「医療DXによる医師の働き方改革の実践」,「かかりつけ医機能報告制度と外来医師過多区域」について議論

 京都府立医科大学医師会と府医執行部との懇談会が3月 12 日(木),京都府立医科大学附属病院で開催され,京都府立医科大学医師会から9名,府医から 14 名が出席。「医療 DX による医師の働き方改革の実践」,「かかりつけ医機能報告制度と外来医師過多区域」をテーマに議論が行われた。

※この記事の内容は,開催日時点のものであり,現在の状況とは異なる場合があります。

医療 DX による医師の働き方改革の実践

 京都府立医科大学医師会の佐和会長より,医療現場におけるAIを活用した働き方改革の実践例として,京都府立医科大学附属病院における取組みが紹介された。
 質の高い医療の提供には,正確かつ膨大な記録業務が不可欠であるが,その業務負担は非常に大きく,医療現場の疲労と効率低下を招いており,2024年度に施行された「医師の働き方改革」によって,業務効率化が急務になっていると説明。電子カルテ外の文書処理や看護サマリー等,文書作成の場面においてAIによる文章作成支援機能を活用することで,定量的な業務削減効果が期待できるとして,積極的に導入を進めていることが報告されるとともに,令和8年度には電子カルテ内にAIを導入し,入退院サマリーや紹介状の作成等,文書処理における省力化・効率化を図っていく意向が示された。
 AIの中核技術であるLLM(大規模言語モデル)には,「クラウド型」と「ローカル型」の2つの運用タイプがあり,それぞれの利点や特徴を紹介した上で,AI・LLMプラットフォームの構築にあたっては,これらを十分に認識した上で,クラウドLLM,ローカルLLM,電子カルテLAN内の3つに分けて個別に設定する必要があるとした。
 AI活用の留意点としては,ハルシネーション(AIが誤認や論理矛盾を含む事象や事実とは異なる情報をもっともらしく生成してしまう現象)をいかに減らすかという課題を挙げ,ハルシネーション防止対策や低減技術についても併せて紹介された。
 現在は,文章校正アシスタント,音声ファイルの書き出しや要約・議事録作成,文章翻訳,各種資料作り等に活用していることが報告され,今後,研修や患者説明の場面での活用を見据え,手術説明動画を作成してQRコードを発行し,事前に患者に観てもらえるようにするなど,多くの診療科において積極的に活用していく考えが示された。
 最後に,実演として,未読の電子メール確認での活用例が紹介された他,AI画像生成サーバーのワークフローを示した上で,「京都府立医科大学と京都府医師会の強力な協力・連携体制」をテーマに生成されたポンチ絵が提示された。今後も引続き「医師の働き方改革」の実践として,進化の著しいAIを,それぞれの特性を踏まえた上で適切に活用することで,業務の効率化と負担軽減を図り,より質の高い医療の提供につなげていく意向が示された。

かかりつけ医機能報告制度と外来医師過多区域について

◇かかりつけ医機能報告制度について
 かかりつけ医機能報告制度は,地域の医療機関が担うかかりつけ医機能を可視化し,外来機能の把握することで,地域を面で支えるかかりつけ医機能の強化に繋げていくことを目的としており,多くの医療機関がそれぞれの担う役割を報告することが必要となる。
 かかりつけ医機能報告制度の導入に至る議論は,骨太の方針2015に「かかりつけ医の普及の観点からの診療報酬上の対応や外来時の定額負担について検討する」と明記されて以来,かかりつけ医以外を受診した場合の受診時定額負担の提案や,かかりつけ医を定義化しようという流れが強く打ち出され,また,2020年からのコロナ禍において,どこに受診したらよいかわからないとの報道等が行われた結果,かかりつけ医を制度化すべきとの議論がなされたものの,日医の提言により,結果として,かかりつけ医の制度化ではなく,かかりつけ医機能が発揮される制度整備という形で2022年の骨太の方針に記載されたものである。
 その後の具体的な制度設計においても,財務省からは,かかりつけ医機能のハードルを高くし,報告の有無によって医療機関の分断を図るという,フリーアクセスの制限につながる提案がなされたものの,日医は,医療機関同士の連携を深めることにより,各医療機関がそれぞれの役割を理解し,機能を高め,相互に助け合って地域を面で支えることが重要であると主張し,最終的には診療科にかかわらずすべての医療機関が「かかりつけ医機能あり」と報告できる内容として,本年1月から報告が開始されている。
 かかりつけ医機能報告制度では,国民や患者が自らのニーズに応じて,適切な医療機関を選択できるよう支援を行うため,2007年に施行された医療機能情報提供制度における報告内容をわかりやすく刷新し,情報提供を強化する仕組みとなっている。
 財務省の財政制度等審議会が昨年にとりまとめた「秋の建議」では,全人的なケアの実現に向けた「かかりつけ医機能の評価」の再構築を掲げ,かかりつけ医の登録制,診療報酬の包括評価につながる「かかりつけ医の制度化」に向けた検討を継続的に進めることを提案しており,重要なことは,5年後に同報告制度の見直しを検討することがすでに決められていることである。報告率が低く,地域のかかりつけ医機能が可視化されない場合,かかりつけ医機能を強化するために,かかりつけ医の制度化などの議論が再燃することが懸念される。
 財務省の目論見を阻止するためには,かかりつけ医機能報告制度において,すべての医療機関が「かかりつけ医機能あり」と報告いただくことが何より重要となる。

◇外来医師過多区域について
 医師偏在問題が全国的な課題となっていることを背景に,厚労省が令和6年12月に公表した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」では,これまでの医師偏在対策が地域枠や専攻医シーリングなど「若手医師の配置」に焦点が当てられてきたのに対し,全世代で対応していくための複数の対応策が打ち出されたことが特徴的である。
 令和7年12月の医療法等の一部改正で,医師偏在対策に関する事項として,①重点的に医師を確保すべき区域を定めること,②外来医師過多区域の無床診療所への対応強化,③管理者要件の見直し―が盛り込まれ,本年4月1日に施行されることとなった。
 外来医師過多区域における新規開業希望者の手続きフローとしては,厚労省が示した外来医師過多区域の候補区域の中から都道府県が外来医師過多区域を設定し,新規開業予定者に対して,①開業6か月前の届出,②不足する医療機能を提供しない場合に,協議の場への参加が必要,③不足する医療機能を提供しない場合で,やむを得ない理由がないときには,地域で不足する医療機能への協力要請を行う仕組みとしている。
 協力要請に応じない場合には,①保険医療機関指定期間の短縮(6年→3年),②医療審議会での説明要請,③勧告・公表―等の措置が制度上規定されているが,今回の改正は,規制を強めるものではなく,地域医療をどう守るかを一緒に考える枠組みづくりと捉え,京都では情報提供と対話を中心とした運用を目指す考えである。
 対象(候補)地域は,①「外来医師偏在指標が全国平均値+標準偏差の1.5倍以上」,②「可住地面積当たりの診療所数が上位10%」の2点を満たす二次医療圏として,全国9か所が候補区域に設定され,京都・乙訓医療圏が候補の一つとなったものである。あくまで指標上の候補となったものであり,圏域内にへき地的要素を持つエリアもあるため,一括りで考えることはできず,今後は高齢化率や交通事情等,地域ごとの実情を踏まえ,行政と府医,地区医が丁寧に協議を重ねながら運用を決めていくことになる。
 開業医の先生方への影響については,既存の医療機関に新たな義務や強制的な役割を課すものではなく,新規開業の先生に対しても,これから検討する地域で不足する医療機能,例えば,在宅医療への関与や夜間休日の輪番,へき地へのスポット協力等の提供を求めるが,関わり方は多様と考える。なお,提供しない場合の「理由」について,やむを得ないか否かについては,協議の場で判断することとなっている。
 地域で不足する医療機能等に関する医療提供の要請に理由なく応じなかった場合の不利益として,保険医療機関の指定期間が3年に短縮される他,「診療報酬上の対応」や「補助金の不交付」などが示されている。保険医療機関の指定期間については,再々指定時以降に勧告に従わない状態が続いた場合,3年から2年に短縮される見通しである。「診療報酬上の対応」については,中医協で議論され,機能強化加算や地域包括診療加算など地域医療提供体制への貢献に関する評価が含まれる診療報酬が算定不可とされる見通しである。
 今後の制度運用にあたって,「開業規制」ではなく,地域の状況を共有する場を持つ制度としての運用を目指す方針である。現在,厚労省が示しているものが完成形ではなく,これから京都・乙訓医療圏内で運用していくにあたって,現場をよく知る地域の先生方の声がなければ実効性のある制度にはならないと考えている。区域の指定や,不足する機能について,地区医から率直な意見を伺いながら,行政とともに画一的な対応ではなく,柔軟に運用できるよう調整していく意向である。
 また,開業後に,実際に不足する医療機能を提供しているか等の情報提供についても,地区医に協力を求めていくことになると考えている。
 最後に,将来的な展望として,施行後3年を目途として,新たに開設された診療所の数が廃止された数を超えているか,医師偏在対策として機能しているか,地域医療の維持に一定の効果があるかなど,効果や影響を検証しながら制度を見直す方向性が示されている。

2026年5月1日号TOP