府市民向け広報誌『Be Well』第112号 『脊柱管狭窄症』

 府医では,府民・市民向け広報誌「BeWell」,VOL.112「脊柱管狭窄症」を発刊しました(本号に同封)。
 各医療機関におかれましては,本紙を診療の一助に,また待合室の読み物としてご活用ください。
 本誌に関するお問い合わせは,府医総務課(電話:075-354-6102,FAX:075-354-6074)までご連絡ください。

VOL.112「脊柱管狭窄症」
(A4版,見開き4ページ)

解説

高生会整形外科クリニック  太田 光彦

 腰部脊柱管狭窄症は,高齢化にともない増加している代表的な変性脊椎疾患で,日常診療において遭遇する機会は極めて多い。加齢にともなう椎間板変性,椎間関節肥大,黄色靱帯肥厚などにより脊柱管が狭窄し,馬尾あるいは神経根が圧迫されることで発症する。
 特徴的な症状は神経性間欠跛行であり,歩行や立位で下肢痛・しびれが出現し,前屈や座位で軽快する。閉塞性動脈硬化症による血管性間欠跛行では姿勢に依存せず運動負荷で症状が誘発される点が特徴であり,鑑別が必要である。また,MRIによる狭窄所見は高齢者では無症候性にも認められるため,画像所見のみで診断すべきではなく,病歴,神経学的所見,歩行負荷による症状の変化などを総合して診断することが重要である。進行性の筋力低下,膀胱直腸障害を認める場合には,早期に脊椎専門医へ紹介することが望ましい。
 保存療法が第一選択であり,患者教育,歩行訓練や体幹筋力訓練を含む運動療法,薬物療法を組み合わせて行う。薬物療法ではNSAIDs やアセトアミノフェンに加え,プレガバリン,ミロガバリン,デュロキセチンなど神経障害性疼痛治療薬を,患者背景や併存疾患を考慮して選択する。また,一部症例にはワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液も用いられる。神経根ブロックや硬膜外ブロックは短期的な疼痛緩和には有効であるものの,長期成績については限定的であり,適応を選択して施行することが望ましい。
 十分な保存療法を一定期間行っても改善が得られず,ADL やQOL の障害が著しい症例では,脊椎専門医への紹介を考慮する。手術適応と判断された場合,除圧術単独が標準術式とされ,脊椎不安定性が明らかでない症例では固定術を追加することは推奨されない。一方,変性すべり症や不安定性をともなう症例では固定術の適応を検討する。近年,手術手技も大きく進歩している。顕微鏡や内視鏡を用いた低侵襲脊椎手術に加え,片側進入両側除圧術など筋損傷を最小限に抑える術式が普及し,良好な臨床成績が報告されている。
 高齢患者ではフレイルやサルコペニア,骨粗鬆症など複数の併存疾患を有することが多く,脊椎病変のみならず全身状態を含めた包括的な評価が不可欠である。かかりつけ医と脊椎専門医が密接に連携することで,歩行能力の維持や生活機能の改善,健康寿命の延伸につながることが期待される。骨粗鬆症は術後椎体骨折や脊椎固定術後合併症の危険因子であり,術前から適切な骨粗鬆症治療を開始することの重要性が高まっている。

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