近畿医師会連合定時委員総会開催 3つの分科会で様々な角度から“医療界が抱える課題”について議論

 令和8年度近医連定時委員総会が9月6日(日),京都府医主管のもと,ホテルグランヴィア京都で開催された。
 午後から開催された分科会では,第1分科会「医療保険」,第2分科会「地域医療」,第3分科会「勤務医」に分かれて各府県医で議論を交わした(京都医報10月15日号にて概要のみ報告)。

第1分科会「医療保険」

 第1分科会では,令和8年度診療報酬改定の評価と課題について,江澤日医常任理事から改定の概要が説明された後,改定の総括に向けた活発な意見交換が行われた。府医からは,松井府医会長,米林府医副会長,小柳津・内田・細田・廣嶋・田村府医理事,濱島府医監事が出席した。

■ 令和8年度診療報酬改定の評価と課題について

江澤日医常任理事

 江澤日医常任理事は,今回の改定で多くの財源が措置された医療従事者の賃上げ対応について,医療関係者からは「基本診療料の引上げによって評価すべき」との意見があることは理解しているとした一方で,中医協での議論では,支払側から「確実に職員の給与に反映させるべき」との主張があり,これに沿う形で前回改定においてベースアップ評価料が新設されたとの説明があった。8月末までの提出が求められていた中間報告書についても,財務省や支払側の強い意向を受け,職種ごとの改善額を記載することになったと述べ,日医では,こうした対応に各医療機関が苦慮している状況を把握し,厚労省に報告期限の延長を要望した結果,9月以降の提出も可能になったとした。
 急性期の入院医療については,過去3回の改定において,7対1病床の削減を目的として,重症度,医療・看護必要度における該当患者割合や評価項目の見直しが提案され,診療側と支払側の意見が合意に至らず,いずれも公益裁定となっていたと振り返った上で,こうした累次の改定を経て,評価項目の見直しにも限界があることから,「7対1論争」に終止符を打つ意味で,「急性期病院一般入院基本料A・B」が新設されたと説明した。次期改定では,急性期一般入院料1,いわゆる7対1病床から急性期病院A・Bへ移行できない病院への対応が重要な課題になるとの認識も示した。
 また,急性期病院A・Bを含む複数の点数について,救急搬送件数が施設基準に盛り込まれたことにも言及した。中医協での議論においても,救急車の取り合いや不適切な運用につながる可能性について懸念を示していたことから,改定後の状況を十分に検証する必要があるとの考えを示した。
 外来医療については,かかりつけ医機能報告制度と診療報酬を関連付けることが,支払側から繰り返し提案されたと説明した。これに対し日医は,かかりつけ医機能報告制度は,医療機関がかかりつけ医機能を発揮することを主眼とする制度であり,その機能の有無によって診療報酬上の評価を分けるものではないと主張。その結果,診療報酬との直接的な関連付けを退けることができたとした。さらに支払側からは,地域包括診療加算,機能強化加算,外来管理加算の統廃合も提案されたが,これらは長年にわたって中医協で議論を重ね,現在の制度に至った経緯があるとして,そうした経過を考慮せずに単純に一括りにして廃止・統合することには強く反対したとし,現行の評価を維持することができたと説明した。

■ 「改定の総括」に向けて意見交換

小柳津府医理事

 小柳津府医理事司会のもと7月に開催された第1回近医連保険担当理事連絡協議会に引続き,「改定の総括」に向けた意見交換を行い,日医役員からもコメントを受けた。
 物価対応料については,日医執行部の尽力により新設されたことを評価する一方,診療所への財源配分が少なく,現在の物価上昇に対しては本点数のみでは不十分との意見が出された。これに対し,江澤日医常任理事からは,物価対応料はCPI(消費者物価指数)の上昇率をもとに設定された経緯について説明があり,その水準が適正であるかどうかも含め,中医協において引続き議論していくとの回答があった。

茂松日医副会長

 機能強化加算と外来管理加算については,それぞれ創設された経緯や評価対象が異なるため,一括りにして廃止・統合することは問題があるとの意見が示された。江澤日医常任理事からも,次期改定でも両加算を維持できるよう,引続き強く主張していくとの姿勢が示された。また,かかりつけ医機能報告制度と診療報酬を関連づける動きについて,茂松日医副会長から,財務省は1号機能がない医療機関について,初・再診料の引下げを主張していることをあらためて紹介され,城守日医副会長からもすべての医療機関が1号機能ありとなる制度設計であることが説明され,来年1~3月に実施される2回目の報告において1号機能ありの医療機関が100%とならなければ,次期改定では,初・再診料引下げの議論が加速する可能性があるとの強い懸念が示された。このため,各医療機関に対して制度の主旨と報告内容について周知徹底を図るよう協力が求められた。

城守日医副会長

 入院医療については,2040年の医療提供体制を見据えると,中小病院や有床診療所が,急性期病院と在宅医療との橋渡し役を担うなど,重要な存在になるものの,現在の診療報酬では赤字幅が拡大する一方であり,大病院だけでなく,こうした医療機関の経営の安定にも資する改定を求める意見があった。
 その他,医療は単なる「コスト」として削減するものではなく,国民が安心して生活するために維持・強化すべきものであり,「医療安全保障」としての取組みが重要との指摘や,現役世代の負担軽減を旗印に掲げる声が高まり,世代間の対立構造を煽る傾向があるとし,国民に対し,社会保障制度がどうあるべきかについて理解を深めるための教育が必要との意見もあった。

米林府医副会長

 最後に,米林府医副会長が,今回の意見交換を踏まえた改定の総括案について説明するとともに,近年の診療報酬改定では,医療費の抑制を前提とした財源論が先行し,医療提供に実際に必要となるコストや医療技術の適正な評価について,十分な議論が行われていないと指摘した。その上で,医療を「将来への投資」と位置づけ,持続可能な医療提供体制を構築するためには,十分な財源を確保することが必要であると強調した。

第2分科会「地域医療」

 第2分科会では,「地域医療」をテーマに,新たな地域医療構想,オンライン診療,いわゆる「囲い込み」の問題,災害時の支援・受援体制について,近畿2府4県の現状と課題を共有するとともに意見交換が行われた。府医からは,松井府医会長,谷口府医副会長,鎌田・髙階・市田・飯田・武田・森口・藤田・近藤・波柴・西村府医理事,辻府医議長が出席した。

■ 新たな地域医療構想「実質的な協議」の場へ

近藤府医理事

 近畿2府4県の構想区域はいずれも医療圏と一致している一方,地域医療構想調整会議の座長は,大阪,兵庫,滋賀では郡市区医会長,奈良,和歌山,京都では行政が担っており,開催頻度も年1~4回と府県によって異なることが報告された。
 大阪府医からは,府医師会,病院関係団体,行政による「4者懇談会」等を通じた検討状況や,民間病院の二次救急対応を反映した大阪独自の「準急性期拠点病院」案が示された。兵庫県医からは,医師会シンクタンクによるNDB等の独自分析や医療機関への事前訪問を行い,病床数だけでなく救急受入れ,退院困難,在宅支援等の現場データを活用した議論を進めていることが報告された。
 滋賀県医からは人口動態や医療・介護人材不足,奈良県医からは府県境を越えた患者流出入や人口減少地域の医療アクセス,和歌山県医からは外来・在宅医療・介護まで含めた体制構築と,調整会議に先立つ事前協議の重要性がそれぞれ示された。
 京都府医からは,各構想区域で調整会議が開始された一方,制度説明や取組み報告に終始し,「何が不足し,何が必要か」,「医療機関がどのように役割分担するか」といった実質的協議に至っていないことを課題として指摘。松井府医会長が地域医療構想アドバイザーおよび京都府医療審議会の地域医療構想策定部会および計画部会の座長を務め,府との事前協議を行うとともに,府医内に「地域医療対策委員会」を設置し,関係団体等との意見交換を進めていることを報告した。

坂本日医常任理事

 坂本日医常任理事は,新たな地域医療構想は病床機能にとどまらず,外来,在宅,介護,人材確保を含めた地域医療全体の再構築を目指すものであり,調整会議を制度説明や数値目標の確認に終始させず,地域の実情を踏まえた実質的な協議の場とすることが重要との考えを示した。

■ オンライン診療地域医療を補完する適正な活用を

 オンライン診療については,人口減少地域における通院困難者のアクセス改善や受診機会の確保などへの有効活用とともに,精神科領域を中心とした診療の質,緊急時対応,診断書の発行,向精神薬の処方・乱用等の課題について意見交換を行った。

市田府医理事

 和歌山県医からは,へき地診療所と支援病院をテレビ会議システムで結ぶ「遠距離カンファレンス」の取組みが紹介され,滋賀,奈良からは訪問看護ステーションと連携した「DtoPwithN」への期待が示された。また,災害時や在宅医療,専門医不足を補う手段としての活用も期待された。
 一方,大阪府医からは,精神科領域では自傷行為,自殺企図,DVなど緊急を要する患者への対応が不十分となる可能性があり,緊急時に対面診療を行える体制が必須との意見が示された。向精神薬の過剰摂取や転売,乱用等のリスク,営利企業の参画やオンライン診療所の乱立についても懸念が示され,行政による適切な監督・指導を求める意見が出された。
 坂本日医常任理事は,オンライン診療は利便性や効率性のみを重視するのではなく,医学的有効性・必要性,とりわけ安全性を最優先とし,かかりつけ医による対面診療を補完する形で適正に活用すべきとの考えを示した。

■ いわゆる「囲い込み」地域医療への影響を懸念

 有料老人ホーム等におけるいわゆる「囲い込み」の問題については,一部の住宅型有料老人ホーム等における過剰な介護サービスの提供や,住宅事業と医療・介護事業の一体的な運営が地域医療提供体制に与える影響について意見交換を行った。
 施設への入居を契機に地域のかかりつけ医との関係が途絶え,診療情報が共有されず,急性期病院からの退院調整や急変時搬送における連携が困難になることが指摘された。また,施設に訪問診療医や看護師が集中することで,手厚い在宅医療を必要とする高齢者や障害者への医療資源が不足するとの問題も示された。
 一部のサービス付き高齢者向け住宅等では,特定の医療機関や訪問看護事業所が施設と一体化し,画一的かつ高頻度のサービスを提供している事例も報告されたほか,施設紹介業者の介在や,診療報酬の一部が人材紹介会社等を介して企業側へ流れる構造を問題視する意見も示された。
 坂本日医常任理事からは,特定の医療・介護サービスの利用を入居要件とすること等への対応として,登録制や行政による指導等を含む制度見直しが進められており,入居者に適切なサービスが提供される実効性のある制度とする必要があるとの説明があった。

■ 災害時の支援・受援体制近畿ブロックで連携を

髙階府医理事

 災害時の支援・受援体制については,業務継続計画(BCP)の策定や災害医療コーディネート体制,JMATの派遣・受援体制等について意見交換が行われた。
 災害拠点病院だけでなく,中小病院,診療所,介護施設を含めた地域全体での連携が重要であり,支援する側には,被災地にいかに地域医療を取り戻すかという視点が必要との意見が示された。また,メンタルケアへの取組みや,近畿2府4県によるJMAT合同派遣・訓練,情報伝達訓練,実働訓練等の必要性も指摘された。
 日医の統括研修は開催頻度が少ないことから,日医統括研修の受講者を講師として,近畿ブロック合同による養成研修の開催を検討してはどうかとの意見も示された。
 坂本日医常任理事は,自然災害を想定したBCPの策定,都道府県災害医療コーディネート体制への医師会の積極的な関与,郡市区医を含む地域レベルでのコーディネート体制の充実が重要と指摘。近畿ブロックでも平時から訓練・連携を進め,災害時に近医連としてロジ・統括を含めた一体的な支援活動ができる体制を整えるため,近医連としてのBCP等の検討を進めることが期待された。

谷口府医副会長

 最後に谷口府医副会長が,新たな地域医療構想では医師偏在や外来,救急医療との関係など共通課題が共有され,オンライン診療や囲い込みについては地域医療提供体制や医療の質への影響が確認されたと総括。また,災害対応では支援体制だけでなく,事務局機能を含む受援体制の整備が重要と指摘し,今後も近畿各府県医師会が連携して取組んでいくことを確認した。

第3分科会「勤務医」

尾池府医理事

 第3分科会では,「勤務医」をテーマに,医師会と大学との連携,若手医師と医師会の協働・参画促進,勤務医の意見を医師会活動に反映する仕組み等について,各府県の取組みや課題を共有し,活発な意見交換が行われた。府医からは,松井府医会長,禹・上田府医副会長,松田・加藤・尾池・松村・上田三・堀田府医理事が出席した。
 勤務医は医師会員の半数以上を占める一方,医師会の役割が十分に認識されていないことが課題となっている。日医勤務医委員会の答申を踏まえ,勤務医が医師会活動に主体的に参画するためには,勤務医の意見を集約・共有・発信する場の整備が重要であることから,本分科会では各府県の現状や先進的な取組みについて意見交換を行った。

■ 医師会と大学との継続的な連携を

 各府県からは,医学生への講義,研修医オリエンテーション,大学との懇談会,大学関係者の医師会役員・委員への就任など,大学とのさまざまな連携事例が報告され,大学との連携を継続的に深めることの重要性が共有された。
 今後の医師偏在対策において,大学には地域への医師派遣という重要な役割があるが,単に医師を派遣するだけでなく,派遣された若手医師にとって地域での勤務経験がその後のキャリア形成にも意味を持つことが重要との意見があった。そのため,卒前教育,初期研修,専門研修,さらにその後のキャリアまでを見据え,大学と医師会がそれぞれの役割を担っていく必要性が示された。
 また,大学が有する医師の人事・派遣に関する情報と,地域医師会が把握する地域の医療ニーズや医療資源の情報を共有することで,より実効性のある医師配置・医師確保につながる可能性についても議論された。大学との連携は,加入促進にとどまらず,教育・研究・診療,地域医療の確保という共通の課題に対して,双方の強みを生かして進めることが重要との認識が共有された。

■ 若手医師に「医師会に入る意味」をどう伝えるか

 若手医師と医師会の協働・参画促進については,各府県から,研修医・若手医師を対象とした交流会,研修会,講演会,研究助成,女性医師支援など,多様な取組みが紹介された。
 一方,若手・中堅医師は多忙で,医師会活動への継続的な参加が難しいことに加え,「医師会に入ることで何が得られるのか」,「医師会活動が自身のキャリアとどう関係するのか」が十分に伝わっていないことが共通の課題として挙げられた。
 研修やキャリア形成など,自身に直接関係するテーマには関心を持ちやすい一方,地域医療,医療政策,医師偏在といった課題は自分ごととして捉えにくいとの指摘もあり,若手医師が関心を持つテーマを入口に医師会との接点をつくり,その役割を伝えていくことが重要との意見が示された。

■「 若手が主体となる仕組み」が継続的な参画につながる

加藤府医理事

 若手医師を単に医師会の事業に招くのではなく,若手自身が企画・運営の担い手となる仕組みについても,具体的な事例が紹介された。
 府医からは,加藤府医理事より,若手医師による「屋根瓦ワーキングチーム」が,臨床研修屋根瓦塾KYOTOをはじめとした研修医向けの取組みやイベント,オリジナルスクラブの企画等を主体的に行っていることを紹介。若手自身が企画に関わることで,医師会への帰属意識や参加者同士の一体感を高めるとともに,医師会の認知度向上にもつながるとの考えを示した。
 また,研修医の時期に医師会との接点を持った医師が,その後,専攻医,指導医となっても活動に関わる「循環」をつくることが,将来的な医師会活動の担い手を育てる上で重要との意見もあった。

■ 女性医師支援,地域でのキャリア形成など多様な取組み

 各府県からは,女性医師支援,ワークライフバランス,地域勤務,学術活動など,勤務医のキャリア形成を支える取組みも紹介された。
 府医からは,妊娠・出産・子育てと仕事の両立を支援する取組みに加え,北部地域で勤務する若手医師のヨコのつながりをつくる「北部研修医ネットワーク」や,地域で勤務する医師の臨床研究・論文作成を大学教員等が支援する「臨床研究道場」などを紹介した。

■ 勤務医の声を地域医療につなげる医師会の役割

 勤務医の意見を医師会活動に反映するためには,参加しやすい場を設けるだけでなく,地域や世代ごとの課題を継続的に把握し,意見を集約する仕組みが必要との認識が共有された。
 特に,大学が医師の派遣機能を担う中で,地域の医療ニーズや医療資源を把握する地域医師会と大学が情報を共有し,医師確保・医師配置につなげることの重要性が指摘された。
 今回の分科会では,勤務医部会・委員会の設置状況にかかわらず,各府県で若手医師支援,女性医師支援,研修,学術活動,大学との連携など,多様な取組が行われていることが共有された。一方,若手医師への医師会の役割や加入メリットの伝え方,勤務医が継続的に参加できる環境づくり,大学・病院・医師会の連携など,共通する課題も確認された。
 司会を務めた尾池府医理事は,各府県の取組みや好事例を共有できたことが今回の分科会の意義の一つであったと総括し,令和9年1月16日に開催予定の「近畿ブロック若手医師・勤務医連絡会議」において,さらに議論を深めていくこととした。

上田府医副会長

 さらに,上田府医副会長は,勤務医の立場から「勤務医が参加したいと思える医師会」を考えることが重要であるとし,こうした勤務医の視点を踏まえ,医師会が勤務医・開業医を含む医師全体を代表し,地域全体を俯瞰する立場から,行政,大学,病院,地域の医療機関をつなぐ役割を果たしていくことの重要性を示した。

今村日医常任理事

 また,今村日医常任理事からは,大学教員の処遇改善について日医として関係省庁に改善を求めていること,大学病院本院が医師の養成・派遣等において重要な役割を担うことから,大学病院と地域医師会の連携を一層深める必要があるとの説明があった。最後に,各地域の実情を踏まえて「地域としてどうあるべきか」を考えることが重要であり,その中核を担う地域医師会の積極的な関与への期待が示された。

2026年11月1日号TOP