考える。今後,人口や医療資源が縮小していくフェーズにおいては,その変化に地域医療をどう適応させていくかという視点が求められる。
現在,新たな地域医療構想策定に係る議論の真っ只中であるが,京都府の地域医療構想をデザインする「地域医療構想策定部会」および「計画部会」では,松井府医会長が地域医療構想アドバイザーとして座長を務めている。そのため,地域医療構想に係る議論の行方をしっかりと注視することができ,医師会の考えが反映されたものになると考えている。
◇かかりつけ医機能報告制度
かかりつけ医機能報告は,改正医療法を含む全世代社会保障法の中で規定されたものであり,報告は医療機関の義務であるが,7月14日時点の報告率は,全国平均で80.46%,そのうち「1号機能有」は57.7%にとどまっている。また,「1号機能無」とした42.3%のうち,「院内掲示」のみ無しのために「1号機能無」とされたものが36.7%あり,これは全体の15.5%に相当する。
財務省は,1号機能を有しない医療機関については初・再診料の減算を行うべきと強く主張しているため,今後の報告状況により診療報酬を引下げるという議論が再燃する可能性がある。そのため,日医は,「1号機能無」と報告した医療機関は速やかに「有」に変更報告するよう呼びかけている。次回の報告は2027年1~3月であるが,変更報告は随時可能となっている。
1号機能は,報告内容の「院内掲示」,「診療領域」,「相談体制」が「有」であれば「1号機能有」と報告できるが,誤認識があるために「無」と報告している医療機関が散見される。
まず,「院内掲示」については,G-MIS での報告の際,必要事項をすべて入力した後に自動的に作成されたものを印刷し,院内に掲示すれば「有」とできるものである。「診療領域」に関しても,現在,各医療機関が標榜する標榜科目はすべて17の診療領域から選択可能であるため,いずれかの診療科はチェックを入れることができる。「相談体制」についても,診療時間以外に別途,相談時間を設ける必要はなく,時間内に対応していれば「有」とすることができる。
また,一次診療を行うことができる40の疾患に関しては,自院で完結することが必須ではなく,近隣医療機関への紹介対応等,連携で対応している場合も「有」とすることができる。
上述の項目を満たせば,「かかりつけ医機能あり」となるため,「1号機能無」と報告した医療機関は今一度,上記項目を見直し,速やかに修正報告をするようご周知いただきたい。
かかりつけ医機能報告の目的は,地域のかかりつけ医機能を可視化し,把握することで,地域の外来機能の弱点の補強につなげていくと同時に,国民の医療機関の選択に資する情報の提供を通じて,国民・患者にとって医療サービスの向上につなげることを目指すものである。そのためには多くの医療機関の参加を得て,地域を面で支えるかかりつけ医機能の充実・強化を図っていくことが重要である。
なお,京都府全体の報告状況は,7月7日現在の報告率が66.83%,うち「1号機能有」が72.5%であったが,9月2日現在,報告率が69.7%,うち「1号機能有」が75.2%にそれぞれアップしている。財務省の主張を退けるためにも,地区医には,改めてかかりつけ医機能報告制度へのご理解と会員への周知にご協力をお願いしたい。
◇外来医師過多区域への対応
令和7年12月の医療法等の改正により,医師偏在是正に向けた総合的な対策の一つとして,「外来医師過多区域の無床診療所への対応の強化」が挙げられており,外来医師過多区域での新規開設の事前届出制や,要請勧告公表,保険医療機関の指定期間の短縮等の仕組みが設けられ,令和8年4月から施行されている。施行後3年を目途として,当該区域の状況に基づいて所要の措置を講じることとなっている。
①外来医師偏在指標が「全国平均値+標準偏差の1.5倍」以上かつ,②可住地面積あたり診療所数が上位10%―を外来医師過多区域の基準として,当該基準に該当する全国9箇所の二次医療圏から,近畿では京都・乙訓,大阪市,神戸医療圏が外来医師過多区域の候補区域とされたものである。
厚生労働省が示したフローチャートでは,外来医師過多区域における新規開業希望者は,開業6ヵ月前に提供予定の医療機能を記載した事前届出を行い,地域で不足する医療機能の提供に関する意向を確認することになっている。「提供しない」場合は,外来医療に関する協議の場への参加と理由等の説明を求め,やむを得ない理由によらず不足する機能を提供しない場合は,期限を定めて要請を行うという流れである。それでも要請に応じない場合は,保険医療機関の指定を6年から3年に短縮されるとともに,都道府県医療審議会等の外来医療の協議の場へ年1回出席することが求められる。再三の要請に応じない場合,最終的には勧告,さらには公表という措置をとることが示されている。
なお,「地域で不足する医療機能」の内容として,初期救急(時間外・休日診療,発熱外来,夜間休日急患センターへの出務等),在宅医療の提供,公衆衛生(定期予防接種,学校医・園医,産業医,各種健診への協力等),その他(地域ケア会議や介護認定審査会等への出席,JMATへの登録等)が例示されている。
この制度は,正当な理由なく協力要請に応じない場合に,保険医療機関の指定期間の短縮等の措置が規定されているが,「開業規制」を目的としたものではなく,新規開業そのものを認めないというものではない。新規開業される先生に地域の医療事情を知っていただくとともに,地域で不足する医療機能を含めて,地域医療を一緒に支えていただけるよう早い段階からコミュニケーションの機会を創出することが重要な側面であると考えている。対話を通じて,ともに地域医療を支えていくための制度として前向きに活用されることを期待している。
今後の協議の進め方として,まず9月から10月にかけて,京都府から地区医や関係市町に対して,区域指定や地域で不足する医療機能についてアンケートが行われる予定である。そのアンケート結果を踏まえ,11月頃から指定区域や地域で不足する医療機能について具体的な設定案を整理した上で,12月以降に外来医療に関する協議の場で議論を行い,最終的に医療審議会でも議論していくという流れが予定されている。
初・再診料についての基本的な考え方を整理するとともに,各種加算の算定要件を整理し,算定にあたっての留意点を説明するとともに,適正な算定方法について紹介した。また,令和8年度診療報酬改定で新設された点数や,変更点などついて整理し,適正な運用を呼びかけた。また,療養費同意書の交付(マッサージ,はり・きゅう)に関する要点を解説し,適切な同意書の発行に理解と協力を求めた。