2026年10月1日号
令和8年7月28日16時27分頃,熊本県熊本地方を震源とする最大震度7の地震が発生したことを受け,日医では直ちに災害対策本部(本部長:松本吉郎日医会長)が設置されるとともに,熊本県医師会からの要請を受けて,7月31日夕方に各都道府県医に対して日医災害医療チーム(JMAT)の派遣が要請されました。
この要請を受け,府医では翌8月1日に災害対策本部会議を開催し,今後の対応等について検討を行いました。日医や被災地医師会,京都府等行政とも連携して情報収集に努めるとともに,京都府看護協会,京都府薬剤師会のご協力を得て,出務いただく先生方の安全確保を第一に,酷暑による健康被害等も考慮しながら,「JMAT京都」派遣に向けた準備を進めてまいりました。
8月4日に開催した第2回府医災害対策本部会議では,移動手段や宿泊環境等のロジスティクスが確保できる8月17日(月)以降をめどに,医師,看護師,薬剤師,ロジ(事務職員)の4名を1チームとする体制で「JMAT京都」を順次派遣することを決定。当面は酷暑による健康被害のリスクを考慮し,65歳以下の登録医師を中心とした編成といたしました。
派遣先は,被害の大きかった八代市に置かれた「JMAT調整八代地域本部」の指示のもと,八代北部地域医療センターにおける診療支援や病棟業務支援等にあたったほか,宇城市に置かれた「JMAT調整宇城地域本部」の指示のもと,避難所の巡回健康相談や避難所統合にともなう支援,地域の診療所支援等にあたりました。
「JMAT京都」は8月17日(月)の第1陣を皮切りに,順次チームを派遣してまいりましたが,発災から約3週間が経過し,断水状況の改善や診療機能の回復が進み,被災地全体の医療支援ニーズが縮小してきたことを踏まえ,日医よりJMATの派遣体制を再構築し,被災地に近い九州医師会ブロックを中心とした継続的な支援体制へ移行する方針が示されました。これを受け,「JMAT京都」の派遣は第4陣(8月26日活動終了)をもって終了といたしました。当初,第5陣,第6陣,第7陣の派遣も予定しておりましたが,今回の方針変更にともない中止となりました。ご準備いただいていた先生方におかれましては,この場をお借りして改めてお詫び申し上げます。
府医といたしましては,今後も被災地の状況を注視し,日医,熊本県医師会等と連携しながら,必要に応じてできる限りの支援に取組んでまいります。
今般のJMAT京都の派遣にあたり,ご協力いただきました先生方ならびに京都府看護協会,京都府薬剤師会,関係各所の皆様に深く感謝申し上げます。
医 師 市田 哲郎( 市田医院・左京/京都府医師会理事)
看護師 定石 紀恵(亀岡市立病院)
薬剤師 船戸 一晴(峰山ゆう薬局)
ロ ジ 萩永 貴之(京都府医師会事務局)
〇8月17日(月)
府医会館に集合しオリエンテーションを行った後,京都駅から新幹線等を乗り継いで熊本へ移動。18時40分に熊本駅に到着した。
〇8月18日(火)
熊本市内のホテルから八代地域調整本部(八代保健所)を経て八代北部地域医療センターへ移動し,活動を開始。当初は同センターでの支援を予定していたが,八代地域調整本部からの指示により,午後は八代市立坂本診療所での診療支援に変更となり,乗り合いタクシーで来院した患者8名の診察等にあたった。八代北部地域医療センターでは,JMAT鹿児島とともに定期処方等で計8名を診察した。
〇8月19日(水)
八代北部地域医療センターにて,医師・看護師・薬剤師・ロジがそれぞれ職種ごとに病院支援業務にあたった。JMAT外来では,震災による定期薬の不足や,冷蔵庫の下敷きによる外傷,転落による裂傷など計11名を診察し,処方箋を5名に発行。看護師は病棟業務,薬剤師は新患対応や病院薬剤部の一包化調剤支援,ロジは災害診療録の整理にあたった。活動中,院内サーバーが一時的にダウンする場面もあったが,JMAT外来はもともと紙運用であったため診療への影響はなかった。
〇8月20日(木)
午前中は前日同様の病院支援業務にあたるとともに,地震で書庫が倒壊し散乱した診療録の整理を行った。12時に活動を終了し,第2陣との合流地点である宇城保健所へ移動。13時,JMAT調整宇城地域本部にて第2陣と合流し,資機材の引き継ぎを行った後,第1陣は帰路についた。
医 師 和泉 守篤 (花ノ木医療福祉センター・亀岡市)
看護師 沖本 千夏(京都鞍馬口医療センター)
薬剤師 河上 雅彦(かわかみ薬局金閣寺店)
ロ ジ 田中 秀和(京都府医師会事務局)
〇8月20日(木)
熊本県庁の「熊本県JMAT調整本部」にてチェックインしたのち宇城保健所(JMAT調整宇城地域本部)へ移動し,第1陣から引き継ぎを受け,小野田部小学校避難所を担当。要観察者への健康状態の聞き取りや下肢のむくみのチェック等を行うとともに,翌日以降に予定されている避難所統合に備え,統合先となる旧豊野小学校避難所等の下見を行った。
〇8月21日(金)
豊野少年自然の家避難所が旧豊野小学校避難所へ統合されるのにともない,医療的配慮を要する避難者の個別確認を行い,2名を診察。旧豊野小学校避難所では,日赤や熊本・福岡JMATチームとともに,医療的配慮を踏まえたレイアウトで段ボールベッド約75床を設営する作業にあたった。
〇8月22日(土)
宇城市内の「きむら医院」にて診療支援を行い,和泉医師が高血圧症等の慢性疾患を中心に約35名の患者に対応(うち約10名は木村医師が診察)。きむら医院からは,今後1週間程度の支援継続の希望が寄せられた。薬剤師・ロジは業務の合間に避難所移設にともなう資材の搬出入や撤収作業を支援。活動終了後,JMAT調整宇城地域本部にて第3陣へ引き継ぎを行い,京都へ帰還した。
医 師 髙階謙一郎( 京都第一赤十字病院・東山/京都府医師会理事)
医 師 山本 浩二(山本整形外科・相楽)
看護師 倉本真智子 (洛和会音羽リハビリテーション病院)
薬剤師 鍵村 和伸(ダイガク薬局 四条)
ロ ジ 大上 智彦(京都府医師会事務局)
〇8月22日(土)
「熊本県JMAT調整本部」(熊本県防災センター)でのチェックイン後,JMAT調整宇城地域本部の指示により,松橋東防災拠点センターにて福島の日赤チームと合流し,避難所の運営状況を聴取。避難者97名に対し,上下水道の断水や,ウォーターサーバーの補充停滞,体温計・パルスオキシメーターの未設置など,複数の課題を確認した。
〇8月23日(日)
隊を2班に分け,一方は小野部田小学校避難所にて日赤チームに帯同し,下肢の浮腫や尾骨骨折の疑いのある避難者などへの健康相談を実施。もう一方は松橋西防災拠点センター(避難者73名)にて,保健師がピックアップした要観察者への日赤チームの診察に同行し,避難所内での声掛けを行った。
〇8月24日(月)
JMAT調整宇城地域本部の指示により,本多医院にて診療支援を実施。山本医師がリウマチ患者を中心に23名,髙階医師が腸炎・熱中症疑い等の外来患者8名を診療したほか,個人宅2件,グループホーム1件への訪問診療も行った。看護師は問診やバイタルチェックとともに,避難生活で疲弊する住民の声に耳を傾けた。活動終了後,第4陣へ引き継ぎを行い,京都へ帰還した。
医 師 岡本広太郎(岡本医院・下京西部)
看護師 石井 淳平(市立福知山市民病院)
薬剤師 堀内 望(京都桂病院 薬剤科)
ロ ジ 萩永 貴之(京都府医師会事務局)
〇8月24日(月)
本多医院にて診療支援を行っていた第3陣から資材等の引き継ぎを受けたのち,「熊本県JMAT調整本部」の指示により,八代北部地域医療センターへ移動して活動を開始した。夕方には,院内で確認されたインフルエンザA型陽性患者への対応にもあたった。
〇8月25日(火)
八代北部地域医療センターにて,岡本医師・堀内薬剤師はJMAT外来診療の支援(来院13名中3名に対応),石井看護師は療養病棟における看護支援,被災後に復職した看護師のメンタルケア等にあたった。院長・看護部長を交えたミーティングでは,外来ニーズが縮小し病院対応が可能な段階に入っているとの評価がなされ,今後の支援体制やJMAT本部機能の撤収時期について協議が行われた。
〇8月26日(水)
朝のミーティングの後,外来はJMAT石川・京都で分担し,看護師は病棟業務にあたった。活動中,急性硬膜外血腫の患者が発生し,岡本医師が搬送先の熊本総合病院へ同乗するなどの対応にあたった。この日,八代北部地域医療センターに設置していたJMAT本部機能は,翌27日に撤収する宮崎隊を最後に終了することが決まり,13時,各隊への挨拶をもって「JMAT京都」第4陣の活動を終了した。