「今後の地域医療構想」,「外来医師過多区域への対応」について議論

 左京医師会と府医執行部との懇談会が2月 21 日(土),ウェスティン都ホテル京都で開催され,左京医師会から 20 名,府医から9名が出席。「今後の地域医療構想」,「外来医師過多区域への対応」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

今後の地域医療構想について

 従来の地域医療構想では,2025年を目標年度として,急増する高齢者への対応が課題であったが,2025年以降は,支える側である現役世代の急減というフェーズに移行し,2040年にかけて就業者数が大きく減少する中で,医療・福祉分野における人材確保が大きな課題となる。また,85歳以上の人口は引続き増加する見通しで,医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者の一層の増加と,死亡数の増加が見込まれている。
 それにともない,2040年の医療需要では,85歳以上の救急搬送と在宅医療の需要が大きく増加することが見込まれている。外来,入院,在宅医療で医療需要のピークを迎えるタイミングに時間差があり,京都府においては,外来は2020年以前に最大となり,すでに減少の局面を迎えている一方で,入院は都市部で2040年にかけて増加し,在宅医療は2040年以降も多くの地域で増加が見込まれている。
 在宅医療の需要増加に対し,供給については,病院が増加傾向にある一方で,診療所は横ばいとなっており,今後の在宅医療は診療所から病院へシフトしてくことが予想されている。これは,府医が実施したアンケートにおいても同様の結果であった。
 現在,かつての低成長経済から成長軌道へ転換してインフレ局面を迎える中で,物価や賃金の高騰への対応が迫られる一方で,人口構成や社会生活の変革に対する構造改革が進まず,医療・介護はかつてない危機的な状況を迎えている。医療だけでなく社会全体の課題に対して,どのように乗り切っていくかが大きなテーマとなっている。
 85歳以上の高齢者の増加にともなう医療・介護の複合ニーズの急増は,医療と介護の提供体制を合わせた総力戦への体制転換を必要とし,「新たな地域医療構想」が求められている。就労人口の減少による担い手の継続的な減少によって,省力化と効率的なサービス提供が不可避となり,ケアの質の確保とのバランスが課題となる。また,租税や社会保険料等,社会の負担能力を考慮すると,サービス内容のさらなる重点化・効率化が求められる。医療DXやAIの活用など,情報化・技術革新の必要性は認知しながらも,医療現場では活用への期待と不安が交錯し,安全確保も課題となる。
 この難局を乗り切るためには,人口構成や疾病構造の変化にともなう医療需要の変化と,医療・介護提供体制をより多面的・複眼的に捉え,“未来予想図”に対応した適切な「医療のカタチ」を目指すことがより重要になると考えている。
 これまでの地域医療構想は,病院完結型から地域完結型の医療への転換を進めるべく,今後の医療需要に適した病床数を設定し,病床機能の分化・連携の推進を主な目的としてきたが,新たな地域医療構想では,2040年に向けて,医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増加と,人材確保に制約がある中で,基本的な方向性として,①地域の患者・要介護者を支えられる地域全体を俯瞰した構想,②今後の連携・再編・集約化をイメージできる医療機関機能に着目した医療提供体制の構築,③限られたマンパワーで効率的な医療提供の実現―が示されている。
 また,医療計画の関係性も整理され,これまで医療計画の中に位置づけられていた地域医療構想を,今後は医療計画の上位に位置づけ,地域の医療提供体制全体のグランドデザインを定めた上で,それに即した形で都道府県が医療計画を策定することとしている。
 さらに,2040年に求められる医療機関機能として,「治す医療」と「治し支える医療」のそれぞれを担う医療機関の役割分担の明確化を図ることや,これまでの二次医療圏を基礎とした構想区域を柔軟に捉え,より広域的な観点から医療提供体制の維持に必要な機能を設定していく考えが示されている。これまで二次医療圏を1つの構想区域として圏域内での完結を目指してきたが,今後は「地域医療介護構想」として,今後は圏域をまたいで,より柔軟に対応していくことが求められている。
 京都市内は,現在のところ医療資源・介護資源は充実しているが,2040年に向けた地域包括ケアの展望では,生産年齢人口の減少により,介護人材の確保が課題になるとされている。
 左京医師会のA会員数についても,日医の調査からA会員の引退年齢を74歳と仮定し,新規開業はないものとして試算すると,2025年に比べて2035年には半減し,2040年には3分の1となる。新規開業の先生を加えて,うまく地域医療をまわしていく方策を検討していく必要がある。
 府医としても,新たな地域医療構想への対応を強化すべく,今期から従来の「地域ケア委員会」を「地域医療対策委員会」として地域医療・介護構想担当者会議の位置づけに改組したところである。引続き行政とも連携しながら,地域医療を面で支えるための取組みを進めていく考えである。

〜意見交換〜
 その後の意見交換で,府医では早期から今後の在宅医療の需要増加を見据え,在宅医療・地域包括ケアサポートセンターを設置して情報提供や研修の実施等,取組みを進めてきたことを紹介した上で,今後もこれらの取組みをブラッシュアップし,在宅医療をはじめとする今後の医療ニーズへの対応に資する取組みを推進していく考えを示した。
 地区からは,医療と介護の複合ニーズを持つ高齢者の一層の増加を考慮すると,在宅医療や緩和ケアなど,個々の医師がかかりつけ医としての機能を高めていくことが重要であるとして,今後の府医の取組みの展開に期待が示された。また,研修会に参加するメンバーに関しても,新しい参加者を増やしていくことが重要であるとして,在宅医療の底上げを図る必要性が指摘された。

外来医師過多区域への対応について

 医師偏在問題が全国的な課題となっていることを背景に,厚労省が令和6年12月に公表した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」では,これまでの医師偏在対策が地域枠や専攻医シーリングなど「若手医師の配置」に焦点が当てられてきたのに対し,全世代で対応していくための複数の対応策が打ち出されたことが特徴的である。
 令和7年12月の医療法等の一部改正で,医師偏在対策に関する事項として,①重点的に医師を確保すべき区域を定めること,②外来医師過多区域の無床診療所への対応強化,③管理者要件の見直し―が盛り込まれ,本年4月1日に施行されることとなった。
 外来医師過多区域制度における新規開業希望者の手続きフローとしては,厚労省が示した外来医師過多区域の候補区域の中から都道府県が外来医師過多区域を設定し,新規開業予定者に対して,①開業6か月前の届出,②不足する医療機能を提供しない場合に,協議の場への参加が必要,③不足する医療機能を提供しない場合で,やむを得ない理由がないときには,地域で不足する医療機能への協力要請―を行う仕組みとしている。
 協力要請に応じない場合には,①保険医療機関指定期間の短縮(6年→3年),②医療審議会での説明要請,③勧告・公表―等の措置が制度上規定されている。今回の改正は,規制を強めるものではなく,地域医療をどう守るかを一緒に考える枠組みづくりと捉え,京都では情報提供と対話を中心とした運用を目指す考えである。
 対象(候補)地域は,①「外来医師偏在指標が全国平均値+標準偏差の1.5倍以上」,②「可住地面積あたりの診療所数が上位10%」の2点を満たす二次医療圏として,全国9か所が候補区域に設定され,京都・乙訓医療圏が候補の一つとなったものである。あくまで指標上の候補となったものであり,圏域内にへき地的要素を持つエリアもあるため,一括りで考えることはないとされている。今後は,高齢化率や交通事情等,地域ごとの実情を踏まえ,行政と府医,地区医が丁寧に協議を重ねながら運用を決めていくことになる。
 開業医の先生方への影響については,すでに開業されている先生方に新たな義務や強制的な役割を課すものではなく,新規開業の先生に対しても,これから検討する地域で不足する医療機能,例えば,在宅医療への部分的な関与,夜間休日の輪番,へき地へのスポット協力など―の提供を求めるが,関わり方は多様と考える。なお,提供しない場合の「理由」について,やむを得ないか否かについては,協議の場で判断することとなっている。
 地域で不足する医療機能などに関する医療提供の要請に理由なく応じなかった場合の不利益として,保険医療機関の指定期間を3年に短縮する他,「診療報酬上の対応」や「補助金の不交付」などが示されている。保険医療機関の指定期間については,再々指定時以降に勧告に従わない状態が続いた場合,3年から2年に短縮される見通しである。「診療報酬上の対応」については,中医協で議論され,地域医療提供体制への貢献に関する評価が含まれる機能強化加算,地域包括診療加算,地域包括診療料,小児かかりつけ診療料,在宅療養支援診療所が算定不可とされる見通しである。
 今後の制度運用にあたって,「開業規制」ではなく,地域の状況を共有する場を持つ制度としての運用を目指す方針である。現在,厚労省が示しているものが完成形ではなく,これから京都市・乙訓医療圏内で運用していくにあたって,現場をよく知る地域の先生方の声がなければ実効性のある制度にはならないと考えている。区域の指定や,不足する機能について,地区医から率直な意見をお聞かせいただき,行政とともに画一的な対応ではなく,柔軟に運用できるようにしていく意向である。
 また,開業後に,実際に不足する医療機能を提供しているか等の情報提供についても,地区医に協力を求めていくことになると考えている。
 将来的な展望として,施行後3年を目途として,新たに開設された診療所の数が廃止された数を超えているか,医師偏在対策として機能しているか,地域医療の維持に一定の効果があるか等,効果や影響を検証しながら制度を見直すこととされている。開業希望者への過度な負担を避けるため,令和11年度までは候補区域の変更は予定されていない。

〜意見交換〜
 その後の意見交換で府医は,今回の外来医師過多区域の指定に対して,自由開業制は堅持しなければならないとの考えを示した上で,新規開業時には必ず当該地域の医師会に確認の連絡があり,コミュニケーションが発生することを前向きに捉え,かかりつけ医機能報告制度の開始により,地域の医療機能が見える化されることで,地域で不足する医療機能の提供についても新規開業の先生に依頼しやすくなると述べ,一緒に地域医療を守っていこうと呼びかける機会に繋げていく必要があるとした。
 医師会の入会と結びつけることはできるのかとの意見に対して,まずは新規開業の先生とコミュニケーションの機会が創出されることが重要であるとし,医師会としても,例えば入会金を分納可能にするなど,医師会に入会しやすくする工夫も必要ではないかとの見解を示した。
 地区からは,新規開業する医師にとっては,事前に当該地域で不足している医療機能が把握できる仕組みが必要ではないかとの指摘とともに,例えば,学校医のなり手が不足していた場合でも,その先生の人となりがわからないと,医師会として責任をもって推薦することが難しいとの意見が挙がった。
 最後に,外来医師過多区域内で提供が求められる医療の内容が例示されているものの,診療科についての縛りはないことから,内容は各地域で柔軟に設定・運用していくことができると解釈していると述べ,新規開業の先生と医師会とのコミュニケーションを通じて,面としてのかかりつけ医機能の充実を図っていくことが重要であるとした。

2026年4月15日号TOP